予算30万円。田舎暮らしに欠かせない専門家オススメの中古車は?

ずっと都会で暮らしていたジャーナリストが淡路島に移住。移動手段に困って中古車を購入しようとしますが、これまで車なしの生活を送っていたため、どうしたらいいのか、さっぱりわからない状態に。車選びの様子を澤田晃宏さんがレポートします。

移住して車選び。車種も相場もわからない…

田舎道
住宅街でさえ、国道をそれると、道幅の狭い道路が続く。税金のことを考えても、田舎暮らしの足には軽自動車が最適だ(撮影:澤田晃宏)

 公共交通機関が乏しい地方暮らしの必需品といえば車です。コンビニやスーパーに行くためにも、日常の足が必要になります。日常の足なのだから、別に格好つける必要もなければ、高級車を買う必要もありません。

 だけど、何を買えばいいのか。どの程度の値段が相場で、どんな車種があるのかもわかりません。これまで車を所有したこともない都市部からの移住者は、選ぶ基準さえもわからない。東京から2020年6月に兵庫県・淡路島に移住した筆者もその1人。地方、特に農山村エリアになればなるほど、道幅の狭い私道や農道を走る場面が多くなります。小回りのきく軽自動車がいいですが、どんな車を選べばいいのでしょうか。

中古車価格はキツネとタヌキの化かし合い!?

伊達軍曹さん
中古車評論家の伊達軍曹さん(伊達さん提供)

 そこで、専門家に聞いてみました。まずは、予算です。中古の軽自動車と言っても、それこそ10万円程度のものから、100万円程度のものまでさまざま。安すぎても不安ですが、できれば安くすませたいもの。いったい、どの程度の予算で車を探せばいいのでしょうか。

 輸入中古車専門誌元編集長で、現在はフリーランスとして活躍する中古車評論家の伊達軍曹さんはこう話します。

「スーパーに行くなどの日頃の足として使う車なら、予算は50万円程度で十分です。もっと言えば、30万円程度の車でも十分に走ります。中古車の価格はキツネとタヌキの化かし合いで、必ずしも状態がいいから値段が高いというわけではありません」

 中古車は軽自動車に限らず、年式や走行距離で大きく価格が変動しますが、どのくらいを目安にすればいいのでしょうか。

「国内で登録された年からの経過年数を〇年落ちと表現しますが、10年落ち、走行距離7万~8万km程度なら問題はありません。重要なのは『使われ方』です」

 軽自動車の年間の平均走行距離は8000km前後。以前の所有者がドライブ好きだったり、営業車などで使っていたりすると、同じ10年落ちでも10万kmを超えるものも出てきます。その分、エンジンやパーツの磨耗が激しいことは容易に想像がつくでしょう。

 しかし、使われ方とはどういうことなのでしょうか。

「年式や走行距離に関係なく、以前の所有者が乱暴に車を扱い、なおかつろくに整備もしないまま乗っていると、エアコンやスターターなどの電装系設備、エンジンや足まわりなど、とにかくほぼすべての状況が悪くなります。ただ、車に詳しくない人がそれらを見極めるのは困難と言っていいでしょう。とにかく、内装と外装がきれいなものを選ぶことが大事です。これは、以前の所有者が丁寧に扱っていた証拠になります」

 伊達さんは特に「内装」に使われ方の差が出ると言います。

「シートについたシミや傷、匂いのあるものは避けましょう。ダッシュボードに細かい傷がたくさんあれば、鍵やモノを放り投げ、乱暴に使っていたことが想像できます」

燃費のよさならミライース。子育て世帯ならフリード

ミライ―ス
日常の足にダイハツのミライースを選んだ筆者(撮影:かおりん)

 日常の足としての車を選ぶなら、それほど高い予算を準備しなくていいことはわかりました。30万円の車なら仮に4年乗れば、1か月当たりの車両費は6250円です。

 さらに気になるのは、ランニングコスト。いくら安い車でも、ガソリンを垂れ流すような燃費の悪い車では困ります。日常の足として使う以上、デザイン性などより、この燃費が重要なポイントになってくるでしょう。

 伊達さんは予算30万円でも手が届く燃費のいい軽自動車を2つ挙げてくれました。

「近頃の傾向として、N-BOX(ホンダ)、タント(ダイハツ)、スペーシア(スズキ)など、背の高いタイプの軽自動車が人気ですが、背の高い分、空気抵抗も強くなります。燃費を考えれば、従来型の車高の低いミライース(ダイハツ)やアルト(スズキ)がおすすめでしょう。特にミライースは軽量化による燃費のよさが評判で、ハイブリッド車並みに走ります。中古車を前提としているので一つ前のモデルで見比べますが、カタログ燃費を見るとN-BOXは1リットル当たり18・2~25・6kmです。対するミライース、1リットル当たり27.0~35.2kmと、大きく違うことがわかります」

 ただ、単身や夫婦二人ならいいが、どうしても子どもがいると軽自動車は手狭に感じてしまいます。30万円程度の予算で手が届く車はあるのでしょうか。

「ミニバンタイプになりますが、ホンダのフリードをおすすめします。3列シートで、手狭に感じることはないでしょう。10年落ちなら、その予算でも見つかるはずです。田舎は競争相手が少なく、どうしても料金が高くなりがちです。最寄りに大きな町があれば、そこの中古車店で探すのがいいでしょう」

 また、少しでも安く買いたいなら、時期も大切だと言います。

「新生活が始まる前の2月や3月はどうしても高くなりがちです。ゴールデンウイークやシルバーウィークなどの長期休暇は、販売店はセールなどを行い、営業に力を入れます。その時期の後にある車は売れ残りですが、その分、割安になる可能性は高いでしょう」

 ちなみに筆者が淡路島に移住し、日常の足として買ったのは偶然にもダイハツのミライースでした(伊達さんの取材前)。7年落ちですが、走行距離はわずか2万6000kmで、総額は35万円。ミライースに決めた理由は、中古車販売店の店主のこんな言葉がキッカケでした。

「ガソリンを前にいつ入れたか忘れるくらい走る。運転代行業者さんがよく使っている」

 予算に余裕のある人はいいですが、車を保有すれば、自動車保険や2年に一度の車検代、自動車税に駐車場代と、さまざまな経費がかかってくるもの。筆者のような貧乏人は、生活費の大きな負担になる車選びは慎重にしたいものです。

<取材・文/澤田晃宏>

澤田晃宏
1981年生まれ。兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。高校中退後、建設現場作業員、男性向けアダルト誌編集者、「週刊SPA!」(扶桑社)編集者、「AERA」(朝日新聞出版)記者などを経てフリー。コロナをキッカケに東京都大田区から2020年6月に兵庫県淡路市に移住する。著書に「ルポ技能実習生」(ちくま新書)Twitter:@sawadaa078