―[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第8回目]―
尾道の古民家に移住した、航海士でWeb系フリーランスのナオ船長さん。自然たっぷりの暮らしを満喫していますが、今年の春は急成長したタケノコに家を壊されそうに。でも、それも古民家暮らしの楽しみと語ってくれました。
緑に囲まれる古民家の暮らし
尾道に移住してから、2度目の春を迎えました。僕が住んでいる古民家は山手の坂の途中にあり、まわりは緑に囲まれていてジブリ感たっぷりな静かな場所。この自然豊かな景色が、ここに住むと決めた理由の1つでもあります。
暖かい日には、玄関の前にリクライニングチェアを置いて風に揺れる草木の音を聞きながら昼寝をしたり、コーヒーを飲みながら読書をしたりしています。
秋には真っ赤に染まった紅葉と竹林のコントラストがとてもきれいで、部屋からその景色を眺めながらお酒を飲んだりと、至福の時間を過ごすことができます。
しかし、緑に囲まれているというのは、いいことだけではありません。
夏はどんどん伸びる雑草との戦いで、刈った草をゴミ袋いっぱいに詰めると10袋以上にもなります。さらにさまざまな虫や動物が古民家に遊びにやってきます。ムカデやクモ、蛇、ネズミ、かわいい猫たち。
ある日玄関を開けたらカメがのっそのっそと歩いていたこともありました。どこからきたのでしょうか?
2か月の航海から戻ると玄関前に立派な竹が
僕は航海士として働いていて、1回の乗船期間はおよそ2か月。乗船前にはある程度家のまわりに生えている雑草を抜いたり、除草剤をまいたりと、長期間の不在に備えて手入れをします。
しかし、どれだけ周辺をきれいにしても、乗船を終えて帰ってくるころには振り出しに。下船したその週はまず、古民家の掃除と周辺の雑草の処理から始めます。
尾道では管理されていない空き家がたくさんあります。たった2か月で周りは雑草だらけ。人が住まなくなり、1年以上放置された家や庭の状態がどんどん悪くなるのもうなづけます。
いつものように下船後に掃除をしていると、玄関前の庭に違和感を感じました。「あれ、ここの竹は2本だったっけ?」と思い、乗船前に撮った写真と見比べてみると、1本しかなかったはずの竹が、なんと2本になっていました。
竹の成長スピードは恐ろしく早いとは聞いていましたが、ここまで早いとは思いませんでした。調べてみると、10日で数十cmほどだということで、ピーク時には1日でなんと1m以上伸びることもあるそうです。
2か月もあれば立派な竹になっているのもうなづけます。竹林を管理しているおじいさんから、「タケノコは見つけたらすぐに切ったほうがいい。そのままにしておくと虫がわくこともあるし、地中に根っこがあるから、どんどん生えてくる。家を突き破って生えてくることもあるよ」と、アドバイスをいただきました。
このアドバイスを聞いたときは、まさか本当にそんなことが起こるとは思いもしませんでしたが。
庭のタケノコが家を壊す
ある日、家のすぐそばにタケノコが生えているのを発見。
「これは危ない。でも、頭だけ切っておけば大丈夫だろう」と、先端部分だけを切りました。数日後、同じ場所に行くと、家の外板を破壊し、そのまま土台をも持ち上げそうな勢いのタケノコを発見。
初めてタケノコに恐怖を感じた瞬間でした。
このときに、タケノコは先端だけを切っても伸び続けるということを知りました。そのまま放置していたら、より被害が大きくなっていたに違いありません。早く気づかなければ家を壊されるところでした。外板は割れて、下の土台も少しゆがんでしまいました…。
こんなトラブルをトラブルのままで終わらせないのが古民家生活のポイント。せっかくなので、家を壊したタケノコを食べてしまおうと思い、塩で下ゆでして天ぷらにしてみました。
おいしい!
竹やぶを見ながら旬のタケノコの天ぷらを食べるという少しシュールな感じになりましたが、春の味覚をしっかり感じることができました。次にタケノコを発見したら、ほかの料理にも挑戦していきたいと思います。
自宅に生えたタケノコを採って、天ぷらにして食べる体験は地方暮らしならではですね。こういったトラブルをいかに楽しむ方向に持っていくかが、古民家生活のコツなのかもしれません。
これらからも季節感じながら、「トラブルを楽しむ生活」を楽しんでいきたいと思います。
―[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第8回目]―
ナオ船長さん
コーヒーをこよなく愛する航海士兼Web系フリーランス。世界30か国を旅したのち、尾道に拠点を置く。空き家歴10年以上の古民家を自身で再生し「好きを追求する大人の遊び場」づくりを行うなど、さまざまな活動に挑戦中。