2020年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅。その開業にちなみ、JR東日本から「高輪ゲートウェイ駅の香り」というエッセンシャルオイル（精油）が発売されています。といっても、都会的な香りがするわけではなく、駅舎に建材として用いられている福島県産のスギをベースにした、さわやかでどこか懐かしい香りです。
さまざまな記念品やお土産があるなかで、なぜ「香り」が選ばれたのでしょうか。JR東日本と、製造元のyuicaに、国産の原料に込めた想いを聞きました。
高輪ゲートウェイ駅のスギの香りをいかしたオイル
東京品川駅と田町駅の間、かつては江戸の玄関口だった高輪に開業した高輪ゲートウェイ駅。山手線の駅としてはおよそ半世紀ぶりの新駅に、周辺の都市開発とあわせ、注目が集まっています。
そんな新駅の開業にちなみ「高輪ゲートウェイ駅の香り」が発売されると聞き、「いったいどんな香り？」とさっそく取り寄せてみました。
山手線のグリーンを思わせるラインが入ったパッケージを開けると、懐かしい木の香りと、さわやかなかんきつ系の香りがふわりと漂います。でも、なぜ高輪ゲートウェイ駅を香りで表現しようと考えたのでしょうか。
じつは、高輪ゲートウェイ駅の駅舎には、東日本大震災の復興を祈念して、福島県産のスギが多く用いられています。香りによって、東北の木材をふんだんに使った駅舎のストーリーを感じてもらい、訪れる人の記憶に残る駅にしたいという思いから、販売に至ったのだそうです。
「高輪ゲートウェイ駅の香り」は森に包まれるような、リラックス気分を感じられる香り
実際に香りの開発を手がけたのは、日本の自然の恵みを活かし、環境に配慮した香り製品を開発している和のエッセンシャルオイルブランド「yuica（ゆいか）」。「未来」「和」という高輪ゲートウェイ駅のテーマをイメージしながら調香したといいます。
「スギの香りは日本人にとって馴染み深い、柔らかい香りです。馴染み深いからこそ、逆に印象に残らない可能性もあります。高輪ゲートウェイ駅にふさわしい、インパクトのある香りにするためにブレンドを工夫しました」と語るのは、yuicaを手がける正プラス株式会社の三津家規英（みつや・のりえ）代表取締役。
「高輪ゲートウェイ駅の香り」には、福島県産のスギの枝葉のエッセンシャルオイルのほかにも、yuicaの拠点がある岐阜県高山市清見町産のクロモジや、高知県産のポンカン、コナツからつくられたエッセンシャルオイルがブレンドされています。
たった1滴、それぞれのオイルの分量を変えるだけで、香りの印象が変わってしまうという繊細な工程を経て生まれた「高輪ゲートウェイ駅の香り」からは、日本の伝統と、近未来的な解放感ある駅舎の雰囲気の両方が感じられます。
アロマディフューザーに垂らして芳香浴を楽しんだり、入浴やマッサージに活用したりと、さまざまな使い方ができるエッセンシャルオイル。実際に購入した方からも「森に包まれるような、深いリラックス気分を感じられる香りでした」といった感想が届いているそうです。
和のエッセンシャルオイルで日本の森を体験
植物から抽出したエッセンシャルオイルの香りを楽しむ「アロマテラピー」はヨーロッパで発展しましたが、近年、ヒノキやクロモジ、ユズ、ハッカなど、日本各地の伝統植物を原料にした「和精油」が幅広い世代に人気です。
外国産の強い香りは苦手でも、日本に昔からある植物の香りには心地よさを感じるという方も多いのではないでしょうか。
スギやヒノキなどの樹木が香りを出すのは、受粉などで利益をもたらしてくれる虫を引き寄せたり、逆に害虫を追い払ったりするためであると考えられています。植物にとってはコミュニケーションの手段である香りのおかげで、私たち人間は、リラックスしたり、元気が出たり、抗菌作用の恩恵を受けたりすることができるというわけです。
yuicaの拠点がある飛騨高山では、冬になるとたくさんの雪が降り積もります。そのため、飛騨高山の森で育つクロモジの木は、温暖な地域のものに比べ、成長が遅いといいます。5年ほどの歳月をかけてようやくひざの高さまで成長する木々は、厳しい環境で育ったがゆえに、濃縮された香りの成分をつくり出します。
同じ植物でも、その土地の気候や環境により、香りの違いを楽しめる和精油の世界。ここ数年、日本各地のさまざまな植物の香りを、インターネットでも購入できるようになりました。
都会にいながら、森の香りに包まれる体験ができる「高輪ゲートウェイ駅の香り」を皮切りに、日本の豊かな森を、香りで旅してみてはいかがでしょうか？
高輪ゲートウェイ駅の香り
10ml／税込2090円
高輪ゲートウェイ駅構内の無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」、またはJRE MALL「鉄道あんてな」にて購入できます
＜取材・文／高橋実帆子 写真提供／JR東日本＞
