地域おこし協力隊を卒業し、長野県下諏訪町でまちづくり会社を設立した今野由香里さんと綿引遥可さん。毎回、さまざまな小商いに挑戦する人を取り上げていますが、今回はヨガを通して自分の目標に挑戦する女性を紹介します。
保育士を辞めてオーストラリアへ語学留学
小商いは「好き」や「やりたい」が出発点の自分らしい働き方。ワクワクする気持ちをもって、仲間と一緒に学ぶ講座「小商いヤッテミレバ!キャンプ」に参加し、終了後も自分のペースで、小商いやそれにかかわる活動をしている卒業生を紹介します。キャンプ1期生のはっぴーちゃんは、講座を通して大きなビジョンをもつことで、これまで続けてきたヨガや、自分と向き合ってきた経験を元に自分のオリジナルのヨガ教室を始めています。
長女だったはっぴーちゃんは幼い頃から「しっかりしなきゃ」と気を張って過ごしていましたが、弟や近所の子どもたちと遊ぶときは「自由でありのままの自分」でいられると実感。いつしかその時間が好きになり、保育士の仕事を選びました。しかし「遊ぶ」と「教育」の違いを感じたり、「怒る」と「叱る」の区別が分からなかったり、思うように意見が通らなかったりして、「ありのままの自分」ではいられないと10年間務めて保育士を辞めることを決意。オーストラリアへ語学留学に行きました。オーストラリアのヌーサと呼ばれる海が広がる大自然の中で、誰の目も気にせずサーフィンをしたり、ぼーっと夕日を眺める時間は、それまでの心と体の鎧を外してくれたそう。
ヨガに夢中になるも、教えることの難しさを実感
生まれは長野ですが「自分は海のある場所が好き」と実感し、帰国後、サーフィン繋がりの友人からの勧めで参加したワークショップではじめて「アシュタンガヨガ」を体験しました。その後はヨガサークルにも通い、「ポーズ」や「呼吸法」を一生懸命覚え、誰でも入りやすい「キレイYoga」を教える資格も獲得。
ヨガに夢中になったことで自分の軸が整うのを感じるとともに、「私はやっぱり海がある場所に行きたい」という思いにかられ、知人を訪ね再度オーストラリアに向かいました。そのとき初めて知人にヨガを教えてみましたが「ヨガ教えるならそんなんじゃだめだ!」言われ、ショックを受けたそうです。
「今考えると、軽いノリや甘えを見抜かれていたのかなと思えるけれど、親しい人からのひと言は一生懸命やってきたことを全部否定されているように聞こえました」と、当時の気持ちを語ってくれました。悔しい気持ちを抱えつつ、その後ヨガを教えることはあきらめ、自分のためにヨガを続けたそうです。
海辺の生活で気づいた新たなヨガの魅力
その後、「住む場所は海の近くがいい」という希望をかなえるため、ヌーサの環境に近い静岡の海辺に移住を決意。再び始めた保育士の仕事では先輩に助けられながら、課題だった「怒る」と「叱る」の違いもわかり、海辺で育つやんちゃな子どもたちに向き合いました。
しかし、疲れやアシュタンガヨガでの体の使い過ぎで体を痛めてしまいます。そのときに今までやっていたヨガとは反対の「陰ヨガ」に、今までは得られなかったリラックス効果があることを知り、早速実践。心や体の深部や目に見えない感覚を意識することで、心が穏やかになることがわかったそうです。
海辺に住み、サーフィンや陰ヨガを通して自分の感覚を大事にしつつ生活をしていると「イベントでヨガを教えてみない?」という誘いも来るように。ヨガを教える意欲が再びわいてきたところでしたが、体調を崩してしまったのと同時に父親の介護をサポートをするため、地元の長野へ戻ることになりました。
小商いヤッテミレバ!キャンプで新たな目標を見つける
長野に帰ってきて、海がない、サーフィンもできない、ヨガを教える自信もあまりない……。自分でもなにをやるべきか悩んでいたとき、「小商いヤッテミレバ!キャンプ」に出会いました。「1人じゃ不安だけど夢をもった仲間と一緒だったらなにかできそう!」という気持ちで応募してくれたのです。
講座で出会った仲間たちは夢こそ違えど、皆で目標にまい進するエネルギーが心地よく、心の支えにもなったそう。そして、自分自身の経験と仲間のアイデアから「すべての女性が安心してなんでも話せる癒しの場所、women’s サークルをつくりたい」という大きい目標ができました。
コロナ禍で実践するまで時間がかかってしまったものの、行動に移す元気が出なかったときも一緒だった仲間たちと、初めてイベントに出店したことで「やってみないとわからない! アウトプットしなきゃ!」という思いや自信が少しずつ育まれていきました。現在は目標を見据えつつ「まずは今できることを」と、インスタライブを使ってオンラインのヨガ教室をしています。今後は地元の神社内の施設を使い、木に囲まれたヨガ教室にもチャレンジしたいとのこと。
「まだまだ走り出したばかりだし、これから気持ちの変化はあるかもしれないけど、ずっと続けてきたヨガと、ヨガの考え方でもある『体の中にあるいくつかの車輪(チャクラ)をエクササイズによってちゃんと動かすことで心身の健康を保つとされる』ということを丁寧に伝えていきたいです。心と体に意識を向け自分や自分の体を知ってもらい、“ありのままの自分を愛すること”を体験してもらいながら、ビジョンに向けて何が必要なのか出会う人と一緒に見つけていきたい」と語ってくれました。熱い思いをもちながら、優しい声と口調で語り、たまにおちゃめに笑うはっぴーちゃん。これからのチャレンジも楽しみです。
今野由香里さん 綿引遥可さん
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。2020年、合同会社 chiokoを設立し、下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。