栄養豊富でさまざまな食品加工品として利用される大豆。 今回は、薬膳アテンダントの池田陽子さんに、 長野県木島平村のアンテナショップで見つけた、大豆グルメの魅力とおすすめフードを教えてもらいました。
木島平村の大豆を使った絶品グルメ
大豆は薬膳において、じつにパワフルな効能をもつ食材。基本的に人間のエネルギー源である「気」を補い、滋養強壮にいい食材ですが、加工品になるとさらに多彩な効能があるとされています。豆腐になると、全身に潤いを与える働きがあり、肌の乾燥を改善してしっとりした美肌づくりに役立ちます。
また、納豆の場合は血行を促進する効果大。肩こり、ダイエット、美白などに威力を発揮します。今回は、長野県木島平村アンテナショップ「新鮮屋」から、地元産大豆を使った絶品グルメをご紹介します。
畑のクリームのような豆腐「ちょうふのもめん(きぬ)」
新鮮屋で高い人気を誇るのが、木島平村産大豆「タチナガハ」を使ったグルメ。タチナガハは、長野県中信農業試験場で育成された品種。大粒でゆでても皮がむけづらく、煮豆に向いているとされています。良質な水と土で育った木島平村のタチナガハのおいしさは格別。いずれもリピーターが多い人気商品です。
「ちょうふのもめん(きぬ)」(300円)は調布市の豆腐店「おもむろ」と木島平の大豆がコラボして完成した豆腐。おもむろは、「シンプルな製法で手間ひまをおしまず」をモットーに、日本各地から厳選した大豆を使い、水とにがりだけで手づくりした豆腐が大人気のお店。大豆それぞれの味の違いを楽しんでもらいたいと、おもに単一品種の大豆でつくった豆腐を販売しています。
ちょうふのもめんが店頭に並ぶのは、毎週木曜日。賞味期限は土曜日! 日もちがしないというのは、余分なものが入らず、フレッシュな豆の味わいが楽しめる証です。木綿より濃厚で、絹と木綿の中間のような弾力ある食感が特長という豆腐は、箸を入れるともっちりした感触。
食べてみると、こっくりしたナチュラルでやわらかな甘味、もっちりとろける食感。まるでクリームのよう! この優しい味わいを楽しむにはしょうゆではなく、「塩」で十分! 調布と木島平が手を組んで完成した「畑のクリーム」のような豆腐、一度食べるととりこになるはず。
ゴロゴロ大豆が入った伝統の発酵食品「しょうゆ豆」
長野県北信・中信地域の郷土食「しょうゆ豆」(270円)。しょうゆの製造過程において、絞る前にできた「しょうゆもろみ」が原点で、蒸した大豆で麹をつくり、生じょうゆに漬け込んで発酵熟成させてつくった、いわば「食べるしょうゆ」のようなもの。地元ではご飯のともとして親しまれています。
木島平に隣接する中野市・マル井醤油の「しょうゆ豆 甘塩づくり」は、木島平産大豆タチナガハを使ったもの。創業70年、全国の品評会で最高賞を受賞した本醸造醤油が高い人気を誇る同社こだわりのしょうゆ豆です。大豆を国産米麹で仕込み、独自の製法で約2か月間、低温熟成させてうま味を際立たせて仕上げます。
しょうゆ味のイメージでいただくと、ちょっと違います。ゴロゴロと大豆が粒の状態で入っているせいか、みそのような味わいも感じられるのです。また、発酵が醸すうま味がじつに、深く、豊か。炊きたてご飯にのせて食べると、まろやかな大豆のふくよかな味わいがひろがってほっこり、癒やされるおいしさです。お湯をかけてお茶漬けにするのもおすすめ。なんとも「滋味あふれるお茶漬け」になります。
また、しょうゆ豆は洋風にアレンジしてもおいしくいただけます。バターやチーズなど乳製品との相性がバツグンにいいので、組み合わせてパスタにしたり、パンにのせたりすると、しょうゆにはないうま味が加わって絶品。サワークリームとあわせてディップにしてもよし。さまざまな使い方で楽しめる発酵食品、ハマること間違いなし!
もっちり食感がクセになる「鬼島納豆」
木島平村に伝わる鬼の伝説の名を冠した、中野市・阿部納豆店「鬼島納豆」(110円)も、新鮮屋で人気を誇る木島平産タチナガハを使ったグルメ。阿部納豆店は、農林水産大臣賞や、全国納豆品評会で長野県知事賞をした実績があり、良質の大豆を使い、その味わいを最大限引き出した納豆で知られています。おもに、大粒納豆にタチナガハを使用。もっちりした食感をいかした納豆づくりを行っています。
大粒の納豆は、かきまぜると引きが強く粘りもしっかり。もっちりした歯ごたえの豆からは、優しい甘味のあとに響き渡るようなうま味がひろがっていきます。もっちり効果か(?)大豆の味わいの余韻が、長く続くようなおいしさ。また食べたい!とクセになる納豆です。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)