集落の花とつるを使ってリースづくり。魚沼のワークショップに参加

新潟県魚沼市で、リース作家として活動しているひと葉さん。彼女のワークショップの様子を、魚沼に移住して木工に関わっている中川光嗣さんが紹介します。

野山のつるとアナベルをつかってリースをつくる

山でつたをとる参加者たち

 稲刈りも間近に迫る季節、米どころ魚沼の山間の集落で小さな催しが開かれました。魚沼在住のリース作家であるひと葉さんによるリースづくりワークショップです。

 花材は集落のある個人宅に咲くアナベルと野山のつる。どちらも住民のご好意により提供され、参加者自ら採取するところからスタート。普段、山を歩いても花や木ばかりに目がいき、つる性の植物に気をとめることはないが、このときはなんでもないクズなどのつたを林道の脇で物色します。

 手慣れた様子で適当な太さのつるを引っ張り出し、その場で適当な大きさの輪っかにしたかと思えば、いつの間にかリースの土台ができあがり。それもそのはず、ひと葉さんが県内各地で開催している、リースづくり教室の常連の方々が多く参加していたのです。

同じ花材でもでき上ったリースには個性が出る

アナベルを集める参加者たち

 庭でドライフラワーに適した、若い緑のアナベルを次々につみ取っていく参加者たち。強い日差しが照りつけるなか、手にする花束は遠景の山並みと同様に涼やかです。

アナベルとつたでリースづくり

 花材を持ち帰り、ランチをはさんで創作開始。和やかな雰囲気のなか、着々と手は進み、徐々に丸みを帯びた形に。アナベルだけでつくられたリースも、それぞれの個性が表れておもしろい。ひと葉さんの「ありのままの魅力」を大切にする心は人も植物も分け隔てなく、もち味を引き出すことに繋がっているそうです。

完成したリースと参加者たち

東京から魚沼に戻って庭づくりをスタート

リースが飾られたアトリエひと葉の玄関

 後日、ひと葉さんの活動についてお話をうかがいに「アトリエひと葉」にお邪魔しました。東京から地元の魚沼に戻り、リース作家として歩み始めたのは14年前。これまで定期的にリースづくり教室や個展の開催など精力的に活動されてきました。はじめの頃は親戚や知り合いが生徒でしたが、人づてに評判が拡がっていったそう。ひと葉さんの気さくで明るい人柄と、ナチュラルで詩的な空間はとても居心地よく、だれかにすすめたくなってしまうのでしょう。

 ひと葉さんがリース作家でありながら、以前より思いを抱いていた庭づくりも手がけるようになった経緯も聞かせてもらいました。店先で眺めていた雑誌の記事から強いインスピレーションを受け、特集されていたストックホルム郊外のガーデンに自ら足を運んだのは8年前のこと。そこで偶然働いていた日本人スタッフとの縁で、2016年に北海道「十勝千年の森」で1シーズン研修を積みました。

 その後地元に戻り、少しずつ庭の仕事が舞い込んでくるように。リース教室のお客さんの庭の一部をハーブガーデンに変えることや、全体の管理を任されることも。地元の風土に合った庭づくりは、14年間の自身の庭づくりでつちかわれたことが生かされているという。

お茶をいれるひと葉さん

 田園の一画にたたずむアトリエでのゆっくりした時間のなか、最後に理想の庭づくりについてうかがいました。
「創造したいのは、ナチュラリスティックプランティングによる『メドゥーガーデン』です。昨今の世界的ガーデンムーブメントである自然回帰の庭づくりですね。だれもが記憶の底に眠らせている、広くどこまでも続く草原の庭。そこは、ありのままの自分、生まれたままの素の自分に帰れる庭です。そう、なぜだか涙がこぼれるような」
そんな理想の庭にたたずむひと葉さんの姿を見られるのはそう遠くないかもしれません。

ひと葉(山本規子)さん
新潟県魚沼市在住。リース作家・ガーデナー。東京にてフラワーデザインを学び、ブライダルデザイナーとしての経験を積む。2007年帰郷。「atelierひと葉」を開業。

<取材・文/中川光嗣>
神奈川県湘南地方で育ち、大学で建築を学び、首都圏の建築事務所などで住宅建築や都市設計などに携わる。30代で新潟県十日町市に地域おこし協力隊として移住。その後、県内の魚沼市に移り、「小屋丸」の屋号で地元の木材を使った木工作品を制作している。