福井の日本酒入りボンボンショコラ。お酒より強い余韻が印象的

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第80回:木村彩乃]―

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は、NHKでのキャスター・リポーターを経て現在はスイーツコンシェルジュ・ショコラアドバイザーとして活躍する木村彩乃アナが、バレンタイン催事の取材で見つけた絶品チョコをレポートします。

ショコラショックを吹き飛ばす。カカオの多様性が集結

バイヤーと木村アナ

 この時季になると少しずつソワソワするのは、バレンタインに向けてどんなチョコレートに出合えるか期待がふくらむから。ショコラアドバイザーとして、新作や話題の商品などショコラに関わるニュースはひとつたりとも見逃したくありません。今回は東京、銀座の老舗デパート「松屋銀座」で1/31から2/14まで開催される催事「Ginza Valentine World」の事前取材で出合った、全国各地の特産品を生かした絶品ショコラをご紹介します。

 バイヤーの小泉翔さん曰く、「毎年、つくり手の方の故郷の素材や、思い入れのある素材を使用したチョコレートを仕入れています。お客さまにはスイーツのストーリーに共感してくださる方、シェフの推し活をしている方、バレンタイン催事での出合いを通して商品の産地に赴く方もいらっしゃるので、さまざまな視点でお楽しみいただければ」とのこと。

 今年のテーマは「カカオの可能性」。世界的な異常気象、コートジボワールやガーナの洪水や干ばつ、ガーナの財政不安などにより、この2年で価格が約4倍と高騰しているカカオショックの今こそ「カカオの多様な魅力を味わう」という趣旨には、筆者も心から応援したい気もちでいっぱいです。

福井県の日本酒入りボンボンショコラのモチーフはコウノトリ

オクノセレクション

 福井県出身・奥野大智シェフの「TERROIR by Daichi Okuno(テロワール バイ ダイチオクノ)」のショコラには、環境や土地の個性を表す「テロワール」が名前に入っているとおり、福井県の素材を使った粒が3つ、越前そばの実、越前海岸の結晶塩「百笑の塩」、日本酒「かたかた 純米吟醸」が使われています。

 日本酒を使用したボンボンショコラ(写真左上)は、試食前に「アルコールは大丈夫ですか?」と確認されたものの、そこまでアルコールは感じられないと思いきや…。時間をおいて日本酒の風味が口の中で一気に立ち上がりました。辛口でフルーティー、ほんのりメロンのような吟醸香。お酒を飲んだときよりもチョコを食べたときの方がはるかに長い余韻が印象的だったので奥野シェフに聞くと「余韻のために固めにしています。でも、日本人は口溶けのよいものが好きだから、滑らかだけれど滑らかすぎない配分量にこだわりました。チョコの味わいを感じてもらえるように意識して、さらにユズで奥行も演出しました」と教えてくれました。

 かたかた

「かたかた」のボトルに描かれているコウノトリについて、「コウノトリは、私が育った地域で飛んでいるんですよ。農薬や化学肥料があるところへは行かない鳥ですが、そんな地域で栽培された米のお酒という点も、ぜひ知ってもらえたらうれしいです」とも。
 公式サイトによると、「かたかたという名称はコウノトリのクラッタリング(求愛行動)を擬音化したもので、コウノトリはつがいで仲よく子育てをすることから、幸福・家族繁栄の象徴ともいわれており、その縁起のよさから、お祝いの席やプレゼントにも喜ばれます」とのこと。バレンタインに愛のメッセージをさりげなく伝えられそうです。

青森のブランドトウモロコシでコーンポタージュのようなガナッシュ

ロマンスの断面

 青森県産ブランドトウモロコシ「嶽(だけ)きみ」を使用したガナッシュは、青森県出身の須藤銀雅シェフによる「浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)」というお店の商品です。ガナッシュは温度によって食感は変わりますが、口に入れるとチョコの甘さだけでなくトウモロコシの甘味がしっかりと感じられ「え? 私、コーンポタージュ飲んだ?!」と錯覚するような濃厚さ。「嶽きみはトウモロコシのなかでも香り・糖度が高いから使ってみました」と話されていました。

「浪漫須貯古齢糖」の須藤シェフは、地域の食材をハーブやスパイスなど少し変わった組み合わせでつくることが特徴。チョコレートとほかの素材のもつ香気成分にも着目し、組み合わせを考えるシェフだからこその味わいだと感じました。

ミホ

 北海道出身の佐藤美歩シェフによる焼き菓子とチョコレートのお店「famy by Miho Sato」のボンボンショコラには道産の「乾燥玄米」と「ポン菓子」が入っています。ポン菓子がチョコレートからひょっこり顔を出すのが個性的でした。

コラボ

 バレンタインといえば各ブランドの新作や限定品にはもちろん注目しますが、チョコレートヲタクの筆者はコラボ商品も楽しみのひとつ。東京虎ノ門にあるカカオをテーマにしたカクテルバー「mementomori」と厳選した日本の食材とカカオを合わせる神戸のチョコレートショップ「JHOICE laboratory」とのコラボチョコは、スピリッツに漬け込んだカカオからつくるチョコレートに徳島県の「有機ユズ」・富山県の「富山黒茶」・愛媛県の「中山クリ」を合わせています。こちらは神戸のショップか松屋銀座でのみ購入できます。

瀬戸内の塩とかんきつ、和三盆で幸せをよぶスペイン菓子

岡田シェフ

 瀬戸内海の小豆島と東京を行き来する料理家の岡田依里シェフのお店「島の四季梱包」では、スペイン菓子「ポルボロン」を発見。ほろほろと崩れやすいお菓子で、口の中で崩れる前に「ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン」と3回唱えられたら幸せになるといわれています。なかなか日本では見かけないですが、素朴でどこか懐かしさを感じる味わいです。岡田シェフによると、「うちの商品は気が遠くなるような手づくり」とのこと。

しょうゆ

 スペインと瀬戸内海地方が似ていることから、ポルボロンには瀬戸内の塩・小豆島のレモン・讃岐の和三盆糖などを使っています。小豆島で150年前から続くヤマロク醤油の「鶴醤(つるびしお)」味もありました。みたらし系が得意でない筆者は恐る恐るでしたが、ほんのり感じられる香ばしさや深いコク、まろやかさがほっこりするおいしさでした。

 ご紹介したほかにも石川県「加賀棒茶」をブレンドした「レストランローブ」のテリーヌショコラや、宮城県生まれのイチゴの新品種「にこにこベリー」を使った「パティスリーショコラトリ―レシィ」のガトーショコラなど気になるスイーツや食材が満載。まさにカカオの多様な魅力を味わえる「GINZAバレンタインワールド」、今から楽しみで仕方ありません。

<取材・文・撮影/木村彩乃(地方創生女子アナ47)>

木村彩乃アナ
千葉県出身。宇都宮CATVからNHK釧路放送局キャスター・リポーターを経て現在はフリー。アナウンス業のほか、スイーツコンシェルジュ・ショコラアドバイザーなど製菓関連の資格を生かし、全国で食の取材を行う。

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第80回:木村彩乃]―

地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト