手間と時間はかかるけど、ホクホクおいしいさつま揚げの作り方を、おさかなコーディネータのながさき一生さんが教えてくれました。新潟の漁村出身のながさきさんが子どものころから親しんできた、お母さん直伝の自慢の味です。
漁師の母に教わる「おいしいけど時間のかかるさつま揚げ」
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言を受けて、なるべく家にいなければならない状況になっています。ただ、逆に「こういうときしかできない」ことを楽しむチャンスでもあり、手間と時間がかかる「時長料理(じちょうりょうり)」もその1つと言えるでしょう。
そして、時間がかかるイメージがあるのが魚料理。短時間でできる魚料理も多くありますが、あえて時長料理に挑戦してみるよい機会ではないでしょうか。
というわけで今回は、新潟県の漁師の家庭で魚料理を30年以上作ってきた私の母に「最も手間と時間がかかる魚料理」について尋ねてみました。
「手間と時間が掛かる料理? んー、揚げ物かな」
揚げ物というだけで「うっ…揚げ物か…」と敬遠する人もいると思いますが、さらに魚を捌いてから揚げるとなると、なかなかの手間がかかります。
なかでも特に労を要するのが「さつま揚げ」とのこと。新潟県で漁師をしていた我が家では自家製のさつま揚げは定番で、同じ漁村の周りの家庭でもかなりポピュラーな料理です。でも確かに、捌いて、すり身を作って、整えて、揚げるという工程を全部行うとすれば、かなりの手間と時間がかかることは間違いありません。この「さつま揚げ」をどのように作るのか、さらに掘り下げてみます。
さつま揚げはどんな魚でも作れます
まず、さつま揚げは何の魚で作るのがよいか。これはどんな魚でもOKです。
手間暇がかかっても漁村ではさつま揚げがポピュラーなワケは、この「どんな魚でもOK」という点に尽きると思います。そして、よく使われるのは大量に家に回ってくる魚です。我が家の場合は「ニギス」という魚が定番でした。
ただ、一般的には生のニギスはなかなか手に入りませんので、安く多めに手に入りやすいイワシやアジなどを使うとよいと思います。
さつま揚げの作り方 1.捌く
今回は時長料理のため、あえて自分で捌く工程からご紹介します。このときの捌き方の基本は、「三枚おろし」です。
三枚おろし初心者は、頭を落とす、内蔵を取り出す、三枚に分けるという工程だけを頭に入れ、細かなことを考えず、とにかく数をこなすと上達が早いです。そして、上手く捌けなくてもおいしく作れるのがさつま揚げのよいところなので、捌き方の練習にももってこいです。
ちなみに、ニギスのような小さな魚や骨が柔らかい魚の場合は、ちなみに、ニギスのような小さな魚や骨が柔らかい魚の場合は、三枚にせずとも頭を落とす、内蔵を取り出すの工程だけでもよいです。
さつま揚げの作り方 2.すり身を作る
魚が捌けたらすり身を作ります。イワシやアジで作る場合、丁寧に作るのであれば、三枚におろした身の皮を取っておきます。
身の部分を包丁で叩いて細かくした後に、それをすり鉢に移してすり潰します。すり鉢がない場合、包丁で念入りに叩くことですり身を作ります。自宅でさつま揚げを作る醍醐味は、すり身を粗めに作って、魚の食感や風味をそのまま残せる点にあります。フードプロセッサーを使う方法もありますが、時長料理ですからこの工程はがんばりましょう。
さつま揚げの作り方 3.揚げる
すり身ができたらそこに細かく切ったニンジンやタマネギ、ゴボウやピーマンなどの野菜を加え、片栗粉、卵などのつなぎで整え、みそなどで味をつけます。
それを団子状、または小判状にし、あとは揚げるだけ。170℃~180℃くらいで、こんがりと茶色になるまで揚げ、油を切ったら完成。揚げたてでホクホクの新鮮なさつま揚げは、市販のものとは一線を画するおいしさですよ。
すり身ができてしまえば、さつま揚げの応用で、すり身をみそ汁にいれる「すり身汁」、すり身を餃子の皮で包んで焼く「魚(ギョ)ーザ」などもできます。
また「時長料理」のよいところは、家族で作るととても楽しめること。さつま揚げであれば、捌く係、すり身を作る係、混ぜて形を作る係など分担をするとよいでしょう。特に、混ぜて形を作る係は小さな子どもでもできます。みんなで「時調料理」にトライして、楽しいおうち時間を過ごしください!
<取材・文/ながさき一生>
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。