中国では生薬としても使われているナツメ。「気」を補うとされ、疲労回復や倦怠感の除去に効果があるといわれます。今回は薬膳アテンダントの池田陽子さんが、希少な国産のナツメと、それを使った薬膳鍋を紹介してくれました。
「気」を補うナツメで、免疫力をアップしよう
免疫力アップがとても気になる今日このごろ。薬膳において、免疫力を高めるためには「気」を補うことが重要とされています。
気とは全身のいたるところを流れている、目には見えないエネルギー源。生命活動を維持するエネルギー源である気が不足すると、疲労感、倦怠感があるといった状態に。そして、免疫力が低下し、抵抗力がなくなってしまうと考えられます。
気が充実していれば「元気」、そうでなければ「病気」になってしまうほど、気は重要。とにかくしっかりと気が全身に満ち足りていることが大切です。
気を補うためにおすすめなのが、薬膳において代表的な食材ともいえる「ナツメ」。ナツメはクロウメモドキ科の落葉高木の果実。中国ではそれを乾燥させたものが「大棗(たいそう)」の名で、気を補う重要な生薬として用いられています。
ナツメは気を補って免疫力を高めるとともに、血を補う作用もあるパワフルフード。疲労、花粉症、不眠の改善に役立ちます。また、美肌、アンチエイジングにもおすすめ。中国では「1日3個食べると年をとらない」とまで言われています。
福井県福井市で栽培される国産ナツメの取り入れ方
日本で流通しているナツメは、ほぼ中国あるいは韓国のものですが、実は国内でも栽培が行われています。福井県福井市の北西部、日本海に面した棗(なつめ)地区は、昔からナツメが多く採れていた地域。「棗の里農園」はこの地で、約5000本のナツメを無農薬で育てています。地区の名前ともなっているナツメを特産品にしたいと、20年ほど前から栽培に取り組み、試行錯誤を重ねて良質なナツメを作ることに成功しました。毎年秋に収穫されたナツメはドライフルーツやお茶、エキスなどに加工。貴重な国産ナツメはほんのり優しく、上品な甘味が魅力です。
免疫力を高めてくれるナツメを手軽に体内に取り入れるなら、乾燥ナツメを使うのがおすすめ。使い方はいたってカンタンです。
もっとも手軽なのは「ナツメ茶」。鍋に水1カップと、ナツメ5個程度を入れて10分ほど煮出します。ほっこり、どこか懐かしい甘さのお茶が完成。ナツメの実に包丁で切り目を入れておくと、よりエキスが出やすくなります。
また、汁ものや煮ものにそのまま加えて煮込むのもいいでしょう。スープ、カレーやシチュー、筑前煮や肉ジャガなどにナツメを数個プラスすることで、手軽に「免疫ご飯」が完成!
エキスを染み出させるために10分以上煮込むのがポイントです。ほんのりとした甘味がつく程度で、どんな料理の邪魔にもならないどころか、むしろおいしく仕上がります。わたしは台所に常備して、みりんのイメージで使っています。
免疫力アップ食材をどっさり使った優しい味わいの鍋
ナツメのレシピは、私の本『ゆる薬膳。365日』でもいろいろと紹介しています。ここでは免疫力アップにおすすめのナツメパワーをさらに引き出す、とっておき薬膳鍋をご紹介します。これはナツメ同様、気を補うキノコなどの食材をたっぷり組み合わせていて、身体の中からしっかりとバリアーを張る薬膳鍋です。疲労回復、花粉症、美容面では肌のたるみにもおすすめ。
◆鶏肉とキノコのパワーアップナツメ薬膳鍋◆
<材料>4人分
・鶏手羽元(塩、コショウをふる) 300g
・ナガイモ 約8㎝
・マイタケ 1パック
・シメジ(根元を切ってほぐす) 1パック
・ショウガ(薄切り) 1かけ
・調味料A(しょうゆ大さじ5、みりん大さじ3、酒大さじ3)
・ナツメ 10粒
・塩、コショウ 適量
・サラダ油 大さじ1
※お好みでカボス、またはスダチ
<つくり方>
1 ナガイモは皮をむいて、ひと口大に切り、包丁の背かめん棒で叩き、割れ目を入れる。
2 フライパンに油を熱し鶏手羽元を、こんがり両面焼きつける。
3 鍋に、水5カップ、鶏手羽元、Aを入れて熱し、煮立ったらアクをとる。ナガイモ、マイタケ、シメジ、ショウガを入れて火を弱めて15分煮たら、塩、コショウで味を調える。お好みで、カボスやスタチを絞って食べる。
具として使う野菜は、すみやかに身体をエネルギーで満たし、免疫力をアップする「キノコ類」、気を補うパワーに優れたナガイモ。そして肉は、気を補うための薬膳によく使用される「鶏肉」。そのパワーをしっかり取り入れるには、骨付きを使うのがポイントです。
鶏肉、キノコのうま味と、ナツメの甘味が染み出したスープがやさしい味わい。ほこっとしたナガイモの食感も癒される鍋です。鍋のあとには、卵を落とした雑炊がおすすめ。ナツメはこちらでも購入することができます。
「国産薬膳食材販売」サイト『Shop de ゆる薬膳』
ナツメを積極的に取り入れて、免疫力を高めてパワフルに日々を乗り切っていきましょう。
(取材・文・撮影/池田陽子)
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)『サバが好き』(山と渓谷社)『「サバ薬膳」簡単レシピ』(青春出版社)など