「関アジ」などとともに、ブランドアジとして注目されている、宮崎県日南市の「めいつ美々鯵(びびあじ)」。さまざまな取り組みを行い、普及を試みてきましたが、コロナウィルスの影響でイベントが次々に中止になりました。そんななか、産地で開催したオンラインイベントが大盛況。おさかなコーディネータのながさき一生さんがレポートします。
「めいつ美々鯵」は宮崎県産のブランドアジ
「めいつ美々鯵」は、宮崎県日南市にある目井津港で水揚げされるブランドアジで、漁業者などで構成する「めいつの魚ブランド化推進協議会」が2017年から展開。3月~6月の旬のアジに限定され、90g以上であることや規定の温度管理を行うなど、厳しい基準をクリアしたものに「めいつ美々鯵」のブランドが付されます。
ブランド化の当初は、隣県大分の「関アジ」など、国内に複数あるブランドアジとの差別化に苦労したと言います。市場関係者への聞き取りや度重なる会合の末、漁場に近い特徴を生かした「鮮度のよさ」を売りにすることに。そのよさを最大限に引き出すため、前述の温度管理のように丁寧な扱いを徹底するようになったのです。
その結果、「めいつ美々鯵」をさばく際に鱗の量が多いことに気がつきます。通常のアジは網の中などで揉まれて、鱗の大半がはがれてしまいますが、鱗があるということは扱いがいかに丁寧かを物語っているのです。
このように、丁寧に扱われた「めいつ美々鯵」は、とにかく上品な味。青魚特有の臭みがほぼなく、程よい脂と身のうま味、そして甘味が口に広がるエレガントな味わいが特徴です。
コロナの影響で今年のイベントが軒並み中止に
今年はブランド化が始まって4年目。取り組みも定着してきましたが、新型コロナウイルスによる自粛の影響が「めいつ美々鯵」を襲います。例年開催してきた市内や首都圏でのイベントが、軒並み中止となったのです。
じつは、このうち首都圏でのイベントの1つは、私が主宰する「さかなの会」が毎年行っている「アジナイト」でした。これをオンラインでできないかと思い立ち、6月20日に「美々鯵ナイト@web」を開催しました。
アジをおいしく食べるオンラインイベントを開催
「美々鯵ナイト@web」では、「めいつ美々鯵」1Kgのほか、さまざまな海産物や地元の焼酎を詰め合わせた特別セットを希望する参加者宅に配送。地元宮崎のほか、東京、長野、大阪、愛知、そしてインドネシアなどから、50名程の参加者が集まりました。
イベントは2部構成で実施。第1部では、宮崎の目井津港のメイン会場からテレビ会議システムを使って、参加者にさばき方をレクチャー。初心者も映像を通じて手取り足取り一緒にアジをさばき、お刺身をつくりました。第2部は、メイン会場での宴会の様子を生中継。生産者と一緒に飲みながら「めいつ美々鯵」に携わる人たちのお話を伺い、質問会やゲーム(くじ引きやじゃんけん大会)を楽しみました。
最後は、全員の「アジがとう!」で締め、大盛況で終えることができました。初めての取組みで、関係者の誰もが「どういうものかよく分からず、不安でどうなることかと思った」と、最初は口にしていましたが、終わってみると「やってみて本当によかった!」と多くの人に言っていただけました。
イベントを終えてみると、関係者から「オンラインイベントだからこそのよさがあるね」という声が聞かれました。その1つは、生産者がアウェイでなくホームの環境で参加できるため、産地のリアルな日常を伝えられるということ。そして、もう1つは、参加者が自宅から参加できるので、生産者がリアルな消費の場をのぞけるということでした。この日常と日常の交流がオンラインイベントのよさといえるのではないでしょうか。
「めいつ美々鯵」は今年のシーズンを終えましたが、コロナをきっかけに新たな取り組みにチャレンジし、すてきな時間を各地の参加者と共有することができました。来年以降の取組みにますます注目です。
<取材・文 ながさき一生>
おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。