各地で開催される陶器市の人気が高まっていますが、今年は新型コロナウィルスの影響で中止や延期を余儀なくされている状況です。そんな中、新しい焼き物の魅力を発信するユニットを、広島在住のパーティスタイリスト・浦岡裕子さんが教えてくれました。
備前焼の模様をモチーフにしたノートや一筆箋を制作
備前焼で有名な岡山県備前市では、陶芸家ではない人たちが焼物以外のカタチで、備前焼の伝統と文化と魅力を伝えたいと立ち上げた商品企画ユニットがあります。その名も「BIZEN PRODUCT」。
「BIZEN PRODUCT」は備前の伊部で窯元、ギャラリーを営む藤田恵さん、木村敦子さん、備前出身で東京在住のデザイナー南裕子さんが立ち上げたユニットです。ここでは焼物を焼物以外のカタチで魅力を伝えるツールとして、ノートと一筆箋に備前焼のモチーフを使い商品化。紙でありながら焼物の美しさを感じられると評判です。ノートはB6サイズとなっていて手帳に挟める使い勝手のいい大きさ。
備前焼の魅力を焼き物以外で表現
陶器の魅力のひとつは、器の質感と、独特の色、模様のバランスだと思っているのですが、このBIZEN PRODUCTではその魅力が焼物以外のプロダクトにぎゅっとつまっているのです。しかも、生活に寄り添うノートというカタチで。
瀬戸内海の穏やかな海と豊かな山々がある備前市伊部の窯元から生み出される備前焼の特徴は、釉薬(陶磁器の表面を覆うガラス質の粉末・薬品)を一切使わず1300℃の高温で焼き上げる工程で生み出される、ひとつとして同じものはでき上がらない模様にあります。BIZEN PRODUCTの製品は、この特徴的な模様である緋襷(ひだすき)と胡麻(ごま)をデザインモチーフにつくられています。
実際の陶器を手に取ってほしいという思いを込めたノート
備前焼ファンは減少と高齢化が進んでいて、売り上げも年々減少傾向に。その中で「備前焼の魅力、伊部の土地の魅力」を生活に寄り添うカタチで発信したいと立ち上がったユニットの活動は、このプロダクトを手に取り魅力を感じることで、実際の陶器への興味や伊部の街への往来の糸口になればという思いが込められているそう。
実際手に取ってみると、ノートの模様や質感から器をイメージでききて、事務用品ではない、とっておきのノートを使っているという特別感と親近感がぐっとわいてきます。そして「どんな器があるのだろう、どんなコーディネートをしたいだろう」という思いへとつながっていくのがとても不思議な感覚。
現在は、数ある備前焼の焼き目のなかで「緋襷」と「胡麻」のみが登場していますが、今後は「牡丹餅」や「さんぎり」などの焼き目のプロダクトも登場するかもとのこと。ますます想像する楽しみが増えそうです
コロナ禍で県境をまたぐ往来や観光がためらわれる中で、こうした馴染みやすく手に入れやすいプロダクトで地域の魅力を知ることは、今後人の往来が可能になったときのための、種まきになっているはず! 「こんなのがあってね」と魅力をシェアしていきたいですね。
BIZEN PRODUCTの製品は、販売店以外にオンラインストアでも購入可能です。
<写真提供/BIZEN PRODUCT 浦岡裕子 文/浦岡裕子>
【浦岡裕子さん】
広島在住。パーテイスタイリスト/バースデープランナー、harenohi_factory主宰。季節の行事やパーティイベント、子どものお祝いなど生活の中にあるハレの日を、キオクとキロクに彩りスタイリングすることをテーマに、イベント装飾のアイテム製作やWEBへのコラム掲載、パーティスタイリングやアイテム製作の誌面協力、子どもと親向け店舗での季節の装飾を担当するなどの活動を行う。