「小商い」で町を元気に!まずは小さなことから始めています

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

諏訪湖のほとりの宿場町で、地域おこし協力隊として活動する小林由香里さんと綿引遥可さん。「この町を小商いが育つ場所にしたい!」と奮闘する彼女たちの仕事ぶりをつづってもらいました。今回は下諏訪町の紹介と目指すべき小商いの姿について。

下諏訪町で地域おこし。目指すのは「小商い」で実現する、自分らしい生き方・暮らし方

綿引さん小林さん
左が小林さん、右が綿引さん

 こんにちは、長野県の諏訪湖のほとりにある人口2万人ほどの温泉宿場町、下諏訪町(しもすわまち)の地域おこし協力隊、略して「ちおこ」の小林由香里と綿引遥可です!

 私たちはもともと、東京でお勤めしていたサラリーウーマンで、オフィスのデスクでカタカタしていたバリバリの事務職。特別な専門性もなく、ただただ町が好き!という気持ちで協力隊に応募した、フツウを極めるふたりです。移住して3年目の冬を迎える私たちですが、自身が移住者ということで実体験をお話ししたり、移住の相談にのったり、町の魅力を発信したりと、移住定住の促進に関わる業務を担当しています。

 そこから展開して今後進めていこうとしていること、それは下諏訪町を「小商いが育つ場所」にしていくという活動です。いわゆる「小商い」というと、単に小さな規模でおこなう商売という印象を受けますが、私たちが応援したいのは単なる小銭稼ぎ、という訳ではありません。

マルシェ
ブローチ屋さんでのひとコマ。顔が見える関係だからこそ心が通い、買い物ひとつでお互いに幸せな気持ちになれるはず

 好きや楽しい、やりたい気持ちが出発点の、顔が見える関係性のなかで築かれていく、自分らしい暮らし方・働き方のこと。それを「小商い」と捉えています。まずは小さく始めた方がやりやすいけど、規模は大きくても小さくてもいい、お店をもってももたなくてもいい。好きだからやりたいという気持ちが大切なんじゃないかと思っています。

 なにより小商いなら、私たちのようなフツウな人だって、わくわくした気持ちでチャレンジできて、自分のことをもっと好きになれる、そんな気がするのです。

移住交流スペースとお試し住宅が活動の拠点。どちらもみんなでリノベしました

スメバ
町内外の人が入り乱れる交流スペースで、日々慌ただしくも楽しく働く私たち

 私たちの職場のひとつは、商店街の元お花屋さんの空き店舗を活用した「移住交流スペース mee mee center Sumeba」です。素人ながら、壁には漆喰を塗ったり床には味のある古い材を張ったり、リノベーションをして味のある空間に生まれ変わりました。

 スメバという愛称で親しまれるこの場所には、町に移住したい方が訪れるだけではなく、近所のおじいちゃんがお菓子を持ってきてくれたり、移住を実現した方がぷらっと近況報告に来たり。そこで新たな出会いが生まれることもしばしば、私たちがいなくてもいいのでは? というほど会話が白熱することもあるくらい。商店街らしい人の温かさや懐かしさ、そしてリアルが感じられる、町の拠点になっています。

 スメバでさまざまな相談にのるなかで、ふたつの問題点が見えてきました。ひとつは、町に住んでみたいという方が多くても、なかなか一歩を踏み出すのにちょうどいい住まいがないということ。宿泊と移住の間、お試しで暮らすという体験ができれば、下諏訪町が自分の思い描く暮らしが叶いそうな土地なのか、確かめられる機会になるはずです。

 もうひとつは、小さく商売を始めたいという方が、チャレンジできる環境がないということです。子育てしながら、お勤めしながら、まずは好きなことを小さく始めてみたいという声を多く聞きました。

 そこでスタートしたのが、町内の高台に位置する「しごと創生拠点施設 ホシスメバ」です。もとは労災リハビリテーション作業所という、車椅子の方のための住居と仕事をする工場とが一体になった国の施設だったところで、巨大な建物が残っていました。そのままだと無機質な施設だったので、これまたせっせとリノベーションし、500人以上の方に手伝ってもらってオープンしました。

ホシスメバ
個性的な住人ばかりのホシスメバも、人が人を呼び、町の交流拠点になりつつあるよう

 ホシスメバは2018年の10月からお試し住宅として、下諏訪町で新しい暮らしや仕事にチャレンジしたいという8組の方が入居しています。いずれお店をもちたいという方、車で移動販売をしたい方、作家活動をスタートさせる方。多様なメンバーですが、共通しているのは町でかなえたい夢があること、それぞれが下諏訪町での暮らしと仕事をつくり始めている最中です。

 入居という形以外でも、小商いをやりたいという気持ちを応援したい!と、ホシスメバで始めた試みのひとつが、庭を会場にしたマルシェイベントです。今年10月のマルシェでは、小商いを始めたい、始めたばかりという方を中心に集まった出店数は20店舗以上! 焼き菓子やパン、刺繍やアクセサリー・小物などの手づくりのもの、海外に買いつけに行った布や紙のアイテムなど、個性的なお店と店主さんが並びました。そのなかには、ホシスメバの入居メンバーはもちろん、なんと私たち以外の地域おこし協力隊の姿も。みんなが好きなことややりたいことがあって、それが実現している光景になんだかわくわく!

 来場された方は、近所のご年配の方からファミリーまで幅広く、噂を聞きつけて県外から来てくださった方も。なかには「次回は私も出店したい!」という方もいて、私たちの方こそびっくり。

マルシェ中庭
出店者のなかには店舗を持っていない方も多く、まさにヤッテミレバな1日

 個性的な小商いのプレイヤーがどんどん集まり出している下諏訪町。その流れをどんどん加速させるための仕かけを企み中です。

 自分のことをフツウだと思っていても、きっと好きなこと・やりたいことのタネはもっているはず。それをお互いに磨きあって、それぞれの小商いが育っていけば、自分らしく楽しく暮らせる人がもっと増えるはず!そして、それがじわじわと、地域の面白さにも繋がっていくような予感がします!

 じつは下諏訪町を歩けば、個人で営む小さなお店が多く、既に小商いの先輩がたくさんいる町なのです。次回は、実際に顔の見える関係のなかで自分らしい小商いを育て、地域に愛されているお店を紹介したいと思います。

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

小林由香里さん 綿引遥可さん 
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。