散歩しながら見つけられる!? 沖縄は身近な薬草の宝庫

沖縄では、道端に生えている草や、1年中目を楽しませてくれる色とりどりの花、そしてよく見かける木々にも、食用、薬用になるものがたくさんあります。昔は民間薬として重宝されていたものも。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格を持つ津波真澄さんが、沖縄で一度は目にする植物の中から、体にいい植物を3種類ご紹介します。

捨てるところのない植物、月桃(げっとう)―

月桃
 
 梅雨入りの時期にかわいらしい白い花を鈴なりに咲かせる月桃。沖縄では「サンニン」と呼ばれています。さまざまな用途に使われる植物で、県内各地に自生しており、自宅の庭で育てている家庭も多く見られます。

 独特の芳香を持つ葉には抗菌作用もあり、香りづけや防腐の目的で、沖縄の伝統菓子「ムーチー(鬼餅)」や饅頭、肉や魚などを包んで蒸す際に使われます。ムーチーは本来、旧暦12月8日に健康長寿や厄払い祈願のために食べられるものなのですが、国際通りなどの沖縄の伝統菓子を販売するお店では、季節を問わず販売しているため、食べたことがある方もいるかもしれません。

 葉は、煮出してお茶にしたり、スプレーボトルに詰めて、消臭剤や子どもにも安心の虫除けとして利用したりします。肌を整える作用もあるらしく、月桃からつくられる化粧水も人気です。

 種子を煎じたお茶は消化不良や食欲低下時にいいとされ、花はスイーツづくりに役立ちます。

そこかしこに生えている雑草が、すごいパワーを持っていた

サシクサ

 外出して帰ってくると、衣服に種子がくっついていることがあります。その正体は、タチアワユキセンダングサ。沖縄では、その種子の習性から「サシクサ」と呼ばれています。

 強烈な日光にさらされても、潮風に倒れても、負けずに1年中可憐な白い花を咲かせ、確実に「沖縄でよく目にする薬草」の上位に入るであろう、どこにでも生えているこの雑草。実はビタミンやミネラルが豊富で、糖尿病予防や抗アレルギー効果など、近年さまざまな研究が行われており、注目を浴びています。サシクサ料理を専門に出すカフェもあるほどです。

 宮古島では農薬、堆肥、肥料を使わずに栽培を行い、健康食品、健康茶、化粧品の原料として商品化されています。もはや「雑草」とは呼べそうにありません。

精霊が住むと言われるガジュマルにも薬効が

ガジュマル

 公園などで見かける大木、ガジュマル。沖縄では、伝説上の精霊「キジムナー」が宿る木として有名です。枝から垂れ下がる無数の気根が特徴的で、旅行に来て印象に残っている方も多いのでは。

 その気根を刻んで乾燥させて煎じたお茶は、民間薬として神経痛、関節炎の痛み、腫れがあるときや、風邪のひき始めに飲まれます。湿疹などの皮膚トラブルには、樹皮や葉を煎じた汁で患部を洗うといいとか。

 最後にガジュマルの不思議な生態を。最初は細い気根ですが、地面まで伸びたら根を張り、どんどん太くなっていきます。そして何十年か後には新たな幹となり、本体の重心が入れ替わります。そうすると位置が移動するため、「歩く木」とも呼ばれています。

 以上、沖縄でよく見かけるカラダにいい植物3種類をご紹介しました。

 薬効があると聞くと試してみたくなるものですが、もし採取する場合は、車の往来が多くないか(排気ガスを吸っている可能性があるため)、近くに農地があり、農薬などがかかっていないかを確かめてから、必要な量だけを採取するようにしましょう。

 沖縄にはほかにも、海岸沿いや野山にも、古くから利用されてきた植物が今でも多く生育しています。薬草ガイドの方と歩いてみると、新たな沖縄の魅力を発見できるかもしれません。
*植物を採取する際、私有地に立ち入らないようにしてください。また、食用に適さないもの、見た目で判断できないものもあるので、専門家の指示に従ってください。

<取材・文/津波真澄>
 
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞した。