巨人キラーが釣り師に!元プロ野球選手が始めた釣り番組が人気

大分県佐伯市は海の地形が多彩なことから、漁業が盛んで釣りの一大スポットとしても知られています。そんな佐伯市では、地元出身の元プロ野球選手川崎憲次郎さんが出演するケーブルテレビの釣り番組が人気を博しています。おさかなコーディネータのながさき一生さんが、お話を聞きました。

350種もの魚介類が生息する佐伯市

川崎憲次郎さん
大分県佐伯市で制作される釣り番組が人気の川崎憲次郎さん

 大分県佐伯市は漁業が盛ん。その水産業生産量は県内の約7割を占めている、大分随一の水産都市です。漁業が盛んな理由の1つに海の地形にあります。リアス式海岸や島々によってつくり出さる複雑な地形で漁場に恵まれ、多種多様な魚介類が生息。その種類はなんと350種以上。そのため漁法も多岐にわたり、海の幸に恵まれた釣りスポットに。森や川からの栄養も豊富に流れ込むため、大きな魚もしばしばかかるとのこと。佐伯市は自然が壮大で、釣り人にとっても魅力的な地なのです。そんな佐伯市で釣り番組を始めたのが、地元出身の元プロ野球選手、川崎憲次郎さん。

漁師だった祖父の影響で、プロ野球から釣りの世界へ

佐伯市の海
佐伯市の海は複雑な地形で魚種が豊か(佐伯市観光協会)
 
 川崎憲次郎さんは佐伯市出身の、ヤクルトスワローズ、中日ドラゴンズで活躍した元投手。ヤクルト時代は、巨人戦にめっぽう強く「巨人キラー」の異名も。チームの日本一にも貢献し、優秀な成績を残した投手のみに贈られる沢村賞も受賞しました。

 プロ野球を引退後、野球解説者のかたわらで、育ててもらったふるさとに恩返しをしたいと思い、佐伯市のケーブルテレビに釣り番組の企画を持ち込んだといいます。ところで、なぜ釣り番組だったのでしょうか。そこには、川崎さんの家族が関係しています。

 実は、川崎さんの祖父は漁師。「釣りのことは、小さいときに祖父から教わりました。」と話す川崎さんは、祖父の影響もあり幼少時から釣りが大好きだったそう。野球の腕前だけなく、漁師直伝である釣りの腕前も一級品なのです。こうして始まった釣り番組は、地元佐伯市の海を舞台に展開。

川崎漁業組合
「川崎漁業組合」は大人気に

 より親しみを持ってもらえるよう、女子に釣りを教える「釣りガール養成講座」(現在は「川崎漁業組合」)というタイトルにしたところ、これが人気に。地元ケーブルテレビだけに留まらず、スポーツチャンネルのGAORA SPORTSでも配信され、メディアにも取り上げられるとともに全国にも知られるようになりました。

釣り初心者もハマる「落とし込み」漁法

佐伯市で釣れる大型の魚
佐伯市で釣れる大型の魚

 川崎さんがもっともおもしろい釣り方と話すのが「落とし込み」です。釣りをしていると、アジやイワシなどの小型魚が針にかかり、巻き揚げているうちに、その小型魚に大型魚が食いつくことがあります。これを意図的に行うのが「落とし込み」。

 手順はまず始めに、サビキと呼ばれる釣り方で水深30m~50m程に生息するアジなどを針にかけます。その後、そのまま水深80m~100mほどにまで釣り糸を落とし、大型のブリやヒラメなどを釣り上げます。

 段階を踏んで魚をどんどん大きくしていくこの手法は、「わらしべ長者」にでもなったかのようにおもしろく、大型の魚が釣れやすいため初心者でも釣りがいっきに好きになるとのこと。さらに、なにが掛かるか分からないのも落とし込みの魅力。「多種多様な成長しきったな魚が掛かる」という点で、まさに佐伯市の魅力を象徴するような釣り方です。

多様な佐伯の魚たちの魅力を発信したい

アクアパッツァ
川崎さんが佐伯市の様々な魚介でつくったアクアパッツァ

 川崎さんは、佐伯市の魚の魅力についても熱く語ってくれました。

「銀座のすしもいいけど、佐伯の魚にもそれと同等かそれ以上にすばらしいものがあります。例えば、冬の時期の寒ボラの刺身は最高で、刺身の中ではいちばん好きかも。毒魚で有名なゴンズイも煮つけにするとおいしいですし、エイの肝だって濃厚であんなにおいしいものがあるのかってくらい。カニもモクズガニがおいしいと思います。上海ガニに近い種で地元では王様的な存在なんですよ」。

 知られざる地元の魚の魅力についても伝えていきたいという川崎さん。釣りの楽しさとともに、地元の魚や様々な知られざる魅力を発信しつづける姿からこれかも目が離せません。

<写真/川崎憲次郎 文/ながさき一生>

おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。