個人的にビビっと来た全国のステキお土産をご紹介するこの連載、第4回のテーマは「予想を裏切るお土産たち」。今回は京都の「どら焼」と、岐阜の「からすみ」を取り上げます。
え? 普通じゃない? とお思いのあなた、「どら焼」と言っても水田わさびボイスの好きなアレではありません。「からすみ」と言ってもお酒のすすむ珍味ではありません。では一体全体なんなのか?
さっそく京都の「どら焼」からご紹介。
京都府京都市にある「笹屋伊織」さんの代表銘菓「どら焼」。筒状の形からしていつものどら焼ではないことがわかりますが、パッケージを開くと竹の皮に包まれた棹菓子が現れます。
さらに竹の皮をはいでいくと、見た目はしっとりした厚めのクレープ生地とでも言いましょうか、表面に穴のあいた生地であんこを包んだお菓子。これが「笹屋伊織」さんの「どら焼」なのです。
鉄板の上に生地を流し、棒状のこし餡を転がすようにして包むというこの「どら焼」、生地はかなりモチモチ&あんこもしっかり甘く、食べ応えを感じます。
では、なぜこれが「どら焼」という名前なのか? 江戸時代末期、当時の当主がお坊さんから「副食となる菓子を作ってほしい」と言われ、鉄板の代わりにお寺の”銅鑼”の上で焼いたことが由来だとか。諸説ありますが、普通のどら焼はその丸い「形」が銅鑼に似ていることから呼ばれるようになったそうなので、同じ「銅鑼由来」でも微妙に異なるということになります。
しかもこの「どら焼」、月に3日間しか手に入らないというレアおみやげ。もともとは弘法大師の月命日である毎月21日のみ販売だったところを、現在は毎月20、21、22日に入手することができます。
就職活動中、講〇社の方が「小〇館がうらやましい。だってド〇えもんがいるから」と話していたのがいつまでも忘れられませんが、そんな小〇館のスターもこちらのどら焼を気に入ってくれるでしょうか。
なぞの甘味“からすみ”
さて話を戻して、お次は岐阜の「からすみ」。魚の卵巣の塩漬けではなく、こちらも甘い餅菓子になります。
今回いただいたのは、岐阜県中津川市にある「和・洋菓子の店 柿の木」さん「からすみ3本入」。味は「ごま、よもぎ、黒糖」の3種類。ほかにもくるみ味があるそうで、珍味の方を思い浮かべていると「よもぎ味のからすみ……?」と混乱しそうですが、
昔から中津川市周辺に伝わるというこの山型の餅菓子は、桃の節句のお供え物としても使われるそう。
包丁でカットして食べてみると、一番イメージに近いのは「すあま」でしょうか。あったかい緑茶と一緒にホッと一息入れたくなる素朴な甘さです。
さて、ではこれのどこが「からすみ」なのかと言うと、珍味の「からすみ」と無関係ではないんだそうで。江戸時代、珍味の「からすみ」は子宝の象徴でしたが、海から遠い岐阜県の庶民にとっては手の届かない高級品。そこで、『からすみ」に似たものを供え、子どもの成長と健康を願う桃の節句のお供え物として珍味の「からすみ」に似せたお菓子がつくられるようになったんだとか。
そんなわけで予想を裏切るお土産たちを2点ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?お土産って、手渡す時にひとエピソードあると渡しやすいし、そこから発生するコミュニケーションがむしろ大事だったりして、と思ったりもするわけです。
「からすみなんです~」と渡して軽めのサプライズするもよし、「毎月3日間しか買えないんですよ!」とレアリティをアピールするもよし。予想を裏切る意外なお土産を贈ってみてはいかがでしょうか?
●京菓匠 笹屋伊織『代表銘菓 どら焼』
1,620円(税込)
※販売期間毎月20・21・22日
日持ち ★★☆☆☆
配りやすさ ★★☆☆☆
名前とのギャップ ★★★★★
●和・洋菓子の店 柿の木『からすみ 3本入』
1,512円 (税込)
日持ち ★★★☆☆
配りやすさ ★★☆☆☆
渡す時の話題にしやすい度 ★★★★★
<イラスト・文/西園フミコ>
西園フミコさん
漫画家。「コミックDAYS」で2018年から全国のおみやげをとりあげる「おみやげどうしよう?」を連載(全4巻 4巻は2020年4/8発売)。