三重県南部の海沿いの町、尾鷲市に地域おこし協力隊として移住した郷橋正成さん。移住コンシェルジュとして日々奮闘していますが、そんな日々で出会った人や出来事をつづってくれます。今回は、仕事の内容と尾鷲市の紹介から。
空き家バンクに仕事バンク。移住コンシェルジュのお仕事を紹介
おわせ暮らしサポートセンター通称「サポセン」は尾鷲(おわせ)市へ移住・定住したいと希望される方々を多方面から支援する団体です。「尾鷲に新しい人の流れをつくる」ことを目標に、尾鷲に移住した地域おこし協力隊やOB・OGのメンバーが中心となって運営しております。
業務内容は多岐にわたり「空き家バンク」では2014年の運用開始以降、尾鷲市各地でのポスティング活動や説明会の開催などの取り組みを続け、これまでの5年間に累計200件以上の空き家を登録。そのうち100件以上の空き家が成約され、移住者や市内の方に新たな住まいとして活用されています。
移住にはさまざまなハードルがあり十人十色の悩みや不安があると思います。そういった問題を1つでもクリアし、ミスマッチを防ぐためにも「移住体験住宅」の運営も大きな役割を果たしています。
「仕事バンク」では、尾鷲ならではの魅力的な仕事や暮らしが通年で体験できる「おわせ留学」では、地元企業・商店など尾鷲の9つの事業者にご協力いただき、しごと体験プログラムを作成し、これまでに20代・30代の若い世代の方、計12名の方が尾鷲に留学されました。
どれだけ田舎暮らしがおもしろいと感じていただいても、現実的なところに目を向けると、仕事がなければ移住に至らないのが生産世代です。事実、「田舎には仕事がない」というイメージによって、地元を離れ戻ってこない方も多いのが現状です。
でも本当はそうじゃない。とくに都会での働き方しか知らなかった私たちのような者にとって、尾鷲での仕事はきっと刺激になること間違いなし。誇りをもって自分の事業に打ち込みながら、地域の未来を考え、街に貢献するための一手を担う。そういう考え方は、都会ではまだまだ新鮮に感じられるはずです。
じつは自分も東京でサラリーマンをしていた時期がありました。とくに不満はなく、充実した毎日だと感じていました…当時は。
欲しいものは身近にあり、代々木公園や皇居周辺で自然を感じ、至れり尽くせりな生活だったと思います。なぜかそんな自分がなにかに「生かせれている」と感じる機会が多くありました。田舎暮らしをしている自分は「生きてる」っと実感できる毎日で「本当の充実とは?」なんて考えたりする暇ももて余しています(笑)。
海と山に囲まれた、尾鷲の魅力を紹介
尾鷲市ってご存じでしょうか?ここでちょっと私たちの町「尾鷲」をご紹介いいたします。
三重県南部に位置する尾鷲市、世界遺産「熊野古道」の伊勢路を有する市域は92%が山林で尾鷲ヒノキの産地です。
過ごしやすい海洋性気候で夏は涼しく、冬は暖かいのが特徴。気象庁発表による過去10年間(2007年から2016年まで)のデータでは6月から9月の真夏日は東京よりも14日、大阪よりも32日も少なく、逆に2月の最高気温は東京、大阪よりも2度高くなっています。
年間4000mmもの雨が降り、雨の町としても有名な尾鷲。ところが、月間日照時間は東京よりも長く、つまりは「激しい雨の日もあるが、晴れの日も多い」となんとも欲張りな気候です。
リアス式海岸の奥に急峻な山や峠で隔てられた10か所あまりの町があり、漁業も盛んです。これらの町は陸上交通が未発達であった遠い昔に独自の習慣や文化を育んできました。
昔は道がなく船で行き来していた飛び地。映画「千年の愉楽」の舞台になった須賀利町
海岸沿いには約1㎞のビーチ、山手では豊富な植物や野鳥を楽しめる小径がある三木里町
16世紀に築かれた曽根城の城跡が現在2000本あまりのオンツツジで彩られる曽根町
海洋深層水を汲み上げるアクアステーションや木造校舎を利用した、しお学舎のある古江町などなど。「津々浦々」とはよく言ったもので尾鷲には様々な表情を魅せる町があります。
まだまだご紹介したい魅力が沢山あります。釣りやマリンスポーツに熊野古道…。
なにより私は「人柄」という面で尾鷲をもっともっと知っていただきたいと思っています。
次回からはそんな尾鷲に移住された方々をご紹介していきたいと思います。
定年後の穏やかな暮らしだったり、地域にないものをつくり出すビジネス的な観点だったり…。
十人十色・住人十色な生活をお楽しみください。
郷橋正成さん
京都出身の30代。リゾートスタッフ、漁師、サラリーマン、家具職人などを経て2018年8月から尾鷲市の地域おこし協力隊に。現在、おわせ暮らしサポートセンターで活躍中。