―[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第7回目]―
尾道の山手の古民家に移住した、航海士でWeb系フリーランスのナオ船長さん。快適に作業がしたいと、お金をかけずに自宅にコワーキングスペースをつくってみました。コロナ禍で感染対策のために空間の使い方を見直してみると、新たな発見があったようです。
移住して身についた、ないものはつくる習慣。
尾道でWeb系の仕事をするうえで最初に困ったのは作業場所です。リモートワークがメインになってきたこの時代だからこそ、快適な作業環境はとても重要。特に、都会から田舎に引っ越してきたときには、十分な速度のWi-Fiがなければ仕事をすることも難しくなります。
尾道にもコワーキングスペースはありますが、もっとふらっと作業できる場所がほしいなと考えていました。観光地ということもあり、Wi-Fiが使用できる数少ないカフェにもお客さんが多く、作業をするには肩身が狭い…。
そんなときにふと思いました。なければつくっちゃおうと。
こういった考えは移住してから身についた習慣です。ということで、自宅に快適なコワーキングスペースをつくる計画が始まりました。
まずひとつは1階の6畳の和室。ここは折りたたみのデスクを6台並べて、その上にOSB合板を乗せるだけのシンプルなつくりに。長時間の作業でも疲れないよう、オフィスチェアーはヘッドレスト、アームレストがあるタイプにしました。
Wi-Fiは体感的に速度不足がないよう、尾道山手エリア最速のものを契約。築77年の空き家の壁は土壁で、分厚いコンクリートと比べると電波がはばまれることが少ないようです。中継器を置かずとも2階や少し遠い離れまで繋がるのは、面白い発見でした。
もともとメインコワーキングスペースは6名が使用できることを想定してつくっていました。しかし、コロナの影響もあり、ソーシャルディスタンスを保つため使用可能人数を3名までに。そのため、新たに3名分の作業スペースをつくることにしました。
空き家掃除の際に、部屋はすべて掃除しましたが、押入れはものが多く手つかずのままでした。なので、そのスペースをうまく使えないかと思い、押入れの改修計画をスタート。
改修の材料はできる限りあるもので、お金をかけずに
今回目をつけたのは、10年間開かずの扉だった押入れです。うまく区切れば個室作業スペースとなり、Zoomなどのオンラインミーティングにも使えそう。まずはいつも通り掃除にとりかかります。空き家掃除の基本は、「一旦ものを全部出す→掃除機をかける→洗剤で水拭き→そして仕上げの水拭き」です。
やはり長い間手付かずだったこともあり、押入れの中は大量の本とゴミで溢れ、虫のすみかとなっていました…。ですが、思った以上に床や壁は傷んでいるところはなく、そのまま使えそう。
なんとか掃除を終え、次は作業テーブルづくり。今回は、作業用テーブルの材料に極力お金をかけずに、家にあるものだけで製作してみます。ちょうどいいと思ったのが、掃除中に押入れから出てきた処分に困っていたタンスです。このタンスの引き出しをすべて取り払うと机の代わりになるのではないかと思い、DIYをしてみることに。
何度か調整していくうちに、ちょうどいい高さの机になりました。その上にDIY作業で余っていたOSB合板を乗せ、イスを入れれば完成。
DIYはここで終わらず、押入れ前のスペースにも目をつけました。このスペースをなんとか有効活用できないかと考え、「いっそのこと布団を敷けるようにして個室っぽくしてしまおう!」と思いつきました。
押入れの掃除をしているとタイミングよく半畳用の畳が2枚出てきたので、それを床に敷きます。そして、壊れていたベッドのすのこを畳の上に乗せて再利用。さらにその上に布団を敷けば、まるで秘密基地のような個室が完成!!
集中して作業ができるだけでなく、仮眠も取れるという最強のスペースが完成しました。また、すべてあるもので作成したため、今回この空間のづくりで追加購入したものは何もありませんでした。
空間を有効活用して、いろんなところが作業スペースに
現在は、数名いる住人と作業場所が被らないように、家中のいたるところに作業スペースを設けました。1階にはメインコワーキングスペース、縁側スペース、個室兼仮眠スペース。2階は紅葉と竹やぶが見える作業スペース、海が見える縁側読書スペース、離れ、撮影兼作業スペース。
さまざまな箇所に作業場所をつくって、気の向くままに仕事ができるようにしましたが、作業場所がたくさんあると、気分転換にもなります。本を読むときはここ、仕事をするときはここ、集中したいときはここと場所を決めることで作業効率も上がったように思います。家の外には手つかずの庭があるので、そこを野外作業スペースにするのもよさそう。
あらためて今回の場所づくりでわかったことは、「ないものは自分でつくる」ということ。今回のように、空き家では自分の考えやイメージに基づいて、思い通りのものや空間をつくることができます。
日を追うごとに愛着がわいてきた古民家。再生しつつあり、もう空き家とは呼べません。この場所を“AIRSHIP ONOMICHI(エアーシップ オノミチ)”と名づけ、運営していくことにしました。
義務感のない、自分が心から大好きなこと、感情が揺さぶられるようなこと、そういったワクワクすることだけに集中して追求していけるような場所にしていきたいと思います。
今後もAIRSHIPの改修計画や試みについて書いていければと思います。
―[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第7回目]―
ナオ船長さん
コーヒーをこよなく愛する航海士兼Web系フリーランス。世界30か国を旅したのち、尾道に拠点を置く。空き家歴10年以上の古民家を自身で再生し「好きを追求する大人の遊び場」づくりを行うなど、さまざまな活動に挑戦中。