北海道じゃ使えない…。移住先で困った4つのアイテムとは?

東京から幼い子ども2人を連れて、北海道上士幌町に移住した瀬野さん夫妻。住む家も決まりいざ引っ越しとなったとき、東京で愛用していたものがまったく使えずにとても困ったそう。その意外なアイテムを紹介してもらいました。

引っ越しの準備を始めてから気づいたこと

雪原で遊ぶ親子

 移住先が決まり、2人目の子供も無事出産し、バタバタしながら迎えた2015年の新年。とうとう本格的に引越しの準備に入りました。準備から引越し、そして必要なものを揃えていく中でぶち当たった、何点かの壁についてお話しさせていただきたいと思います。

ストーブが役に立たない

設置した風呂桶

 私は、高校1年生まで宮城県に住んでいたので、寒さには慣れている自信があり、東京生まれ東京育ちの夫に、「石油ストーブは必須だよ」とかえらそうに話していたのです。しかし。そういうレベルの話ではないことに気づき始めました。

 まず、石油ストーブは持ち運べるようなコンパクトなものではなく、家の前に大きなタンクがあって、業者さんに灯油を入れにきてもらう本格的な据え置き型なこと。私たちが住む住宅は、煙突式のストーブが必要なこと。

 お風呂もその煙突と繋がっていて、灯油で沸かすので、お風呂用石油給湯器が必要なこと。しかも引っ越す予定の古い公営住宅は、風呂釜も自分で用意しなければいけなかったのです!

 冬もエアコンと小さな電気ストーブだけで過ごしていた私たちは、もちろんどのアイテムも持っておらず、東京で手に入れるには難しそうなものばかりだったので、途方に暮れ、移住コンシェルジュの川村さんに相談しました。

 さすが、移住窓口スペシャリストの川村さん。親切丁寧に町内の業者さんを紹介してくださり、その業者さんが、すべてのアイテムを中古で安く探してきてくれて、引越し前に設置をしてくれました。しかも、お風呂用の床板までつくっておいてくれて、神様のような人です。今でもなにか家のことでトラブルがあると、すぐに駆けつけてくれる大好きなおじいちゃんです。

 ちなみにこのストーブが本当にあったかい! 部屋の中はめっちゃあったかくして、半袖でアイスを食べる。北海道あるあるです。

ガスコンロが使えない

雪原の夜明け

 そして2つ目がガス。東京で使っていた2口ガスコンロを取り付けようと思ったときに発見!

「都市ガスじゃない…」。そうです。都市ガスではなくプロパンガスだったのです。プロパンは外にガスタンクが置いてあり、それを定期的にガス屋さんが交換しにきてくれるシステムです。急いでガス屋さんに連絡したところ、すぐに来てくださり、中古のプロパンがあるからといって、都市ガスのガスコンロと交換してくれました。神様2人目です。

ベビーカーは不用品

ベビーカーで眠る子ども

 家のことはひと安心しましたが、私たちにはまだ買わなくてはいけない大きなものが残っていました。

 北海道生活に必要不可欠なもの、車です。東京の生活では、基本的に自転車やバス、電車の生活で、車は必要なときに実家から借りる程度でした。子どもも小さかったので、下の子を抱っこひもに、上の子をベビーカーに乗せて、持ち手に信じられない量の荷物をかけて、バスの乗り降りをしたりしていました。

 そんなヘビーローテーションで使っていたベビーカー。しかも倒して寝かせられるしっかりしたものと、電車やバスで簡単にコンパクトに折り畳めるものと、2個づかいするほど必要不可欠だったベビーカー。北海道にきて、気づけばまったく使わないまま倉庫で眠っています。

 私たちは3月に引っ越してきたのですが、その頃東京では桜の開花予想が毎日ニュースで流れていました。ちょっと浮き足立っていた、そんな気分から一転、帯広空港から家までの景色は、雪景色一色でした。

 外は大人でも滑りそうなツルツルの地面。風が吹けば痛いくらいの寒さ。ベビーカーを引いてお散歩している人なんていません。

 そうです。ここでの暮らしでは、車とチャイルドシートが必須アイテムでした。

 夫と相談し、車は輸送費のかからない北海道で調達することにしました。同じ北海道だからとあまりよく考えず、札幌の中古車屋さんのサイトから購入。引越し先を聞いた車屋さんは困っていましたが、北海道生活に車は必要だからと、札幌から上士幌まで高速を使っても3時間はかかる道のりを、引越しのタイミングで受け取れるように持ってきてくれました。神様3人目です。

照明が消せない

チャイルドシートで寝る子ども

 夫は引越し業者さんが荷物を運び終えて帰った後、照明を各部屋に取り付けました。もともと東京で借りていた家には照明がついていたので、私たちはこの住宅のために、IKEAで部屋に合わせたライトを買ってきていました。ワクワクしながら取り付け、ライトがついてる部屋で家の掃除をし、さあ寝ようというとき、重大なことに気づいたのです。

「電気が消せない…」。

 築30年以上経っているこの住宅には、照明のスイッチがついていなかったのです。カチカチっとひもを引っ張って消せる照明はひとつも買っていませんでした。結局電気もホームセンターで寝室用にひとつ買い足し、楽天で買ったリモコンスイッチが届くまで電気を消せない状態で過ごしました。

 ほかにも公営住宅に住むときは2人の町人の保証人が必要だったり、テレビのアンテナをつけないとテレビが見れなかったり、網戸がついていないことに気づいたり、自分たちが想像していた引っ越しとは事情が違うことがたくさんあり驚きました。

バタバタな引っ越しだけど、必ず誰かが助けてくれた

雪の中の車

 終始バタバタしていた引越し。でも、「どーしよー!!」となるたびに助けてくれたり、親切にしてくださる方がたくさんいました。そんな神様たちのおかげで、準備が足りなさすぎる私たちも、なんとか無事に引っ越すことができたのです。

 あれからもうすぐ5年。北海道の方言で大好きな言葉があります。引っ越した当初からたくさん聞いてきた言葉。

「なんもだよ~」

 何かをもらったり、助けてもらったり、そんなときに感謝の気持ちを伝えると、みんなそんなふうに返してくれます。「全然なんでもないよ〜」的な意味だと思うんですが、世界一あったかい言葉だと思っています。今は言ってもらってばっかりの「なんもだよ」。今度は、自分たちがこの言葉を多く使えるようになりたいです。

<取材・文/瀬野祥子(ワンズプロダクツ)>

瀬野祥子さん
2016年に北海道上士幌町に家族で移住。現地でさまざまな仕事を経験し、夫と一緒にデザイン会社「ワンズプロダクツ」を起業、地域のニーズに応えている。