―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.6/池田陽子]―
美容や健康の観点から人気の薬膳料理。疲れた現代人を癒す薬膳の素は、全国各地に存在します。そこで、薬膳アテンダントの池田陽子さんがアンテナショップで入手できる選りすぐりの薬膳グルメを紹介。今回は「新宿みやざき館 KONNE」にお邪魔し、夏バテ防止に効く食材と料理を見つけました。
キュウリが入った冷や汁は夏バテ防止の薬膳メニュー
灼熱のコンクリート地獄で、グッタリ…。日々つのる夏の暑さを乗りきり、「夏バテ」を防止するには、まず食事から気をつけましょう。
薬膳では夏バテしてしまうのは、汗をかくことによって、元気の源である「気」も一緒に排泄されることが原因とされます。食べて「体内クーラー化」をはかることが大切です。
中医学では、すべての食べものは、身体を温める「温熱性」、冷やす「寒涼性」、中間にある「平性」に分けられるとしています。夏は、身体をクールダウンする寒涼性の食材を積極的に取り入れることが大切。
オススメはキュウリ。体内の余分な熱をとり、暑気あたりに効果的な野菜です。「熱中症の魔除け」ともいえるキュウリを使った宮崎県名物「冷や汁」は、まさに「夏バテ薬膳」!
生産量日本一を誇るキュウリ県・宮崎の「冷や汁」は温かいご飯に、キュウリなどが入った冷たい汁をかけて、いただく郷土料理。まず、すり鉢に白ゴマを入れてすり、イリコや焼いてほぐしたアジを入れてさらにすり、みそも入れて混ぜ、薄くすり鉢に貼りつけます。
これを、ひっくり返して直火であぶって水を入れてのばし、キュウリ、崩した豆腐、青シソなどの薬味を入れて冷やした汁を、ご飯にかけて食べます。手の込んだつくり方だからこそ生まれる味わい深さ。「ねこまんま」などと言おうものなら、宮崎県人に絶交されるので要注意!
宮崎の食の幸がそろう、宮崎県アンテナショップ「新宿みやざき館KONNE」には、手軽に冷や汁をつくれる「冷や汁の素」がそろっています。水でのばして、具を加えてご飯にかけるだけで、本格的な味わいが楽しめる優れもの。とっておき商品をご紹介します。
おふくろ風味の「癒される冷や汁」
●タカヒラ「西都名物 焼き冷や汁」
タカヒラ「西都名物 焼き冷や汁」(880円)は、西都(さいと)市の60~80代女性を中心に結成された「西都冷や汁保存会」による、西都伝統の味わいが楽しめる冷や汁の素。頭と内臓をとったイリコと、白ゴマ、さらに隠し味として落花生も加えてすり鉢ですり、西都産の麦みそを加えたら、じっくりと焼いて仕上げます。水でのばして、薄切りにしたキュウリ、手で握りつぶした豆腐、青ジソを加えれば手軽に冷や汁が完成。イリコのうま味とゴマ、落花生が醸し出す深いコク、焼いたみその香ばしい風味に、サクサクしたキュウリ、青ジソが見事にマッチして、サラサラといただけます。
汁は濃厚だけれど、おだやかなまるみがあって、キュウリもやさしい味わいに。食べ進めるうち、ホッと癒される「おふくろ風味の冷や汁」です。
生産量日本一・宮崎の「切り干し大根入り」で軽やかな味わい
●道本食品「冷や汁の素」
天日干したくあんをメインに販売する、道本食品「冷や汁の素」(300円)は、珍しい「切り干し大根」入り。宮崎県は、じつは切り干し大根の生産量日本一を誇ります。冬場に寒風で天日干しすることで、豊かな甘味、独特の歯ごたえが楽しめる宮崎県産切り干し大根を、イリコ、ゴマ、カツオ節粉末、米みそ・麦みそなどで仕上げたペーストにプラス。
しっかりとイリコの香りがたった汁は、後味がスッキリした軽やかな味わい。切り干し大根のほのかな甘味と食感がアクセントになって、あっという間にたいらげてしまうほど。軽やかな味わいの冷や汁は猛暑の日にぴったりです。
銅窯でじっくり焼き上げて仕上げる
●向栄食品工業「冷や汁の素」
向栄食品工業「冷や汁の素」(324円)は、銅窯で焼き上げたこだわりの逸品。リピーターも多く、宮崎県出身の有名芸能人も欠かさず愛食しているそうです。
イリコはたっぷりと使用。独自にブレンドしたみそに、白ゴマ、落花生、カツオだしとともに混ぜ込み、大きな銅窯でじっくりと加熱。この工程によって、魚やみその匂いを取り除き、風味よく仕上げます。
汁は上品でやさしい甘味。キュウリや豆腐とともに、なめらかにするするとおなかにおさまり、「お代わり」必至の味わいです。
冷や汁はアレンジしてもおいしい!おすすめは「トマト味」
ちなみに、冷や汁はアレンジしていただくのもオススメ。取材対応していただいた、宮崎県物産貿易振興センター東京事務所所長・日高大介さんは、じつは「冷や汁エヴァンジェリスト」としても活動する「冷や汁のオーソリティ」。そんな日高さんがおすすめの冷や汁の食べ方は「トマト味」。冷や汁の素を水ではなく、トマトジュースでのばしていただきます。
トマト味の冷や汁は、なんともさわやか! 酸味が加わると、いよいよ食欲のない日にもあっさりいただけそう。コクのある「ガスパチョ」風で、やみつきになりそうな味わいです。青ジソをバジルに変えて、オリーブオイルを加えてブラックペッパーをふった「イタリアン冷や汁」にしてもおいしいですよ。
そのほか、豆乳でアレンジするのもおすすめだそう。また、冷や汁の素はご飯だけではなく、そうめんのつゆに使ってもおいしくいただけるとのこと。ぜひ「アレンジ冷や汁」にトライしてみてくださいね。
―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳vol.6/池田陽子]―
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)『サバが好き』(山と渓谷社)『「サバ薬膳」簡単レシピ』(青春出版社)など