―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第43回:池田麻里子アナ]―
全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は沖縄に移住した池田麻里子アナが、沖縄特有の桜やお花見文化についてレポートします。
日本一早く桜が咲く場所、沖縄やんばる
桜前線もどんどん北上し、ビール片手にお花見を楽しまれた方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。沖縄のやんばるでは年明けから桜が咲き始め、1月21日以降は桜祭りラッシュが続き、3月末にはとっくに葉桜も過ぎて、サクランボがたわわに実っております。
沖縄は真冬でも10℃を下回る日はほぼなく、暖かい日は25℃近くまで上がることもあり、20℃を下回る日でも日差しが強いと暑くて半袖で過ごしてしまう日もあるほど。※写真は1月末の今帰仁(なきじん)城跡
そんな暖かい沖縄の冬に驚いたのは、桜前線は南から北上していくはずと思っていたところ、北部のやんばるから咲き始めたこと。なぜでしょう?? 理由としては、桜は一度寒くならないと咲かない特性があるそうで、北風を受けやすい北部から、そして山頂付近の、寒さをより早く感じた桜から開花するということだそうです。
沖縄の桜はソメイヨシノではない
沖縄の桜は一般的に知られているソメイヨシノではなく、寒緋桜(カンヒザクラ)という種類の桜です。特徴としては、まず「色」。写真でもおわかりいただけるように、ソメイヨシノのような白と淡いピンクではありません。筆者は移住して最初に寒緋桜を目にしたときは桜と認識できず、紅梅かと思ってしまったほど、濃いピンク色をしています。なかには薄いピンクや突然変異で真っ白という場合もあるのですが、基本的には濃いピンクです。
もうひとつの特徴は、花の最後とでもいいましょうか、「散り方」です。桜といえば桜吹雪という表現はじめ、桜が舞う、舞い散るなど、花びらがひらひらと散っていく、その散り様も美しく、和歌にもたびたび出てくるほどですよね。寒緋桜は違うんです。花びら、散りません、舞いません。目一杯、咲いたあとは、花ごとそのままボテッと落ちます。風情がない気もしますが、そんな終わり方をする桜があることに驚きでした。
沖縄で咲く桜は寒緋桜がほとんどですが、離島の久米島には「クメノサクラ」という白からピンク色になる種類の桜もあります。そして、沖縄本島北部、本部町(もとぶちょう)の伊豆味(いずみ)という地域には、1950年代に久米島からクメノサクラが接木されてやってきており、一時は絶滅寸前状態だったこともあるそうですが、平成後半には伊豆味のなかだけで1000本もの規模になっていたこともあるそうです。
クメノサクラは3月半ばから3月いっぱいが見頃で、寒緋桜とは時季がずれるため、やんばるでは2度目のお花見ができます。また、散り方も寒緋桜とは異なり、ソメイヨシノのように花びらがひらひらと舞い散るそうです。
筆者が3月半ばに訪れた、伊豆味のほぼ中心に位置する「クメノサクラ祭り」の会場では、約100本もの白い可憐なクメノサクラが七分咲き程度に花を咲かせておりました。クメノサクラの維持繁栄のためには募金が設けられており、筆者も心ばかりの思いを投入しました。素敵なものはちゃんと後世に残していきたいです。
沖縄にはお花見文化がない!
お花見といえば、桜の木の下でピクニック(酒盛り)をするのが当然と思っていたのですが、なんと沖縄にはそんなお花見文化はありません。もったいない! と思ってしまうのは私だけでしょうか…。基本的にドライブしながら楽しむか、桜を見ながら散歩をするくらいの感じです。1月末に開催された名護市の桜まつりでは、たくさんの出店があり、焼きそばやたこ焼きを買って道端で食べたりはしているのですが、それらを持って桜の木の下にピクニックシートを広げて…という行為はいたしません。
それならば、お花見(いわゆる桜を見ながら特定の場所を決めて宴会)にいい場所を取り放題なのでは!? と思い、名護の桜の名所、名護城公園の東屋へ行ってみたところ、思った通りガラガラ。ウソでしょ? こんなにお花見に絶好の場所が…。新人社会人なら前夜から場所取りをさせられているような場所に1人もいない‼ このお花見文化の違い、聞いてはいたのですが、実際に目撃すると驚きを隠せませんでした。
桜の木とサクランボの関係とは
桜のシーズンになればお酒を片手につまみを小脇に、お花見を繰り返してきた筆者ですが、目の前でこれでもかと咲き誇る桜に、いわゆる食べられるようなサクランボがならないことについては漠然と不思議に思っていました。
それが沖縄に移住後、3月半ばを過ぎた頃に、保育園から帰ってきた娘が「サクランボ食べた! 酸っぱくておいしかった!」と言うのです。どうやら園庭の立派に成長した寒緋桜の木にサクランボがたくさん実っており、みんなで取って食べているそう。驚いてお迎えのときに観察すると、本当に小さなサクランボがたわわに実をつけていたのです。
娘やそのお友達にせがまれてサクランボを採ってあげたのですが、サクランボが桜の木に成っているのを見るのも、ましてや収穫するのも、収穫したそばから子どもたちに食べさせるのも初めての経験で、とても新鮮でした。
ただしサクランボといっても寒緋桜の実は、いわゆる一般的な直径1.5~2cmほどの丸い形ではなく、5mm~1cm程度の小さくてかわいい、少し面長な形をしています。ちなみにソメイヨシノがなぜ実をつけないのか調べたところ、そもそも観賞用につくられた桜で、食べられるようなサクランボは実らないのだそうです。
沖縄の桜事情、いかがでしたか? 冬に沖縄に遊びに行ってもなにするの? まだ泳げないでしょ? 暖かいの? と思われているあなた、美しい寒緋桜たちが年始から鑑賞できますし、3月にはサクランボも食べられるし、クメノサクラも咲きます。なんならおいしいイチゴ狩りもできますし、ザトウクジラがやってくるのでホエールウォッチングツアーにもいけますが、これらはまた別の機会にお届けしますね。
<取材・文・撮影/池田麻里子>
池田麻里子さん
東京・埼玉・宮崎・沖縄を担当。テレビ宮崎の「スーパーニュース」でスポーツキャスターを務め、J:COMデイリーニュース担当、ネットニュースなどにも出演。現在はFMやんばるにてパーソナリティーを務める傍、やんばる経済新聞の記者としても東奔西走している。話し方・見せ方・聴き方などのコミュニケーション力向上の講座を開き、講師も務めている。
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地方創生女子アナ47
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