アスパラってこんなにおいしかった!?北海道に移住して驚いたこと3つ

小さな子どもを連れて、東京から北海道上士幌町に移住した瀬野さん夫婦。引っ越して早々、農家からもらったアスパラの量とおいしさにビックリ! 初めての北海道の生活で、驚いたり新鮮に感じたことを紹介してもらいました。

何もかもが新鮮! とうとう始まった北海道生活

畑で遊ぶ子ども

 バタバタの引っ越しも無事終わり、とうとう始まった北海道での家族4人暮らし。生活がガラッと変わり、新鮮に感じることだらけの毎日でした。今回は、特に新鮮に感じ、驚いたことを3つお話したいと思います。

衝撃的なアスパラ。食べ物がとにかくおいしい

ゆでたアスパラ

「食べ物がとにかくおいしい!」。北海道に来て、何よりも最初に感じたことです。とにかく何を食べてもおいしい!! 特に野菜は衝撃でした。私たちが移住した十勝上士幌は農業が盛んで、ありがたいことに野菜をいただく機会もあったりします。最初に驚いたのは、お隣さんからいただいたハネ品のアスパラでした。

 ハネ品というのは、野菜が大きすぎたり、小さすぎたりと規格サイズでないもの。安く買えたり、たまに農家さんからお裾分けしていただけたりするのですが、味はなんら変わらないです。

 そのときは、袋に大量に入ったものをいただき、その多さに、正直こんなに食べれるか不安になりました。というのも、今まで、子どもたちは繊維が残るからかアスパラをなかなか食べてくれず、主人もそこまで喜ぶアイテムではなかったからです。しかもこんなに大量…。

地元の野菜

 地元の人ならではの大量消費レシピがきっとあるのだろうとお隣さんに聞いたら、「ゆでてマヨネーズがいちばんだよ。おやつにしてすぐ食べてみな」と返されました。ゆでてマヨネーズだけでこんなに食べれるのか不安になりながら、とりあえず少しゆでて味見してみたら。

「あ、あ、甘い!!」しかもまったく繊維も残らずポリっと食べれちゃう!! 私が台所で味見が止まらなくなってるのを見て、子どもが寄ってきました。息子にマヨネーズをつけて1本あげると、無言で食べて、「あむあむ!」とまた手を出してきました。結局、試しにゆでた分は2人で完食してしまったので、その日の夕飯に夫にもちょっと強気の量で出してみました。

 夫はアスパラを見た瞬間、「ちょっとこの量食べれる自信がないんだけど」と訴えてきました。でも、私はすでに食べていたので自信がありました。味を知った息子もすごいスピードで食べています。それを見た夫も1本。また1本。みんなの手がわれ先にとアスパラに伸びて、山盛りのアスパラは一瞬でなくなりました。

 空になった皿を見ながら、夫と今まで食べていたアスパラは、本当はアスパラではなかったのではないかと話しました。それだけ衝撃的においしかったのです。
 今では、直売所でアスパラをみたら絶対買って帰ってくるくらい、夫はアスパラが大好きです。

鹿肉のかたまり

 このエピソードと同じようなことがそれから何回もありました。ブロッコリー、カブ、キャベツ、山でとってきたいろいろなキノコに、原木シイタケ。タラの芽、ウド、行者ニンニクなどの山菜に、肉も野菜も魚も乳製品もパンも、好き嫌いの多かったわが家の男子たちは、気がつけば大好物だらけになっていました。

 この町ならではのもらいもの、子牛を産んですぐの初乳でつくられた牛乳豆腐や、アイヌネギと呼ばれている天然の行者ニンニク。鹿肉のかたまりや、サケ丸ごと一本。

 もらった当初はどうやって食べればいいか試行錯誤していましたが、ふと考えると、こんなごちそうをいただけるのも、ここに住んでいるからこそのありがたさなんだと実感します。

温泉がいっぱい。楽しみ方もいろいろ

雪で遊ぶ子どもたち

 北海道には至るところに温泉があります。上士幌町も、街中に温泉施設があり、1回300円で入ることができます。さらに山の方には、糠平源泉郷という温泉街もあり、露天風呂にも気軽に入ることが可能。子どもたちも温泉が大好きで、こっちに来てからは朝でも夜でも本当に気軽に温泉に入っています。

 とくに今の時期、雪が降っている寒い季節に入る温泉は格別です。たまに早起きして、糠平源泉郷にある中村屋さんというお宿の、朝ご飯お風呂セットコースに行くのがわが家の楽しみ。朝から地元のおいしい食材でつくられたたくさんのおかずを楽しんで、温泉に入り、午後は家族でゆっくりする。日曜日の幸せな過ごし方です。

農業体験から気球まで。遊びがダイナミック!

ヤギの子を抱える子ども

 引っ越して最初の1年は下の子も小さかったので、毎日子どもたちと一緒にいろんなことをしました。泥まみれになりながら庭で遊んだり、雪山を探検して動物の足跡を探したり、おたまじゃくしをとってきてカエルになるまで育てたり、家族で山菜を探しに行ったり。

 そこらじゅうに大自然があるので、ベビーカーを引いて近くの公園で遊ぶことが多かった日々から、遊び方はすっかり変わりました。動物園に行かなくても、牛や鹿、リスにキタキツネ、馬にヤギといろいろな動物に出会えちゃいます。

 子育てをしていると、いろいろな人が声をかけてくださることも多く、産まれたてのヤギを抱っこさせてもらったり、シイタケのほだ木に菌を植えつけたり、収穫が終わった農家さんの畑で、ジャガイモ掘りやトウキビ狩りをさせてもらったり、カヌーや気球に乗せてもらったり。子どもと一緒にいろんな初体験をさせてもらい、毎日がとても新鮮でした。

 ただ、遊びがダイナミックすぎて、鬼ごっこひとつとっても、走り回る範囲が広大で最近は5分も一緒に遊ぶと、息切れが激しくなります。

新鮮に感じる「地元の普通」

川でカヌーに乗る

 引っ越してきてもうすぐ5年。いまだに「やっぱおいしい!」「最高の景色!」と実感している毎日です。朝のゴミ捨ての後、家の前から見える山々の景色に感動し、しばらく眺めていると隣のおばちゃんに、「何見てるんだい?」と声をかけられ、「今日の山、めちゃくちゃきれいだね!」と言うと、「そんなんで立ってたのかい? こんな景色普通すぎてきれいとか考えたこともないよ。寒いから早く中に入り〜」とよく言われました。

 地元の人にとっては、普通になっているかもしれない、「おいしい」や「最高」。でも、この感動こそが、今の自分たちの仕事に生かされているんだなと私たちは思っています。この町に当たり前のようにある、さまざまなおいしいもの、美しいもの、素晴らしいもの。それを少しでも多くの人に伝えられるような、そんな仕事をしていきたいです。

<取材・文/瀬野祥子(ワンズプロダクツ)>

瀬野祥子さん
2016年に北海道上士幌町に家族で移住。現地でさまざまな仕事を経験し、夫と一緒にデザイン会社「ワンズプロダクツ」を起業、地域のニーズに応えている。