土用のウナギ、5大産地を食べ比べ。お取り寄せするならどこ?

土用丑の日のウナギ。今年はコロナの影響もあり、自宅でお取り寄せという方も多いのでは? 最近はいろんな産地のウナギが出回っていますが、どのように選べばよいのでしょうか。お取り寄せウナギを40種類以上食べ比べた、おさかなコーディネータのながさき一生さんに産地別の特徴をうかがいました。

ウナギの都道府県別生産量トップ5を食べ比べ

ウナギの食べ比べ
40種類以上のお取り寄せうなぎを食べ比べしたそう

 現在流通しているウナギのほとんどは養殖によって生産され、温暖で清らかな水が豊富な地域での生産が盛んです。そのようなこともあり、ここ最近の都道府県別ウナギの生産量は、多い方から順に鹿児島県、愛知県、宮崎県、静岡県、高知県となっています。このほかにも生産している地域はありますが、お取り寄せウナギを選ぶ際もこれらの地域の商品は多く、主要な産地となってきます。

 ウナギを食べ比べると産地別の傾向があるもので、今回は、5大産地の特徴をお伝えします。

うなぎの都道府県別生産量
都道府県別のうなぎ生産量

まさに王道!鹿児島県のウナギ

おすみうなぎ
生産量が多く正に「うなぎのスタンダード」

 鹿児島県は、ウナギの生産量が日本一。当然ながら、流通量も多く、知らずのうちに多くの人が口にしています。そのような鹿児島産は「ウナギのスタンダード」ともいえる王道な味わい。そして、大規模な事業者が多く、大量に生産をしているため、比較的リーズナブルに手に入るのもうれしいところです。

 九州地方では蒸さずに食感がしっかりとした蒲焼きを好みますが、消費地向けのマーケティングの結果開発された「大トロうなぎ」といった商品もあり、産地全体として、多くの消費者の舌を満足させています。迷うようであれば、まずは王道の鹿児島県のウナギを選ぶといいでしょう。

愛知県のウナギはハイクオリティ!

うな重
関西風好きにはたまらないハイクオリティな味わい

 愛知県のウナギは、西尾市一色町での生産が盛んで、自治体別の生産量では全国トップクラスを誇ります。そこで生産されたものは、一色ウナギというブランドとして業界内でも高く評価されており、正に「ハイクオリティなウナギ」といえるでしょう。

 一色ウナギの特徴の1つに、地下水ではなく矢作川の水を使って育てるという点があります。このようにすることで自然に近い環境での養殖が可能になり、おいしいウナギができるといわれています。

 また、愛知県は「ひつまぶし」が有名なように、ウナギの食文化も豊かです。とくに、関西風の表面はパリッと中はふっくらした食感の蒲焼きを好きな方と相性良いのが愛知県のウナギです。

宮崎県はウナギ新興国

宮崎県産うなぎ 白焼き
クセの少ないうなぎは白焼きにも合う

 宮崎県のウナギは、近年、業界内でもその評価を高めてきています。ほかの都道府県と比べると歴史は浅いながらも、良質なものを生産する宮崎県は「ウナギ新興国」といえるでしょう。

 現地でうかがった話では、「地質に恵まれ、池の水が自然とろ過されるため、臭みが少なくなるのだ」とのこと。クセが少なく、また価格的にもリーズナブルなものが多いため、普段はウナギを食べないという方も満足できるのが宮崎県産の特徴です。

ウナギ伝統国、静岡県

うなぎの刺し身
珍しいうなぎの刺身

 静岡県はウナギ養殖の発祥の地ともいわれ、その歴史が最も長い土地です。さらに、ウナギの食文化についての歴史も長いため、「ウナギの伝統国」といえます。

 その代表的な地域である浜名湖周辺は、関東風と関西風の境目あたりでもあり、ほかの地域よりも白焼きを盛んに食べたり、刺身の商品にもトライしたりと、さまざまな食べ方がされています。そのような伝統国ならではの楽しみがある点が、静岡県のよいところです。

個性豊か、高知県のウナギ

低温うなぎ
個性豊かな高知県発、低温うなぎのうな重

 高知県は、四万十川などの清流に恵まれた地です。ウナギ養殖は、ほかの上位の産地と比べると小規模ですが、独自の取組みを行う事業者が多く、「個性豊かなウナギ」が多くあります。

 たとえば、養殖にボイラーを使わず、低温でじっくりと自然に近い育て方をする低温ウナギといったものもあり、しっかりとした身と適度な脂でおいしくつくられています。このように、ほかの地域とは違ったウナギを楽しめるのが高知県ならではの点です。

 このように、いろんな地域のウナギの違いを紹介してきましたが、ウナギは地域によって求める味が本当に違います。自分にあうのはどこの地域のウナギなのか、上記も参考にしつつ、楽しまれてみてはいかがでしょうか。

〈文・写真/ながさき一生〉

おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。