絶品の山菜づくめランチも。山菜の宝庫、魚沼で味わう春の味覚

山菜は山国の春のお楽しみ。新潟県の魚沼地区では、いろんな種類の山菜がこの時期、食卓に登場します。この地に移住した中川光嗣さんが、集落の人と出かけた山菜取りの様子と地元ならではの山菜づくめランチを紹介します。

新潟で「キノメ」といえばミツバアケビの新芽のこと

ミツバアケビの新芽

 越後の豪雪地帯では雪解けの春先から、田植えの時期まで山菜が豊かに芽吹きます。この時期は地域の人々が心弾ませる、1年でもっとも慌ただしい季節。雪の合間の地面からフキノトウが顔を出し、続いてコゴミ、タラの芽、ウルイ、ゼンマイと順を追って盛りを迎えます。

 この日、地域のお母さんたちと山菜採りに向かった先のお目当ては「キノメ」。新潟では山椒の葉ではなく、「ミツバアケビ」の新芽をそう呼び、東北の一部と新潟では定番の山菜です。私を含めこれがなにより好き!という人も少なくない人気ものです。

キノメを摘む

 宝の山に向かって集落から車を10分ほど走らせ、さらに5分ほど歩く。高級山菜のゼンマイやコシアブラを一瞥しながらも素通りし、ブナ林をかき分けた先に「キノメ」の群生地が拡がっていました。こんな身近にたくさんの「キノメ」エリアがあることに驚きます。こんなところは10年新潟に住んでいても初めてでした。

集落の人だけが知る、山菜の宝庫

飛び出して見えるキノメの新芽

 同じ集落の住人でもよく採れる場所を共有しているわけではなく、ゼンマイならあそこで、ウドはあの斜面に生えるが立派で、といった具合にそれぞれが知る人ぞ知る「山菜園」を持ち合わせている。

 みずみずしい「キノメ」を目前にすっかりスイッチオンとなったお母さんたちの摘む手は早いこと。おしゃべりもしながらその熟練の技術は新鮮な驚きです。

「キノメ」の食用にできる部分は茂みからピョンピョン頭が突き出ているため見つけやすい。

山菜取りで見つけた清流

 かたわらにはこんな渓流が。いかにも岩魚が棲んでいそう!

山の宿で味わう、山菜づくしの絶品ランチ

ワラビを軒下で乾燥中

 そんな特別な場所で採られた山菜が存分に味わえる場所があります。魚沼市大白川集落にある民宿「休み場」では季節によって、その時々の旬が味わえます。フキノトウの酢の物に始まり、デザートまでなんと全15品。山菜づくしのコースランチすべてご紹介したいところですが、特に推したい逸品を厳選しご紹介します。

キノメのおひたし

 新潟県民のほとんどが愛する「キノメ」。食感がシャキシャキと歯切れよく、独特のほろ苦さが病みつきになり、上品な出汁と胡桃との相性も抜群です。

若竹とフキとゼンマイの煮物

 伝統の味。ネマガリタケにゼンマイとフキの煮物。ゼンマイの太さと柔らかさは雪国だからこそ。

山菜の天ぷら

 天ぷらは全部で7種類。手前から時計回りにヨメナ、マタタビ、タラの芽、山ウド、フキノトウ、ハンゴンソウ、山ブドウ。

 地域に住んでいてもなかなか口にすることのない山菜がいくつかあり、初めてのヨメナにハンゴンソウはなかなか美味。山菜のほかにアユの塩焼き、締めには手打ちそばと大満足の内容です。

フキノトウのアイスクリーム

 フキノトウアイスにカタクリの花から抽出された色素がきれいなシャーベット。メレンゲからもフキノトウの香り。もちろんすべて地の食材。

民宿休み場の看板

 料理は女将さんと東京のイタリアンでシェフをされていた娘さんが担当。絶品のそばはご主人の手打ちで、デザートはパティシエである婿さんによるもの。家族がそれぞれに凄腕の持ち主であり、それを一気に味わえるというぜいたくなコース料理です。宿泊同様、ランチのみも事前予約が必要で、季節ごとにメニューは変わるので電話で確認してみてください。まもなく今年の山菜シーズンは終わりに近づき、山の緑は日ごと深まってゆきます。

『民宿 休み場』Tel.025-796-2901

<取材・文/中川光嗣>
神奈川県湘南地方で育ち、大学で建築を学び、首都圏の建築事務所などで住宅建築や都市設計などに携わる。30代で新潟県十日町市に地域おこし協力隊として移住。その後、県内の魚沼市に移り、「小屋丸」の屋号で地元の木材を使った木工作品を制作している。