島民11人の大分深島で家づくり。基礎から内装まで夫と義父がDIYで完成

大分県南部、佐伯(さいき)市蒲江(かまえ)から船でおよそ30分のところにある住民11人の小さな離島「深島(ふかしま)」。島の周囲は約4km、20分も歩けば集落すべてを回ることができる小さな島で、70匹の島ネコに囲まれ暮らすあべあづみさんに日々のことをつづってもらいます。今回は、深島での引っ越しについて。

小さな深島のなかで引越し。新居は夫と義父が手づくり

大分県佐伯市深島で引っ越し

 突然ですが、引っ越しをしました! え! 島を出たの!?と思われた人もいるかもしれませんが、安心してください。小さな島内での引越しです。徒歩3分くらいの距離へ家族5人の大移動です。

 あべ家はこれまで島内にある市営住宅に10年間くらい住んでいました。そもそも市営住宅があることに驚かれることが多いのですが、もう40年以上前にできたメゾネットタイプの住宅です。1階にキッチンと6畳リビング(畳敷!)とお風呂(脱衣所なし!)トイレ(和式ボットン!)、2階に3部屋(6畳、4畳半、3畳)があります。

島内にある市営住宅

 暮らすことに不便はまったく感じていませんでしたが、子どもたちが大きくなってきてさすがに家族5人だと狭い…。そして仕事場である「inn&cafeでぃーぷまりん」から地味に遠い…。宿泊のお客さんがいるときはお客さんの食事が終わってからわが家の夕食なので、子どもたちのご飯が遅くなってしまって寝る時間が遅くなって朝起きなくて、と悪循環。

 家が近ければ、ささっとお風呂に入れたり、ご飯を食べて先に寝といてねっていえたり、子どもたちが大きくなれば各々で過ごせたり、仕事も暮らしも少し楽になるかな、と思ったのがきっかけです。

 新しいわが家は夫とじーじ(夫の父)が建ててくれました。間取りは建築士さんと私たちが相談して図面を書いてもらい、そのあとは基礎からの手づくり。

新しい家は夫とじーじ(夫の父)の手づくり

新しい家は夫とじーじ(夫の父)の手づくり

 以前宿泊施設とカフェを併設した「inn&cafeでぃーぷまりん」を建てたときもそうでしたが、重機がユンボ(パワーショベル)と軽トラしかないのでコンクリートを練るのも木材を運ぶのも建てるのも、ほとんどすべて手作業です。すこしずつでき上がっていくわが家を眺めつつ、職人さんや資材屋さんがきたら電気の場所や窓枠や壁の色を相談したり、ここにはなにを置こうかなあと思いを巡らせていました。

 そしてようやく! 9月に引越し開始。ちなみに10月初め現在、まだ屋内の扉がありません笑

屋内の扉を設置する前

 荷物はこれまた手作業で運びます。まずは、収納場所を考えながら最低限の生活用品と衣類をすこしずつ運んでいます。小さな荷物はカバンや箱に詰め込んで徒歩で、大きなものは軽トラに乗せて、10往復はしたでしょうか。徒歩3分とはいえ、何度も坂道を行ったり来たりするのはとてもいい運動になります。夫は運ばれる荷物に合わせて棚などを製作中。

引っ越しの荷物を載せた軽トラック

運ばれる荷物に合わせて棚などを製作

運ばれる荷物に合わせて棚などを製作

 手づくりすると家の長さやものの幅に合ったジャストサイズの棚ができ上がるのでとってもうれしいです。離島とはいえ、ネット通販ですぐにものを買えてしまうので簡単に買ってしまいがちですが、こうして自分たちに必要なものは自分たちでつくっていくほうが、何倍も使い勝手がよく愛着もわきます。

 まだまだ10月中は引越し作業が続きそうですが、あれやこれやと楽しみながら、すぐにものを買わず、つくったり、じっくり悩んだりしながらこの先も新しい家での暮らしを楽しみたいと思います。

新居のリビング

玄関扉はクスノキ、窓の位置はつくりながら決めた

 まずは玄関。カタログでたくさんの玄関扉を見て悩んでいたら、じーじが「つくっていいならつくるぞ」とひと声。もちろん即答でお願いしました。玄関扉ってつくれるんですね!! 木材はクスノキ、扉の周りの壁もクスノキです。クスノキは防虫効果のある木材で(すごい香り!)、家にはもってこいなんだとか。

じーじお手製の玄関扉

 写真をよーく見てください。玄関の取っ手が二つあるのがわかりますか?
 取っ手は夫がつくってくれたのですが、低い位置のは子どもたちのための取っ手。屋内側は低い位置に1つ。なるべく子どもたちが自分で開け閉めできるように、ものをとったり使ったりできるように、子どもたちの「自分でする力」をつけるあべ家流の生活の工夫です(自分でしてくれると親が楽というのもあります笑)。

広くなった新居のお風呂

 次にお風呂。ユニットバスではなく、湯船とシャワーなどだけ購入して、あとは夫がコンクリートを練って、タイルを貼ってつくってくれました。これまでのお風呂は昔ながらの小さな湯船で大人1人と子ども1人が入ったらいっぱいいっぱいでしたが、みんなでゆっくり入れるようになりました。

 木の天井や床、珪藻土の壁もお気に入りです。まずは間取りを決めて家をつくりながら窓の位置や壁の色などを決め、最後に収納場所を決めながら暮らしています。まだまだ少しずつ、みんなが居心地のいい家をみんなでつくっていきたいと思っています。

深島に建築中の新しい家

 余談ではありますが、じつは私、片づけがとても苦手で、掃除も苦手です。決まった場所があれば元に戻すことはできるのですが、行き場のないものたちが散らかりがち。なので「散らからない」を意識しつつ、ものの住所を決めて、散らかりがちなものをどうやったら整理整頓できるか考えながら収納を決めているところです。

 また、床にものがあると掃除の意欲がなくなってしまうので、なるべく床にものは置かない、そして掃除が楽しくなる掃除用品を探し中。使いたくなるかわいい掃除用品があったらぜひ教えてくださいね!

<写真提供・文/あべあづみ>

【あべあづみ】
住民12人の小さな離島「ふかしま」の島民。「深島を無人島にしない」をミッションに、夫と2人でぃーぷまりんとして深島みその製造やinn&cafeの運営をしています。深島にすむ人も来る人もネコもほかの生き物たちも、みんなが今よりほんの少し幸せになれる島を目指しています。尊敬する人は深島のばあちゃんたち。ふかしまにゃんこ(@fukashima_cats)、深島活性化組織Deepblue