宮崎の幻のかんきつ「へべす」。さわやかな香りと酸味がくせになる

宮崎県日向市の特産品「へべす」は、主にご当地で消費されていて県外の流通が少なく「幻のかんきつ」といわれることも。さわやかな香りとまろやかな酸味が特徴のへべすの魅力を、薬膳アテンダントの池田陽子さんが紹介します。

宮崎のヘベスはさわやかな風味でストレスを軽減

へべす
へべす。栄養面においてはアミノ酸が豊富。皮はすりおろして、そうめん、そば、うどんや冷ややっこの薬味にすると、美味しくいただける

 薬膳において、ストレスがたまっている状態とは、目には見えない人間のエネルギー源である「気」の流れが滞っている=「気滞」の状態と考えます。気の巡りは、西洋医学でいう自律神経に重なり、そのコントロールがうまくいかなくなることでイライラ、情緒不安定といった症状が起こります。

 ストレスを解消するには、気を巡らせる食材を取り入れることが大切。おすすめは「かんきつ類」。さわやかな香りが気の流れをよくして、気持ちをリラックスさせてくれるのです。

 そこで、今回は宮崎の食の幸がそろう、宮崎県アンテナショップ「新宿みやざき館KONNE」から宮崎ならではのかんきつを紹介します。

へべすは果汁たっぷりでいろんな料理にマッチ!

 宮崎ならではの香酸かんきつ「へべす」。宮崎県北部に位置する日向市の特産品で、その名前は江戸末期、富高村西川内の長宗我部平兵衛さんが、庭先で栽培していたことに由来します。

 へべすの見た目はスダチや、カボスに似ていますが、風味はまったく別モノ! 絞り汁を口に含むと、まずライムのようなキリッとした香気がたち、続いてどこか懐かしくおだやかで、まろやかな酸味が広がります。

 そして最後に、まるでサイダーのような、シュワッとしたさわやかさが駆け抜ける! わたしは勝手に「微発泡かんきつ」と呼んでいます。その唯一無二の味わいは一度体験するとクセになること間違いなし。

 へべすは肉、魚のどちらとも相性がよく、さらには和洋中すべての料理にマッチするのも魅力。そして驚くべきは、香りや酸味づけだけではなく、お料理そのものの味わいをグンとアップさせること! へべすだけが主張することなく、料理と相まって奥深さを醸し出してくれます。たとえば、肉ジャガや、グラタン、チンジャオロースなどにギュッと絞ると「ワンランク上の味わい」に!

 また、へべすは皮が薄いので、ほかの香酸かんきつ類より搾汁率が高いという特徴があります。半分に切って絞ると、たっぷりあふれる果汁に驚くはず。さらに、種が少ないので絞りやすい! なんとも便利な、かんきつでもあるのです。 

 へべすは地元消費が中心で、県外での流通量は少なく「幻のかんきつ」と言われることもありますが、新宿みやざき館KONNEでは旬を迎える7月から9月頃まで、店頭に並びます。ぜひ、チェックしてみて。また、季節を問わず、へべすの豊かな香りが楽しめる商品も揃います。

手絞りにこだわった、極上のへべす果汁

手絞りへべす果汁
日向市「熊野農園」の「手絞りへべす果汁」

 オーガニックでへべすを栽培する日向市「熊野農園」。大切に育てたへべすのよさをいかした加工品も製造、販売しています。「手絞りへべす果汁」(840円)は、その名のとおり「手絞り」にこだわった100パーセント天然へべす果汁。機械で一気に押しつぶして搾汁すると、皮に含まれる苦味成分も抽出されてしまうため、手作業で絞ることで、へべすそのもののおいしさを楽しめます。

 刺身、酢の物に使うのはもちろん、焼き魚、ソテーした肉など、どんな料理にふりかけてもおいしさがアップ。焼酎に入れると極上の「へべすサワー」に! 水や炭酸水で割ったジュースはこれからの季節にぴったりです。

へべすを皮ごと使った、さわやかな「飲むゼリー」

飲むへべすゼリー
「ひょっとこ堂」の「飲むへべすゼリー」

 宮崎県高鍋市の「ひょっとこ堂」は、宮崎県産のフルーツをふんだんに使ったゼリーが人気のお店。「飲むへべすゼリー」(380円)は、へべすを皮ごと絞ったジュースを使用。とろんとやわらかな口あたりの「飲むタイプ」のゼリーは、へべすのおだやかな酸味をいかしたほどよい甘さ。蒸し暑い日にぴったりの、さわやかな味わいです。

へべす入り甘酒乳酸飲料で、夏の身体をパワーアップ!

ちほまろ
「高千穂ムラたび」が手掛ける「ちほまろ」

「神話のふるさと」として知られる高千穂町。悠久の大自然が広がる秋元集落に位置する「高千穂ムラたび」が手がける「ちほまろ」(280円)は、昔ながらのどぶろくづくりで培った発酵技術をいかして、地元の米でつくった甘酒に、植物性乳酸菌を加えた新感覚の乳酸飲料。保存料、甘味料、着色料、香料などの添加物は一切不使用。諸塚山のわき水、標高600mの棚田米、麹、乳酸菌だけでつくられた身体にやさしいドリンクは、ほんのり甘酸っぱく、とろりとした味わい。「ちほまろ へべす」は、へべすの酸味でより、さわやかで、後味がスッキリ。夏のパワーアップにゴクゴク飲めるおいしさです。

[日本全国アンテナショップでゆる薬膳/池田陽子]

池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)『サバが好き』(山と渓谷社)『「サバ薬膳」簡単レシピ』(青春出版社)など