6番まである歌詞には県内の魅力がギッシリ!
分県案が流れたのにはその他諸説ありますが、こうしたエピソードが根強く言い伝えられているのは、県内の地域性豊かな各地に配慮し、信州の魅力を存分に表現した「信濃の国」の歌詞のバランスのよさがあげられます。
信州は「日本百名山」に指定された山の数が日本一の山岳エリアで、各地に名山がそびえ、その間を縫って走る多くの川、4つの盆地(平)によって構成されます。
フルコーラス6番にも及ぶ「信濃の国」では、各地の地元っ子にとっての「ソウルマウンテン・ソウルリバー」ともいえる山河、地理地形、さらに名所、産業、偉人などをしっかりとカバー。
信州以外の人もこれを覚えれば、今も北信、東信、中信、南信と4エリアによって気候も文化も人柄も多様性に富む、県全体の概要と魅力をつかむことができる内容となっています。
とはいえ、さすがに6番まであるフルコーラスは長いため、式典などで歌われるのは大抵2番までというケースが多いとか。よって、3番辺りから歌詞うろ覚えになる地元っ子もいれば、すべてフル&ソラで歌えるツワモノも。
それでもカラオケで調子に乗ってフルで歌うと、長すぎるのでちょっと迷惑がられたり、途中で勝手に演奏をきられたりするのも「県民あるある」だとか(笑)。
県外の人も、信州人と交流を深めるなら、ぜひ「信濃の国」の1番ぐらいはマスターしてみては。一緒に歌えば、グッとコミュニケーションも深まるのではないでしょうか。
<取材・文・写真/大沢玲子>
たび活×住み活研究家 大沢玲子さん
鹿児島出身の転勤族として育ち、現在は東京在住。2006年から各地の生活慣習、地域性、県民性などのリサーチをスタート。『東京ルール』を皮切りに、大阪、信州、広島、神戸など、各地の特性をまとめた『ルール』シリーズ本(KADOKAWA)は計17冊、累計32万部超を達成。18年からは、相方(夫)と組み、アラフィフ夫婦2人で全国を巡り、観光以上・移住未満の地方の楽しみ方を発信する書籍『たび活×住み活』シリーズを立ち上げた。現在、鹿児島、信州、神戸・兵庫の3エリアを刊行。移住、関係人口などを絡めた新たな地方の魅力を紹介している。