姿かたちがトウガラシに似ている「南蛮エビ」やサケが豊富な新潟県のアンテナショップ。そこで見つけた体を温めるといわれる食材を使ったグルメを、薬膳アテンダントの池田陽子さんピックアップしてくれました。
温熱性の食材を上手に取り入れて寒さ対策
寒さが身にしみるこの時季。冷えは万病のもとといいますが、中国伝統医学の中医学においても免疫力が下がり、血行不良を引き起こす原因と考えます。しっかりと身体を温める食養生で厳冬を乗りきりましょう。
薬膳において、すべての食材は身体を温める「温熱性」、体を冷やす「寒涼性」、そしてどちらにも属さない「平性」に分けられるとされています。冷えの改善に役立つのは、「温熱性」の食材。冬は温熱性の食材を積極的に取り入れることが大切です。
魚介類で温熱性に属するのは、エビ、サケ。速やかに体を温めて、冷えの改善に役立ちます。今回は、2024年8月にオープンした、新潟県アンテナショップ「銀座・新潟情報館 THE NIIGATA」を訪ねて出会った、とっておきのエビ、サケグルメを紹介します。
日本酒にあう南蛮エビ×かんずりの絶品おつまみ
新潟県ならではの海の幸といえば、「南蛮エビ」。正式な名称は「ホッコクアカエビ」ですが、色と形が赤トウガラシに似ていることから、この名前で呼ばれています。東日本ではトウガラシを「南蛮」と呼ぶ地域があるんですね。おもに新潟市、糸魚川市、佐渡市などで水揚げされ、甘味が濃く、とろける食感で、頭に凝縮したうま味があり、ヒスイのような美しい卵を抱えているのが特徴。刺身や天ぷら、唐揚げ、練りものなど多彩な調理方法で親しまれています。
THE NIIGATAでも、さまざまな南蛮えびグルメがそろいます。おつまみで南蛮エビを味わうなら、新潟市小針水産の「南蛮えびかんずり干し」(933円)はいかが? 上越地方のトウガラシを使った伝統的な発酵調味料「かんずり」と組み合わせたまさに、「新潟コラボ」な商品です。
鮮度バツグンの南蛮エビをスピーディーに冷風乾燥したのちに、かんずり入りの特製タレに漬け込み、さらに干すという「二度干し」で製造。甘辛い味つけでおつまみにぴったりの風味に仕上げています。食べてみると歯ごたえがありつつ、ほどよくしっとりした食感。口の中いっぱいに南蛮エビのパンチのあるうま味、続いて爽快な辛味が広がり、お酒がすすむ味わい。とくに、みそがつまった頭の部分のコクうまなおいしさったら! THE NIIGATAにそろう豊富な日本酒とともに味わいたい逸品です。
南蛮えびと新潟県産生クリームの絶妙なハーモニー
THE NIIGATAでは、南蛮エビの魅力を余すことなくいかしたカレーも販売。新潟市給材の「新潟南蛮えびクリーミーカレー」(864円)は、南蛮エビに新潟県を代表するフルーツ「ル・レクチエ」、新潟市の老舗乳業メーカー・塚田牛乳の生クリームを使用したレトルトカレー。小麦粉を使わずに、新潟県産米粉でとろみをつけてあります。うま味の濃い南蛮エビに、新鮮な生乳のみを使った乳脂肪分47%という濃厚で高品質な生クリームを合わせてコクを出し、ル・レクチエで甘味をプラスしてクリーミーな味わいに仕上げています。
新潟といえば米どころとしても有名。せっかくなので、カレーに合わせるお米は、店内で販売されている南魚沼市・吉兆楽の「氷温熟成 南魚沼産こしひかり」(259円)を使うことに。南魚沼の契約農家が栽培したこしひかりを氷温熟成加工することで、うま味、甘味を引き出しています。レンジ加熱OKのパック入りですが、やわらかでもちもちした食感と炊き立てのおいしさがしっかりと堪能できる商品です。
カレーの味わいはとんでもなく濃厚! そしてはっきりとエビそのものを食べたときに感じる味の輪郭が浮き立つような、特有のうま味が感じられます。ともかく、ちょっと食べたことのない「エビファースト」な味わい! 生クリームのマイルドなコクと、でしゃばらないスッキリしたル・レクチエの甘味がじつに絶妙なハーモニー。カレールーには、写真ではわかりづらいですが、しっかり丸ごとの南蛮エビも入っています。食感もよく、さらにエビのうま味が炸裂して。深く記憶に残る味わいに。甘味がある南魚沼産コシヒカリとの相性はバッチリ! お米はもちろんですが、パスタソースとして使ってもおいしくいただけます。
「サケのまち・村上」の、しっとりやわらか仕上げのみそ焼き
新潟県北部に位置する村上市は「サケの町」。その歴史は古く、三面川(みおもてがわ)で漁獲されたサケは、平安時代には京都の王朝に献上されていたことが文献に残されています。江戸時代には村上藩の重要な財源となり、大工事によって三面川の分流「種川」を設け、自然ふ化増殖も行っています。明治時代には日本で初めての人工ふ化にも成功し、漁獲量を大いに伸ばしました。長い歴史のなかで、サケを食する文化も発展。村上では貴重なサケを余すことなく全身の部位を利用した、100種類以上の料理が受け継がれています。
村上の多彩な鮭伝統料理のひとつが「サケの焼漬」。焼いたサケをしょうゆやみりん、酒を加えたタレに漬け込んだ料理で、江戸時代から保存食としてつくられていたといわれています。タレが身の中までしっかりとしみこみ、冷めても固くならずにふんわり。焼いた香ばしさと、しっとりした煮魚のようなおいしさを堪能できる一品。THE NIIGATAでも、さまざまなサケ加工品を手がける村上市エスケー食品による、骨・皮を取って食べやすくした「銀鮭焼き漬け」が好評です。
焼き漬けもおいしいのですが、「銀鮭味噌焼き」(902円)もおすすめ。地元の醸造所でつくられたみそをベースに調合したみそ床にじっくり漬け込んでから干したサケを、香ばしく焼いて仕上げてあります。みそというと濃厚な味わいのイメージがありますが、食べてみると意外にもあっさり、マイルド。深いコクとうま味がいっぱいのサケは、とんでもなくしっとり。そして、うっとりするほどのやわらかさ! 日本酒のおつまみにも、ごはんにもぴったり。おにぎりやサラダの具や、卵と相性がいいのでスクランブルエッグに使うのもおすすめです。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? 関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)