沖縄の伝統的農産物「島やさい」。おすすめ5品を紹介

沖縄には「島やさい」といわれる伝統的農産物が28種類ほどあります。今回は野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関するさまざまな資格を持つ津波真澄さんが、ぜひ食べてほしいという5品種を紹介してくれました。

ファーマーズマーケットを埋め尽くす、沖縄の伝統的農産物

シブイ(冬瓜)

 沖縄の食べ物と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。ゴーヤーチャンプルーやニンジンしりしりー、あるいはとろとろの軟骨ソーキがのった沖縄そば、タコライスと言われる方もいるでしょう。

 独特な沖縄の食文化は、訪れる人たちを魅了してやみません。その内容は庶民の食事から宮廷料理に至るまで奥深く、10年以上沖縄に暮らしていても、驚きの発見がまだまだあります。

 元気なおじぃやおばぁが食べてきた食事と、今の若者世代が食べている、似て非なる食事や、「え? こんなものも食べるの?」と目を丸くする食材など、沖縄の食文化・食事情は魅力にあふれています。
 
 そんな中で今回注目するのが、県民の元気を支えてきたとも言える、「伝統的農産物」です。

 沖縄に移住した頃、興味深いなぁと思ったものは、市場に並ぶ、見たこともない野菜や果物。名前も独特で、当時の私の頭の中は「?」だらけ。例えば、棚にぎっしり積まれたシブイ(写真)は冬瓜のことでした。

 単に沖縄の言葉で呼ばれているものもありますが、気候上、育つ農産物が東南アジア的。今でも未知の食材に出合うことがあり、とりあえず購入して、いろいろな食べ方を研究するのも移住生活の楽しみのひとつになっています。
 
 そんな珍しい農産物と出合う代表的な場所は、県内各地にあるファーマーズマーケット。ずらりと並ぶ旬の野菜や果物の多くは、「島やさい」と呼ばれて親しまれている「伝統的農産物」です。

 沖縄の「伝統的農産物」とは、以下のものと定義されています。
 1. 戦前から食されている
 2. 郷土料理に利用されている
 3. 沖縄の気候・風土に適合している

 ちなみに該当する農産物は28種類あり、50音順に「イーチョーバー」「ウンチェー」「オオタニワタリ」「カンダバー」「クワンソウ」「ゴーヤー」「サクナ」「シカクマメ」「シブイ」「島カボチャ」「島ダイコン」「シマナー」「島ニンジン」「島ラッキョウ」「ターンム」「チシャナバー」「ナーベーラー」「ニガナ」「ノビル」「葉ニンニク」「ハンダマ」「フーチバー」「フーロー豆」「紅イモ」「モーウイ」「野菜パパイヤ」「ヤマン」「ンスナバー」。聞きなれない名前がたくさんありますよね。

 特に、「ン」から始まる名前があるのは沖縄独特です(なので、沖縄では「〇〇ん」と言っても、しりとりが終わりません…)。
  

医食同源の料理に使われるおすすめの伝統野菜

沖縄薬膳食
 
 琉球王国時代に中国と深いつながりのあった沖縄には、医食同源の考えに基づく料理が多く存在し、伝統的農産物も使われてきました。薬膳朝食(写真)を出すホテルもあり、その味を楽しむこともできます。

 そんな伝統的農産物から、沖縄を訪れることがあったら、ぜひ食べて欲しい野菜を5種類紹介します。
 
ウンチェー、ヨウサイ、空芯菜

ウンチェー:(和名)ヨウサイ(別名)空芯菜

 沖縄の夏野菜の定番のひとつ。茎が空洞になっているのが特徴で、炒め物にするとシャキシャキとした食感が楽しめます。ニンニクとしゅうゆで味つけをした、シンプルな炒め物が人気。ウンチェーには解毒効果があるとされ、その際は煮物にして食べられていたようです。
    
サクナ、ボタンボウフウ、長命草

サクナ:(和名)ボタンボウフウ(別名)長命草

 1年中出回るサクナは、風邪やせき止めにいいと言われており、ひと茎食べると寿命が1日延びるとの言い伝えもあります。また食中毒防止に、刺身のツマとしても登場します。

 長時間煮込んでも一向に柔らかくならない強靭な葉!一般的にはその葉を細かく刻んで和え物にして食べますが、最近はジュースがつくられたり、粉末にしてお菓子に使われたりしています。

ターンム、ミズイモ、田芋

ターンム:(和名)ミズイモ(別名)田芋

 独特の粘り、風味がなんとも言えない、沖縄の行事に欠かせない食材のひとつ。体力や胃腸の働きが低下したときにも食べられてきました。里芋の1種ですが、ターンムは畑ではなく水田で栽培されます。

 甘辛い唐揚げや、「ムジ」と呼ばれるズイキや豚肉などと煮込んだ「どぅるわかしー」が人気です。いたみやすいため、ゆでた状態で売られています。
 
ハンダマ、スイゼンジナ、金時草

ハンダマ:(和名)スイゼンジナ(別名)金時草

 葉の表側は緑色、裏側は鮮やかな紫色の、ひときわ目を引く野菜です。古くから「血の薬」「不老長寿の葉」として知られ、昔は各家庭に植えられており、疲労時には庭から摘んで食べていたとか。

 生でサラダとして食べるほか、酢の物にしたり、炒めたりして食べるのが一般的です。遊び疲れたら、ぜひお試しを。

ナーベーラー:(和名)ヘチマ(別名)糸瓜

 煮て食べれば熱を取り去り、腸を整えると伝えられている夏野菜の定番。本土ではタワシなどに加工されることが多いのですが、沖縄では若い果実をみそ煮や炒め物、汁物にして食べられています。

 少し土臭さがあり苦手な方もいるのですが、最近は生で食べることができる、クセのないサラダヘチマ(上の写真の右側)が人気です。通常のものと比べ、ずんぐりとした形が特徴です。

 沖縄の元気な農産物を見つけたら、ぜひ料理に。きっと健康に役立ってくれるはずです。

<取材・文/津波真澄>
 
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞した。