おいしい海の幸が豊富な富山県。そのアンテナショップには中医学で「腎」の働きをアップするとされる、エビとイカのグルメがたくさんあります。薬膳アテンダントの池田陽子さんに教えてもらました。
エビとイカは「腎」の働きをアップ
腰痛は、中国伝統医学の中医学で「腎」とよばれる臓器と関わりが深いとされ、「腰は腎の府(容器)」ともいわれています。腎は老化をつかさどり、骨と髄とも関わる臓器。よって腎が弱ると腰痛、腰が重だるい、足腰に力が入らない、骨が折れやすくなるなど、下半身が一気に老化します。
改善のためには、腎を強める食材を取り入れることが大切です。おすすめはエビ、イカ。腎の働きをアップして、腰をサポートするのに役立ちます。 今回、富山の食の幸がそろう「いきいき富山館」をお訪ねして、とっておきエビ、イカグルメを紹介します。
おいしい海に幸がたくさんある富山県
おいしい海の幸が豊富なことで知られる富山。富山湾は「天然のいけす」ともいわれ、日本海に生息する魚介類約800種のうち500種類以上が生息するという魚介の宝庫です。富山湾独特の地形が、魚のおいしさの秘密。標高約3000mの立山連峰、水深約1000mの富山湾という、高低差によって、森の栄養を含んだ水が豊富に流れ込みます。さらに漁場から港までの距離が近いため、まさに「いけすから魚をすくう」ように鮮度を維持して運べるので、フレッシュな味わいを堪能することができるんです。
富山湾の海底には多くの谷が入り組んだ「藍瓶(あいがめ)」とよばれる海底谷があり、魚たちのかっこうの住処に。藍甕に住む、富山ならではの魚といえば「シロエビ」。体長5~8cmほどで透明感がある淡いピンク色の姿は、水揚げ直後にキラキラ輝き「富山湾の宝石」とよばれています。とろりとした口当たり、上品なコクと甘味、うま味が魅力です。
シロエビは日本近海に幅広く分布していますが、漁が成り立つほどとれるのは富山湾のみ。地元では、刺身や天ぷら、また上質な味わいのダシがとれることから、麺類のつゆやすまし汁などで親しまれています。
ふんわり優しい味わいの癒やし系シロエビかき揚げ
カラッと揚がったシロエビのおいしさを楽しめるのが、南砺市・なかしまの「富山県産白えびかき揚げ丼の具セット」(533円)富山産の魚介などを使った加工品を製造する同社のヒット商品です。厳選したシロエビを漁獲してから2時間以内に、国産のタマネギ、コマツナ、ニンジンとともに揚げて仕上げます。やわらかな触感を残すために、1枚1枚丁寧に手揚げ。「ふんわり、優しい味わいでおいしい」と人気を博しています。うれしいことに、レンジ加熱で手軽に完成するのも魅力です。
温めたかき揚げは、シロエビはほかのエビと違って、火をとおしても赤くならないので、上品ではんなりした料亭風の見た目。食べてみると、ふわっとやわらかな口当たり。おだやかで優雅なうま味があるシロエビの風味と、野菜の甘味が一体となって、なんだか「癒やし系」の味わい。ご飯にのせて、付属のタレをかけて丼にするもよし、麺類のトッピングにしてもよし。エレガントなシロエビのおいしさを満喫できます。
かまぼこ王国・富山の絶品シロエビかまぼこ
富山は、かまぼこ文化が発展してきたまち。富山湾でとれた魚と職人技で仕上げたかまぼこは、結婚式やお祭りなど、ハレの日には色鮮やかな細工を施した「細工かまぼこ」として登場し、全国支出金額3位と普段の食卓でも愛される存在です。そんなかまぼこと、シロエビが一体化した商品が、黒部市・生地蒲鉾の「白えび豆蒲鉾」(325円)。
生地蒲鉾は、昭和2(1927)年創業。伝統の技で仕上げたかまぼこが人気の老舗です。厳選した魚を使い、名水百選としても知られる黒部の名水でつややかなすり身に仕上げて成型。でんぷんの添加を極力抑え、一晩低温下で寝かせてから、蒸すことで独特の「しなやかさ」を備えたかまぼこづくりを行っています。
白えび豆蒲鉾は、こだわりのすり身に、シロエビを一尾のせて焼き上げたかまぼこ。まるごと焼くことで、シロエビの香ばしい香りを引き立てています。小ぶりで、くるんとしたかわいいかたちのかまぼこの上には、きれいなシロエビの姿。プリンとした食感、みずみずしい味わいのかまぼこに、一尾といえども、シロエビのコクのあるうま味が加わり見事な存在感。日本酒のおつまみにぴったり。そしてあと味もしっかり残り、余韻でまた日本酒が飲めてしまうほど。ぜひ富山名物のコラボグルメで、極上の晩酌を。
酒の肴に最高! ライターであぶるホタルイカ素干
ホタルイカも富山を代表する魚。ホタルイカは通常、富山湾の水深200~300mあたりに生息していますが、3~5月頃、産卵のために夜、いっせいに浮上し、産卵後に沿岸の浅瀬に打ち上げられます。ホタルイカが大群で海岸近くにまで押し寄せてくるのは、世界的にも珍しい富山ならではの現象だそう。闇夜のなかで数百万匹ものホタルイカが放つ、無数の青い光りが輝く風景は、富山の春の風物詩として知られています。
富山でとれるホタルイカは、産卵期を迎えているためぷっくりとふくらみ、他県よりも大型。そして漁は定置網で行われるため、傷がつきにくくツヤツヤの美しい姿。漁場が漁港に近いため、刺身でも楽しめるほど鮮度バツグン。加工場へスピーディに運ばれ、ボイルなどとれたての味わいを生かした、おいしい商品が数多くつくられています。
いきいき富山館にも、多彩なホタルイカ商品がそろいます。なかでも絶大な人気を誇るのが魚津市・浜浦水産の「ホタルイカ素干」(500円)。各社から販売されていますが、まとめて5パックも買うお客さんもいるというほど、熱い支持を得ています。
蜃気楼の名所としても知られる魚津市はホタルイカの水揚げが豊富です。浜浦水産は、魚津漁港のすぐそばに位置し、ホタルイカを一年じゅう気軽に楽しんでもらえるようにとホタルイカ素干しを開発。一般的に、いたみやすいワタの部分はとってから干しますが、ホタルイカのおいしさをまるごと楽しんでもらいたいとワタごと素干しに仕上げています。
ワタごと丸干しにするためには、鮮度落ちの早いホタルイカを、生きたままスピーディに加工することが重要。まず、天然塩を絶妙な加減の濃度で溶かした塩水に漬け込みます。ホタルイカのコンディションに合わせて漬け込み時間を調整し、引き揚げたら冷風乾燥機でじっくり乾かします。1枚1枚、手作業で返しながら干し上げ。「社長」のイラストが目を引くパッケージをあけると、見事な胴体にすらりと長く伸びた足。大きい!! 宇宙人のようなフォルムの真ん中あたりにあるワタは、ほどよくやわらかさが残っています。
このまま食べてもおいしいのですが、よりその味わいを引き立てるコツがあります。それは「ライターであぶる」こと! ワタの部分をライターで軽くあぶると、身は香ばしくワタがとろり。コクと甘味がジュワッとあふれて、うまいのなんの! かみしめるたび、生で食べるよりも凝縮したうま味が口の中いっぱいにひろがります。そこに日本酒をグイッ! ホタルイカも日本酒もエンドレスになる危険な組み合わせです(笑)
あと味もすがすがしく、ピュアなホタルイカおいしさが堪能できるのは「社長印」ならでは! ちなみにライターであぶる以外に、熱しておいたフライパンにのせて温めるのもおすすめ。ライターバージョンは、パンチのある日本酒、フライパンバージョンは、キレのいい辛口の日本酒に合う感じ。富山いきいき館に豊富にそろった地酒とともに、楽しんでみてくださいね。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)