毎日の食事に欠かせないみそは薬膳ではおなかを温める働きがあるとされます。今回は、薬膳アテンダントの池田陽子さんに、広島県府中市のアンテナショップで見つけた、おすすめみそグルメを教えてもらいました。
薬膳ではみそはおなかを温め力づける働き
薬膳において、みそは人間にとって重要な目には見えないエネルギー源である「気」を補い、おなかを温めて力づける働きがあり、疲労回復、滋養強壮に優れた作用があります。さらに、消化不良、デトックスにもよく、積極的に使いたい調味料です。今回は、広島県府中市アンテナショップ「NEKI」を訪ねて、とっておきみそグルメをご紹介します。
400年の伝統をもつ「府中味噌」はマイルドで上品な味わい
広島県南東部に位置する府中市。かつて備後国を治める国府があり、石見銀山街道が横断する交通の要所として開け、宿場町として栄えた歴史があります。今も、昔ながらの風情がある街並みが残り、また市街地の近くには緑豊かな山林、渓谷があり、観光の魅力がつきないスポットです。
そんな府中市ならではのグルメといえば「府中味噌」。その歴史は古く、約400年もの歴史を有します。温暖な気候風土、醸造用のきれいな水に恵まれ、芦田川領域で採れた良質な米と備後奥部でとれる大豆を原料にしたみそづくりが行われてきました。コクのある味と香りが大きな特長で、高級料亭でも高く評価される逸品。
「府中味噌」を代表するのが、白芽大豆を使った「白みそ」。麹歩合が高く、塩分が少なめ、甘口のみそはきめ細やかで風味豊かな味わいです。
江戸初期のころ豪商・大戸久三郎が福山藩主水野公に、白みそを献上したところ、その味わいを絶賛。参勤交代の道中にある諸般大名にも白みそを贈呈したことから、全国的に「府中味噌」の名が知られるようになったといわれています。現在は市内に3つのみそ蔵があり、協同組合を設立して共同で「府中味噌」のPRや商品開発などを行っています。
各社特長がありますが、いずれもなめらかで、上品な味わい、優しく丸みのある甘さが魅力。おみそ汁にはもちろん、魚や肉を漬け込んでも絶品の仕上がりです。
香りさわやか洗練された味わいの「ゆずみそ」
「浅野味噌」は明治37(1904)年に創業。「ゆっくり、じっくり天然醸造」を信条に、暑い夏に熟成が盛んになり、寒い冬には味が整うという自然の流れに逆らわない丁寧なみそづくりを行っています。熟練の職人による麹づくり、みそをひっくり返して呼吸を盛んにする「天地返し」で発酵熟成を促す…。入念な手作業で仕上げたみそは、芳醇な味と香りが魅力です。
「ゆずみそ」(550円)は、自慢の白みそを使ったおかずみそ。白みそにゆず、みりん、砂糖などを加えて練り上げてあります。軽やかななめらかさの白みそとユズは相性がぴったり。さわやかな香りいっぱいのみそは、ふろふき大根や豆腐、キュウリなどの生野菜に洗練された味わいをそえてくれます。
甘口で、塩分が少なめなので、なんとトーストに塗ってもおいしい! 意外なことにヨーグルトやアイスクリームに入れても、ピタッとハマるという、「ミラクルなおかずみそ」、ぜひお試しを
白みそと赤みそをブレンド。みそ蔵に代々伝わる「味噌カレー」
明治5(1872)年創業の「金光味噌」は、厳選した素材を独自の製法で仕上げた「秀峰白味噌」が高い人気を誇ります。麹の味わいが引き立つ寒冷な地域の脱皮大豆、白くつやがあるみそにするため「短米種」を使用。40℃を超える温度環境で米麹を、より活性化させる「高温度米麹管理」で、甘味を引き出しています。
完成したみそは臼とメッシュでこして、極めてなめらかに仕上げます。ナチュラルな甘味、クリーミーでまろやかな味わいで、そのまま食べてもおいしい! スイーツや洋風のスープに使うのもおすすめ、というのがうなずける味わいです。
そんなみその特長を生かした人気商品が「府中味噌カレー」(648円)。金光家で代々伝わる「味噌カレー」を再現した商品です。独自にブレンドしたスパイスをきかせたカレーに、甘味のある秀峰白みそと、香ばしい1年熟成「赤みそ」を加え、具材とともに煮込んで仕上げます。味噌をブレンドすることによって、煮込んだカレーに残る「少し焦げたようなにおい」を消し、コクとうま味を引き出せるのだそう。
またレトルトカレーにありがちな「レトルト感」も消えて、食べてみると驚くほどまろやかでコクうま、あと味はすっきり。みその風味もスパイスのむこうにじんわりとひろがり、「みそでしか、なしえない」味わいに仕上がっています。たっぷり入った国産マイタケ、シイタケも食感とうま味をプラス。そして、たしかにレトルト感がない! さらにみその効果か、ご飯がとってもすすむ味わい。「府中味噌」の実力を感じるカレーです。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)