2学年が1つのクラスになる「複式学級」。移住して驚いた学校の環境

山口県萩市では中心部の学校を除き、ほとんどの学校が少人数で、複式学級が取り入れられています。複式学級とは2つ以上の学年をひとつにしたクラスのこと。地方都市の学びの環境について、2017年に萩市に移住した石田洋子さんが紹介します。

複式学級はひとりひとりの主役感がすごい

複式学級のクラス

 現在、子どもが通う小学校では全クラスが複式学級。1、2年生、3、4年生、5、6年生という3つのクラス編成です。さらに、小学校と中学校が統合されてひとつになった小中一貫校でもあります。

 複式学級は政令で定めるところにより、小学校では16人以下(1年生を含む場合は8人以下)、中学校では8人以下、特別支援学級は8人以下の場合に編成できるそうです。

 ちなみに私自身は中学校、高校を神奈川県で過ごし、クラスは最大45人、1学年は10クラス。そんななかで群集に紛れることしかしなくなり、何度か会った人にも「初めまして」といわれがちな、印象の薄い人間に仕上がってしまいました。
 それに比べて、子どもが通う少人数の学校ではひとりひとりの主役感がすごい! 合唱で口パクなんてしていたら、すぐにバレてしまいます。

ひとりの先生が2つの学年を交互に教える

2学年が背中合わせに座る様子

 2つの学年が一緒に授業を受けるのはどんな感じなのか、実際に見てみるまでは想像もつきませんでした。3、4年生の授業参観での様子を見ると、同じ教室にいる3年生と4年生は、机の方向が逆向きになっていて背中合わせで座っています。3年生が黒板の方を、4年生は黒板に背を向けて教室のうしろに設置されたホワイトボードの方向を向いています。

 同じ教科を同じ時間に学びますが、教科書やプリントなどの内容は別々です。先生が3年生に説明している間に、4年生はプリントに取り組み、3年生への説明が終わると4年生への説明を開始。その間、3年生は机に向かって問題を解いているという感じ。先生はちょっと忙しいけれど、うまく授業がまわっていました。

 先生に複式学級について伺ったところ、メリットとしては、上の学年の子は下の学年の子に教えてあげる機会が増えるし、下の学年の子は上の学年の子を慕っていて、先生から教えられるよりも効果的に学べることもあるそう。

 教えることで理解が深まることは多いので、いい学びにつながっているようです。また、人との関わりがうまくなり、ガヤガヤとしたなかでも集中する力がつくということもありそう。デメリットは、先生によっては、1人で2つの学年を教えるのは負担が大きいということ。

 複式学級のほうがいい環境というわけではないですが、ここまでひとりひとりがじっくり見てもらえる環境も、なかなか貴重だと感じます。日本の公立学校は「学習指導要領」に基づいたカリキュラムなので、大きな違いはないとされており、地域差があるとすれば、学校行事と「総合的な学習の時間」に特色が出てくることです。

 自分の子どもに限ってですが、このような環境で学校生活を送っていると、どこかおっとり、のほほんとしてくるような気はします。

地方×少人数の学校ならではの特色

校庭で部活動

 複式学級になるような少人数の学校では、人数が必要なスポーツをするのが難しく、部活動の選択肢が限られるという点があります。子どもが通う学校の中学部の部活動は、卓球部と陸上部の2つしかありません。

朝早い登校の様子

 ほかに、移住前に住んでいた首都圏の学校との違いは、朝の早さ。首都圏の学校が8時半スタートのところが多いのに対して、子どもの通う学校は、8時スタートなので、学校から家が近いわが家でも7時25分に家を出なければならず、家が遠い子は7時に出るという場合も。慣れてしまえば問題ないのですが、夜型になりがちなわが家では、最初はきつかったです。

 そういえば、この地域一帯では、朝の5時には防災無線から音楽が流れます。いまでは、この音楽で目覚めることもありませんが、引っ越したばかりのときは、ちょっと驚きました。日の出とともに起き、日没とともに寝るというリズムで生活する…、私もいつか、その境地に達したいです。

<文・写真/石田洋子>

石田洋子さん
2017年、山口県萩市に移住。萩とその周辺の暮らしを伝える「つぎはぎ編集部」で活動中。2020年、自宅の蔵を改装し、泊まれるフリーぺーパー専門店「ONLY FREE PAPER」HAGIをオープン。民泊体験を提供しています。