釣り場のごみを楽しく掃除。クラブハウスから生まれたプロジェクト

コロナ禍で三密が避けられると釣りが人気を集めていますが、全国の釣り場ではゴミ放置が問題に。そこで、釣りをこよなく愛する人々が全国の釣り場をキレイにしようと立ち上がりました。音声SNSとして注目されているClubhouseから始まったこの取り組みを、おさかなコーディネーターのながさき一生さんがレポートします。

コロナ禍による釣りブームで起きたごみ問題

全国の釣りを愛する人々が釣り場をキレイにするため集結

 新型コロナウイルスの蔓延は、全国レベルでレジャーの形を変えています。三密を避けられると、アウトドア志向が加速。なかでも人との距離を保ちながら楽しめる釣りは、コロナ禍にもってこいのレジャーとしてとくに人気に。しかし、全国各地の釣り場では、地元の人たちから悲鳴が上がります。その理由は釣り場でのルールやマナーを守らない人がいること。代表的なものは、ごみの放置問題です。

釣り場に放置されたゴミの一例(新潟県糸魚川市筒石漁港)

 釣具や残ったえさに加えて、空き缶や BBQの残骸など、さまざまなゴミが目立つようになってきたのです。この状況をなんとかしたいと、全国の釣り好きが立ち上がりました。その1人である「釣りの学校 校長 ともみ」さんにお話を伺いました。

音声SNS「Clubhouse」での集まりがキッカケに

釣りの学校 校長 ともみさん

 その取り組みとは、音声SNSとして注目されている「Clubhouse」でルームを立てたことがキッカケだったそう。
「お世話になっている釣り場に恩返しがしたい。釣り場をキレイしようと仲間に呼びかけてClubhouseでルームを立てたところ、賛同の声が多く、数十名が集まり全国規模になっていきました」。
 
 こうして始まった活動は、名前を「ひーろうず」として、全国の釣り場で清掃活動を展開。Twitterハッシュタグ「#ひーろうず」のほか、各種SNSを使って情報発信もしています。名前の由来は、ごみを「拾う」と「ヒーロー」をかけたもので、ダジャレも取り入れ、楽しく参加できるような雰囲気づくりを心がけています。

全国十数か所で釣り場のゴミ拾いを展開

「ひーろうず」
「ひーろうず」による全国一斉ゴミ拾いの様子

 ひーろうずでは、週に数回Clubhouseでの会合を開催。そのなかで「Clubhouseをつなげながら、全国一斉ごみ拾いをやったらおもしろいのではないかという話が出ました。じゃあ、それをいつやろうかと考えたときに、3/14ホワイトデーがいいだろうと。釣り場に恩返しする日という意味合いになりますからね」。

 こうして3月14日の15時頃から、全国十数か所一斉に釣り場のごみ拾いを実施。ごみ拾い中は、Clubhouseでルームを立て、それぞれの状況を実況。ただ、ごみを拾うだけではおもしろくないということで、「ごみを用いてしりとりをつなげる」という取り組みも行ったところ、これが大盛り上がり。
 1時間程ごみ拾いをしたところで、お互いのごみの様子を画面で共有すると、スマホ画面はゴミでいっぱいに。釣り場はキレイになり、全国一斉ごみ拾いを気持ちよく終えることができました。

楽しみながら釣り場をキレイにする空気を広げたい

拾ったゴミでいっぱいになった「ひーろうず」のClubhouse画面

 ホワイトデー全国一斉ゴミ拾いの後も「ひーろうず」の取組みは、広がっています。「今後もゆるーく続けて和を広げ、拾う人が捨てる人を上回るようにすることが目標です。釣り場を大事にしようというポジティブな雰囲気をさらに広げていきたいですね」。「ひーろうず」はだれでも参加OK。

話題のSNS、Clubhouseから広がったこの取組みは、全国の釣り場をキレイにするだけなく、釣りの楽しさや素晴らしさをもっともっと広げて行くことでしょう。

<写真・ひーろうず、ながさき一生  文・ながさき一生>

おさかなコーディネータ・ながさき一生さん
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、自ら主宰する「魚を食べることが好き」という人のためのゆるいコミュニティ「さかなの会」は参加者延べ1000人を超える。