滑川市の未来を小中学生が考える「なめりかわ未来学校 サマースクール」開催

WEBライターを経たのち、現在は富山県滑川市の地域おこし協力隊として活動する田中啓悟さん。今回は夏休みを迎えたばかりの子どもたちが挑む「なめりかわ未来学校 サマースクール」の様子をレポートします。

デンマーク流の教育手法を取り入れた4日間のプログラム

なめりかわ未来学校のオリエンテーション
開会の様子

 滑川市の小・中・高・大学生などを対象とした実践的な学びと遊びの場「なめりかわ未来学校」。子どもたちの個性を伸ばし、社会参画意識を育むことを目的として、2023年にスタートしました。

 そのなめりかわ未来学校で小中学生を中心に行う「なめりかわ未来学校 サマースクール」が、2024年も夏休みに開催されました。人材育成において国際的に高い評価を得ているデンマーク流の教育手法を取り入れながら行われる盛りだくさんのプログラムは、なんと参加費無料。夏休みを充実させる学習の一貫として心おきなく楽しんでほしいと、滑川市をはじめ市内の企業や東京から運営に携わってくれる企業もあり、サポート体制も万全です。

 先立って行われたオリエンテーションは水野達夫滑川市長のあいさつから始まり、運営サイドの紹介が続きます。参加者たちは初めての顔合わせということもあり、やや緊張気味。

紙を見ずに似顔絵を描くゲームをしている子どもたち
紙を見ずに似顔絵を描くゲームを実施

 その後は参加者同士の親交を深めるため、紙を見ずに10秒以内で相手の似顔絵を描くというゲームを実施。会場内を歩き回って目が合った参加者の顔を描いていきます。

 紙を見ない、10秒以内に描くという「できなくて当たり前」の環境でペンを動かすことによって、絵の得意・不得意に関係なく、だれでも楽しくチャレンジできるこのゲーム。でき上がった絵を見るなり場内は笑いに包まれ、自然と会話も弾みます。

小学生に話しかける大学生
高校生や大学生も参加

 おもな参加者は小中学生ですが、県内の高校生や大学生もサポート。小学生に声をかけながら自らもゲームを楽しむ姿は、生き生きとしていました。

多彩なプログラムをとおして滑川の未来を考える

話を聞きながらメモを取る子どもたち
話を聞きながらメモを取る子どもたち

 オリエンテーションから10日後の7月30日。ついに「なめりかわ未来学校サマースクール2024」の本プロジェクトがスタートしました。

 1日目は、市内の企業や市内で活動されている人たちに話を聞いて回ります。私はスマート農業の技術を使って未来の農業を支えている会社に子どもたちと訪れましたが、話を聞きながらメモを取ったり質問をしたりと、大人顔負けの対応力に感心しました。

機械を操作する子どもたち
実際に機械を操作させてもらう

 農業でいちばん時間がかかり、負担が大きいといわれている水管理をスマホひとつで解決できる装置を、実際に触らせてもらいました。ボタンひとつで給水ゲートが開閉したり、内部の部品が動く様子に、子どもたちも大興奮。高齢化や耕作放棄地をなんとかしたいという思いが、農業に携わりやすい環境づくりの原動力になっているようでした。

画用紙に文字や絵を書き込む様子
フィールドワークで得た情報をまとめる

 2日目は前日のフィールドワークで得た情報をまとめ、班ごとに発表を行います。私の班は1枚の画用紙にまとめて発表する方式でしたが、紙芝居やクイズ形式にする班もあったりと、それぞれに工夫が見られました。

 発表でも緊張する様子はなく、みんなスラスラと台本を読み上げているのにはびっくり。私が小学生のときなら、きっと渋い顔で硬直してしまっていたことでしょう。

動物をモチーフにした便利なアイテムについて話し合う様子
動物をモチーフにした便利なアイテムを開発する

 3日目は動物をモチーフにしたアイテムの開発を行いました。動物がもつ特徴を人間に使ったり身につけるとしたらどういったものになるのかを、みんなでワイワイ楽しみながら考えます。

 私のお題はニワトリだったので、朝になったら起こしてくれるチキンキャップなるものを制作しました。キャップが音を発するのではなく、時間になったら自分が叫んで起きるというもので、人に起こされたときの不快感をなくすことができるというのが狙い。我ながら、なかなかよいものができたと自負しています。

 このあと、最終日の発表に向けて「2034年の滑川市」を想定したテーマを決めます。今から10年後の滑川市にどういったアイテムがあると便利か、まちがにぎやかになるかをチーム内で話しながら制作を進めました。この作業が終わると、いよいよみんなが楽しみにしていた宿泊体験へと向かいます。

バーベキューと花火で夏を満喫

バーベキューを楽しむ子どもたち
炭火でバーベキュー

 施設に着くとまずは腹ごしらえ。各々のテーブルで肉や野菜を中心にバーベキューを楽しみます。連日の発表や成果物の作成などで頭を使いっぱなしだった子どもたちの箸は止まるところを知らず、あっという間にテーブルの上から食材が消えていきました。最後はデザートでスイカをいただき、夏を満喫。

手持ち花火ではしゃぐ小学生たち
手持ち花火ではしゃぐ小学生たち

 日が完全に落ちると、広大なグラウンドで花火を楽しみました。私は子ども時代を懐かしみながらその様子を眺めているだけでしたが、久しぶりに間近でかいだ花火の香りが先ほどのスイカとも相まって、余計に夏を感じる瞬間でした。

ラジオ体操をする子どもたち
最終日はラジオ体操からスタート

 夜が明け、最終日はバーベキューを行った広場に集まって朝の6時半のラジオ体操から始まります。朝6時起床は普段早起きをしない私にはなかなかつらく、眠気をこらえるのに必死でした。

10年後の滑川市についてのアイデアを発表

発表する小学生たち
1人ひとりが知恵を出して、滑川の未来を創造する

 最後のプロジェクトは「2034年の滑川市」についての発表。各々が志をもって考え抜いた道具や構想を披露しました。「手に持つとアイデアが浮かんでくる棒」や、「落ちているゴミをすべて吸ってくれるゴミ箱」など、環境問題や人口減少にもフォーカスした案が次々と発表され、意識の高さがうかがえました。

 滑川の伝統文化をほかの地域にも広げ、一体となってやっていきたいという話も挙がり、大人の見学者が思わずうなる場面が何度も見られました。子どもたちのすてきな発想を聞き、その場にいるみんなが滑川市をよくしようと考えた最終日でした。

テーブルを囲み談笑する大人と子どもたち

 こうしてサマースクールのプログラムがすべて終了。最後はオードブルを囲み、大人も子どもも交じっての談笑タイムです。来年もあったら参加したいね、などといい合う子どもたちの姿もありました。この4日間をとおして仲が深まっただけでなく、同じ目標を掲げて意見を出し合ったことが、なによりも彼らの成長の糧となったのではないかと思います。

 未来の滑川市、未来の日本のために、みんなが見せてくれる次の発想が楽しみです。

<取材・文・撮影/田中啓悟>

田中啓悟さん】
大阪府大阪市出身。大阪の専門学校を卒業後、WEBライターとしてデジタルゲーム関連の記事を執筆。その後、「訪れたことがない」という理由で富山県に移住し、地域おこし協力隊として、空き家バンクの運用・空き家の利活用をメインに、地域の魅力発信やイベントの企画に携わっている。