もろみ酢は栄養たっぷり。アスリートからお年寄りまでおすすめ

 沖縄のお酒といえば「泡盛」。実は泡盛をつくる過程でできる副産物から、美と健康に役立つ飲料ができることをご存知でしょうか。それは「もろみ酢」。泡盛の副産物といっても、アルコール分ゼロの清涼飲料です。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、老若男女を問わず飲める、天然由来の栄養成分がたっぷり入った健康飲料をご紹介します。
 

もろみ酢はクエン酸、アミノ酸の宝庫

もろみ酢
 
 沖縄で暮らすようになってから出合ったもろみ酢。初めて飲んだときに驚いたのは、原液で飲めてしまうこと。通常、お酢は原液で飲むとむせてしまったり、胃を傷めたりする恐れがあるのですが、それは主成分が酢酸だから。一方、もろみ酢の酸味はクエン酸。果物に多く含まれている酸です。

 だからマイルドな酸味なのですね。さらに驚いたのは、私たちの体を構成する20種類のアミノ酸のうち、18種類が天然で含まれていることです。
 
 しかも、体内で合成されないため、必ず食物から摂取しなければならない必須アミノ酸9種類もすべて入っています。これだけでも「体によさそう!」と想像できるのですが、なぜこのように栄養豊富なお酢になるのでしょうか。
 

もろみ酢の栄養素は米と麹でつくられる

  
米麹
 
 もろみ酢に含まれる豊富な栄養の秘密は、その親ともいえる泡盛の製造過程にありました。泡盛の原料はタイ米と黒麹菌。お米を蒸して黒麹菌を散布し、米麹をつくる過程で、まずクエン酸や酵素が産生されます。次に米麹、水、酵母でもろみを仕込み、発酵させるのですが、この発酵過程で、酵素の働きにより、アミノ酸などがつくられます。

  発酵が完了したら、蒸留してアルコール分(泡盛になる)ともろみ(日本酒でいえば、酒粕にあたります)に分けます。
 

もろみ酢工場でつくり方を取材

もろみ酢工場 松藤

 蒸留後のもろみが、どのような工程でもろみ酢製品になっているのかを調べるべく、製造工場を取材しました。

 もろみは、新鮮なうちに泡盛工場から運ばれてきます。到着後、色や香り、酸度をチェックし、その日のうちに圧搾機にかけて液体(もろみ酢)を絞り出します。
 
発酵もろみ酢
 
 絞ったもろみ酢に味を調合し、ろ過し、なめらかな口当たりにしたら完成。
 
瓶入りもろみ酢
 
 95℃前後で加熱殺菌したもろみ酢を瓶に充填し、キャップを閉めたらびんを転倒させてキャップの殺菌も行います。徹底した殺菌処理ですね。
 

もろみ酢にはさまざまな健康効果が期待できる

 製造工程を経てできあがった、もろみ酢に含まれるクエン酸には、疲労感や倦怠感の緩和効果が認められています。また、必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンはタンパク質の合成に使われることから、運動後の筋肉疲労回復効果が期待できます。

 そのほか、免疫力の向上、脂肪燃焼の促進、高血圧の抑制、血糖値の正常化、美肌効果など、さまざまな効果が期待できるもろみ酢は、沖縄が誇る優れた健康飲料です。私も運動後には必ずといっていいほど飲んでいます。さわやかな酸味が運動後の疲れた体にぴったり! しかも、アミノ酸が天然成分でとれるのはうれしい限りです。朝のスムージーに入れたりもしています。
 

もろみ酢は飲む以外にもいろいろ使える

もずく酢
 
 もろみ酢にはアミノ酸が豊富に含まれているため、うま味たっぷり。しょうゆと混ぜれば、濃縮タイプのめんつゆのように使えます。また、もずく酢やピクルス、なますなど、通常のお酢をもろみ酢に変えると、うま味が加わるだけでなく、お酢のツンとした香りが苦手な方でも食べやすくなるのでオススメです。
 
 実は、各酒造所で泡盛の味が違うように、もろみ酢も酒造所によって味が異なります。また、飲みやすくするために、黒糖やシークヮーサーなどを混ぜたものもありますので、いろいろ試して、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
 
(取材協力:株式会社松藤、もろみともろみ酢の写真提供:同社)
 
<取材・文/津波真澄>
 
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞した。