田舎じゃ賃貸住宅が見つからない…出会ったのは古民家シェアハウス

[週末古民家暮らし始めました!]

 IT系企業でバリバリ働く夫婦が、ひょんなことから2拠点生活を始めました。都会と農村の2拠点とはいえ、同じ千葉県内、クルマで1時間半の近距離。田舎の家は古民家のシェアハウスです。仕事と子育てで慌ただしい日々を送る松宮恵さんが、週末田舎暮らしの魅力をつづります。

「ほったらかし農園」でおいしいサツマイモがとれました!

庭で収穫
いすみの家ではサツマイモ、栗、柿などいろいろとれる

 だんだんと寒くなってきました。

 千葉の里山は黄金色のススキの穂がゆったりと風に揺れ、秋から冬へと移り変わっています。

 さて、この時期の里山の楽しみといえばイモ掘り!先日、子どもたちと畑で育てたイモを収穫しました。

 わが家が週末を過ごしている古民家の庭に畳2畳ほどの小さな畑を耕しています。手入れできるのは週末だけの「ほったらかし農園」で、最大3週間水をあげないことも…。それでもサツマイモは大きく成長!植物の力、大地の力は強しです。

水まき
1歳の息子も水やりをお手伝いしている気分

 早速サツマイモご飯にして「いただきま~す!」。サツマイモはしっとりと甘く、シンプルな塩ご飯との相性も抜群!永遠に食べ続けられそうな危険な味わいです。野菜が苦手な子どもたちも自分たちで収穫したものは別腹なのか、モリモリ食べてくれます。ほったらかし農園、なかなかいい感じです。

田舎暮らしが気に入って、家探し。だけど賃貸物件がまったくない!

 さて、今回は、なぜ私たちがこの2拠点生活に辿り着いたのかをお話ししたいと思います。

 もともと、自然や田舎暮らしに興味があったかといえば、とくにそうでもなかった東京出身、東京育ちのワタクシ。両親とも東京生まれなので田舎とは無縁でした。
 子どもが生まれる前は好きなだけ仕事や趣味のフラダンスに打ち込み、夜は飲み歩き、都会の生活を楽しんでいました。ビバ東京!しかし、子どもができて一変。

 子連れで遊びに行ける場所は限られており、ベビーカーで移動するのは大変。大人が楽しめる場所はたくさん知っていたけれど、子連れでいける場所は意外と少ないことに気がつきました。
 東京は大人中心、大人のための街だったのか…。
 ショッピングセンターのフードコートの喧騒のなか、ぼんやりする。
 そんな休日に退屈し始めたころ、夫が「都会の暮らしに飽きてきた。田舎に行きたい…」とつぶやき始めました。

 関西出身の夫は、祖父母の家が兵庫県の山奥にあり、子どもの頃は里帰りして、畑仕事を手伝ったり、川で遊んだりと田舎暮らしに親しんでいました。趣味も登山などアウトドア派だったけれど、子どもが生まれてからは、すっかりそれもご無沙汰。仕事も忙しく、ストレスを感じていた様子。

「田舎!それはいいかも!」。まだ小さな子どもも、私たち大人も、みんなが楽しめる場所かもしれない。夫のつぶやきをきっかけに、休日になると、千葉の房総半島へ遊びに行くようになりました。

 日帰りはなかなか難しいので大抵泊まり。コテージや民宿のほか、農家民泊も利用してみました。
 農家民泊とは、農家に泊まり、まるで家族の一員のように農作業などさまざまな体験ができる、というもの。私たちがお世話になったのは千葉県鴨川市で農家を営むご夫婦のお宅でした。

巻きずし
「房総の太巻きすし」はお花や動物などの絵柄を描き出します。奥のおすしは「カタツムリ」!

 枝豆の苗を植える農作業を手伝わせてもらったり、奥さんに太巻きずしづくりを教えてもらったり。
 夜は仏壇の飾ってある居間で、遠く聞こえるカエルの合唱を子守唄に眠りにつきました。「実家より実家っぽいな…」とつぶやいてしまうほど、なんだか懐かしい気持ちになれる「ありのままの暮らし」体験でした。

 田舎に来ると、家族全員がリラックスして、心から楽しそう。
 毎週末、こんな場所に遊びに来られる自分たちの家をもてたらどんなにいいだろう! そう思い始めました。それって別荘? しかし、いきなり物件を購入するという決断にはなかなか踏みきれない。もっと気軽に始められないかな、とインターネットで探し始めました。

 ターゲットにしたエリアは、千葉県のいすみ市辺。千葉県南東部に位置する「大原」を中心部とする市です。東京駅から特急電車で約70分でいけるアクセスのよさと、里山だけではなく、太平洋に面した広い海岸があるのが魅力。何度か訪れるうちに、知り合いも増えていき、居心地のよさも感じ始めていました。

棚田
棚田に向かって大声でシャウトする娘。当時1歳。

 しかし、不動産サイトで出てくるのは売却物件ばかり。直接、不動産会社に問い合わせをして相談しても「賃貸物件は取り扱っていない」と言われてしまうことも…。さらに私たちが住みたいのは、町ではなく、周囲を田んぼに囲まれているような里山のエリア。賃貸物件が出てきても、築年数が古く、トイレやお風呂などの水回りは入れ替えが必要だったりと厳しい状況。里山エリアで、賃貸で、最初から住める状態で手頃な値段のものは人気物件なのか、出てきてもすぐに成約されているようでした。

「これはもう無理だな…諦めよう…」と思い始めた頃、いすみ市で知り合った方に紹介してもらったのが、今住んでいる「古民家シェアハウス」だったのです。
「なんですか、それ!インターネットに載ってなかった~!!」。
 地域で情報を得たかったらインターネットではなく、地元の人の「口コミ」ということを身をもって学んだ瞬間でした…。

[週末古民家暮らし始めました!]

松宮恵さん
30代のワーキングマザー。エンジニアの夫、3歳、1歳の子どもと千葉県浦安市で暮らす。近所で家庭菜園を探しているうちに、ひょうんなことから県内のいすみ市の古民家をシェアすることに。2019年4月から2拠点暮らしを開始