0歳児と九州にお試し移住。家族と幸せに暮らせる場所を探して

[子育てファミリーのお試し移住体験記 第1回]

身軽な荷物で日本各地に滞在してきたライターのたけだかずまささん。結婚して子どもができた今も、「家族で幸せに暮らせる場所」を探したいと、移住先を探して活動を続けています。そんなたけださんにお試し移住体験や、日々の暮らしをつづってもらいます。

0歳の娘と九州へ1000キロの旅

香春岳
香春町の隠れた名所「薬師の頭」から北九州をのぞむ

 はじめまして! 30代のフリーライター・たけだかずまさと申します。30代の妻、そして去年生まれたばかりの0歳の娘とともに、都内に住んでいます。

 独身時代は「パソコン1台あれば仕事ができる」という身軽さから、「ノマド」のようなライフスタイルでした。リュックサックにノートパソコンと最低限の着替えだけを詰めて、飛行機や電車に乗るのです。ライターとして駆け出しの頃に訪れた「沖縄」からはじまり、日本各地へ足を運び、滞在してきました。

 結婚し、娘が生まれてからは「当分好きな旅はできないな…」とあきらめていましたが、去年の10月、縁もゆかりもない北九州の「移住体験(トライアルステイ)」に参加。娘はなんとまだ生後6か月でした(笑)。

 東京から1000キロ以上離れた北九州への旅。結果的にこの経験が、僕の先入観を打ち破り、新たな目標ができるきっかけにもなりました。

香春町で知った「ファミリー移住」という選択肢

香春町田園
香春町のシンボルである3つの山「香春岳(かわらだけ)」と広がる田畑

 僕らが1か月間も移住体験させていただいたのは、福岡県田川郡香春町(かわらまち)という土地です。地域おこし協力隊を窓口とした移住体験(トライアルステイ)が実施されていて、妻がこの情報をTwitterで見つけたことがきっかけで参加に至りました。

 香春町は『風土紀』や五木寛之氏の小説『青春の門』にも登場する場所で、セメント産業を中心に発展しました。福岡市へはクルマで1時間。小倉へは車ほか、ローカル線1本で、1時間たらずで行くことができます。

 豊かな山と田園を有し、とてものどかな香春町。その風景は、多くの方がイメージする「里山」そのものではないでしょうか。流れる雲や、風にそよぐ稲穂を眺め、川のせせらぎを聞く…これほどぜいたくで心洗われる瞬間は、なかなか都市部では味わえないかと思います。

日田彦山線
川釣りスポットと、山をダイナミックに走るローカル線日田彦山線(ひたひこさんせん)

 ラーメン、うどん、ホルモン、柿、お米、さらに山間にも関わらず魚市場もあり…などグルメの豊富さも香春町の魅力です。道の駅から地元のいろいろなお店まで、とにかくおいしくて、ハズレがありません。なお、2つの国道がクロスしていることから、普段の買い物など、利便性の高さは想像以上でした。

 地域おこし協力隊の皆さんの活躍も印象的で、町の魅力発信や、移住を含めたさまざまな体験・イベントにも力を入れています。このような取り組みが着実に実を結び、香春町に移住を決めたファミリーや、定期的に香春町を訪れるご家族もいらっしゃいました。

表彰状
0歳の娘。食のイベントに参加して、人生初の賞状をいただきました!

 そんな香春町では「地域全体で子育てしている」という印象的を強く受けました。地域の方々が自分の子や孫のように「子ども達を大切に見守り、かわいがる」というサイクルが生まれていましたが、これは少子高齢化の思わぬプラス面といえるかもしれません。

 当初は「赤ちゃんがいても参加できるの?」という点がいちばん不安でした。しかし、事前にSkypeやメールで丁寧にご対応いただき、現地に着いてからも安心して、香春町の魅力に存分に触れることができました。

 実際に、娘は香春町で本当にかわいがっていただき、ほかの子達と触れあう機会も多くありました。これは娘にとっても、僕や妻にとっても、本当にいい経験だったと思っています。

 そして、移住された方の生の声を聞き、メリット・デメリットがリアルに分かったことで「東京以外の場所で家族と暮らす」という可能性が鮮明となりました。

「家族で幸せに暮らせる場所」を探したい

日明釣り公園
 香春町から車で1時間たらずで行ける「日明(ひあがり)・海峡釣り公園」。多くの釣り好きが訪れ、1日中海釣りが楽しめます。夫婦でハマりました

移住体験後、妻がふと口にしたひと言が印象的です。
「東京はキライじゃない。なにかと便利だし、好きなんだけど、正直飽きてきた」

…この言葉を聞いて、僕自身も、まったく同じように感じていることに気づきました。

 私たち夫婦は東京圏で生まれ、ほかの土地をほどんど知らずに暮らしてきました。あらためて考えると、現在都内に住んでいるのは「ずっと過ごしてきたから、なんとなく」という理由が大きかったのです。

 東京圏には確かに、さまざまな面において高い利便性があります。一方、子育てのしやすさ、生活の充実などの面から見ると、地方に軍配が上がることが多いようにも感じます。香春町では待機児童がゼロでしたし、大人が自然と子どもの面倒を見合うような環境があります。そして、釣りや農業など、新たな趣味や興味と出会いました。

  香春町への移住体験を通じて知ったさまざなことは、大きなカルチャーショックでした。

おにぎり
香春町ではたくさんのおいしいものにも出会いました

 独身時代の自分1人の気ままな旅も楽しかったのですが、今回初めて「家族で旅したときにしか出会えない人や風景があること」を知りました。そして「もっと地方の魅力や可能性に触れたい」「家族で幸せに暮らせる場所を探してみたい」と強く思うようになったのです。

 2020年も、家族でさまざまな土地に足を運びたいと思っています。桜の季節には再び香春町を訪れる予定です。そんな私たち家族の旅や体験移住を、次回からお伝えします!

<取材・文・写真/たけだかずまさ>

[子育てファミリーのお試し移住体験記 第1回]

たけだかずまささん
webをメインに活躍するライター。もともとノマド暮らしを送っていたが、子どもが生まれたことをきっかけに、家族で幸せに暮らせる場所を探してお試し移住を始める。