府中市ソウルフード「備後府中焼き」が人気。アンテナショップの元気が出るグルメ

なかなか涼しくならず、残暑にすっかり参っている人も多いこの頃。今回は、薬膳アテンダントの池田陽子さんが、広島県府中市のアンテナショップで見つけた、夏バテにおすすめのグルメを紹介します。

気を補う食材を食べて夏バテを克服

NEKI外観
府中市アンテナショップ「NEKI」

 夏は1年でいちばん体力を消耗する季節。中国の伝統医学である薬膳では、汗をかくことによって、元気の源である「気」も一緒に排泄されてしまうため、だるい、やる気がでないといった「夏バテ」の症状を引き起こすと考えます。暑い日が続くと秋になっても夏バテが治まりません。

 そんな夏バテを克服するには、体にこもった熱を冷まして、目減りした気を補うことが必要。おすすめは、魚ではアユ。気を補い、湿気を払い高温多湿の夏に役立ちます。夏の食欲不振にもおすすめ。気を補うためには卵、キャベツが役立ちます。また、飲み物では体の熱を冷ます、緑茶、番茶などがおすすめです。今回は広島県府中市アンテナショップ「NEKI」で見つけた、夏バテに役立つグルメをご紹介します。

府中市のソウルフード「備後府中焼き」

冷凍府中焼き
「冷凍府中焼き」(1100円)

 広島県といえば「お好み焼き」。じつは、エリアによってスタイルが異なります。府中市で親しまれているのが「備後府中焼き」。「NEKI」のイートインでも提供され、高い人気を誇ります。小麦粉の生地を薄くのばして、キャベツ、麺、卵を重ねて蒸し焼きにするのは一般的に知られている「広島風お好み焼き」と同様ですが、備後府中焼きは、肉は豚か牛のミンチ、モヤシは入っていない、というのが大きな特徴です。鉄板で焼くとミンチ肉の脂が溶けて、生地やそばをバリッと焼き上げるのでカリカリした食感に。さらにキャベツもふわっと仕上がります。

「備後府中焼き一宮」は、市内でも指折りの人気店。その味わいが手軽に楽しめるのが、「冷凍府中焼き」(1100円)。レンジで温めるだけで、お店同様の味わいが堪能できます。備後府中焼きならではのパリパリ感、コクのあるうま味を最大限引き出すために、脂身の多い牛肉ミンチ、特製中華麺、特製天かすを使用。
 キャベツの切り方、生地の溶き方、鉄板の温度など細部までとことんこだわって焼き上げます。仕上げの要となる卵も養鶏場から直送された鮮度バツグンの若鶏の卵を使用。半熟のとろりとした状態で仕上げています。

冷凍府中焼き
レンジで加熱すればすぐつつくれる!

 冷凍されたお好み焼きをレンジ加熱して、添付のソース、青のりをかければ完成。ミンチはほぼ溶けてしまい、表面はソースだけに見えますが、食べてみると肉のうま味が浸み込んだ生地はパリッとクリスピー。そして、脂がしみこみ、ほどよい蒸し加減になったキャベツと、麺のおいしさったら! そこにとろり感の残った卵焼きが、まろやかさの援護射撃!
 例えるなら、極上の焼きそば+とろとろオムレツの表面カリッと仕上げた、といった感じ。広島風お好み焼きより「全体の一体化」が感じられるので、ビールのおつまみにもぴったり。想像のナナメ上を行くおいしさをぜひお試しを。

老舗が手がけた絶品アユの甘露煮

鮎の甘露煮
「鮎の甘露煮」(3尾入り1500円)

 府中市には長い歴史を誇る「老舗グルメ」も。「無憂館」は明治35(1902)年創業の「鮎の甘露煮」専門店。もともとは割烹旅館でしたが、戦後、高い人気があった鮎の甘露煮に特化して営業するようになりました。「鮎の甘露煮」(1尾500円)は、厳選したアユを、そのコンディションに合わせて継ぎ出し続けた秘伝のタレでじっくりと煮つめてあります。そのレシピは一子相伝。長い歴史のなかで、守り続けた調理法で仕上げたアユは、骨までやわらかく丸ごといただけます。

鮎の甘露煮
繊細なうま味が楽しめます

 ともかく、見た目からして美しい! 優美なフォルム、見事なあめ色のアユはいっさいの雑味がなく、ベタベタした甘さも皆無。ひたすらに、さわやかなアユの味わいを上品にいかした炊き上がり。身のホクホク感も残り、繊細なうま味を堪能できます。キラキラした日本酒がぴったりの逸品です。

香ばしく、甘味とうま味がしっかりした「寒番茶」

寒番茶
小倉園の「寒番茶」(756円)

 広島で愛されているお茶といえば、府中市上下町・小倉園の「寒番茶」(756円)。小倉園は3代にわたり、この地でお茶の栽培、製造、販売を行っています。上下町はお茶の生産地としては北限となる「準寒冷地」。昼夜間の温度差がおいしいお茶をはぐくみます。また、虫が少なく、病気の害が少ないため、小倉園では創業時から無農薬でお茶を育てています。

寒番茶
まろやかな甘味であと味はすっきり

 寒番茶は小寒、大寒を過ぎて採取した茶葉でつくられています。春一番茶の茶摘み前に、冬を越すために伸ばしたままにしておいた茶葉を刈って使用。上下町の寒さを乗りきった茶葉は、甘味とうま味がいっぱい。お茶があめ色になるくらいまで煎じて仕上げるので、芳しい香りと渋味の少なさが魅力です。煮出して飲むと、香ばしいフレーバーのあとに、まろやかな甘味があり、あと味はすっきり。水出ししても味の深みはそのままに、さっぱり感が心地よく味わえます。それぞれの味わいを楽しんでみてください。

―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳/池田陽子]―

池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)