沖縄本島北部にある国頭村(くにがみそん)に移住し、新しくできた道の駅 「やんばるパイナップルの丘 安波」で勤務している島崎裕介さん。国頭村の地域ごとに違う魅力にみせられ、同じ村内で2拠点生活を始めたそう。移住暮らしについて教えてもらいました。
森と海に囲まれた自然豊かな国頭村
国頭村は那覇空港から北へ車で約2時間の、通称やんばる(山原)と呼ばれる地域。土地の90%以上が森林のため、集落が森と海の間に点在している、とても自然豊かな場所です。
生物の多様性は世界自然遺産にも選ばれるほど。たくさんの生き物が生息し、通勤中に有名なヤンバルクイナに出会えることも。
外遊びが大好きなので、山でも海でも川でもアウトドアを楽しむことができ、暖かいのでシーズンが長いのが本当に最高です。
もともと国頭村の西側にある辺土名(へんとな)という地区に、徒歩1分でビーチに行けるアパートを借り、車で30分ほどの東側の安波(あは)という地区に勤務していました。
辺土名は国頭村の人口(約5000人)の30%ほどが住む中心地で、村役場や小さな商店街、居酒屋などもあります。一方、職場のある安波の集落には100名ほどしか住んでおらず、共同売店や公民館くらいしか施設はありません。
辺土名をベースに楽しくやんばるライフを送っていましたが、次第に安波のディープな魅力にハマってしまいました。
安波のことをもっと知りたくて2拠点生活をスタート
安波はまず、シンプルに景色がきれいなんです! 高台から見下ろすヒラフと呼ばれる海岸や、根が板状になる立派なサキシマスオウの木。
地元の人々が拝所としてあがめる清々しい滝や、丘に広がる広大なパイナップル畑は圧巻ですし、もともと山の斜面を段々畑として使っていたという集落の風景もすてきです。
飲み屋がないため、夜な夜な共同売店前の東屋に集っては飲み会が始まる、集落ならではの風景も、おもしろいと思いませんか?
ちなみに共同売店とは、やんばるでよく見られる地域住民が共同出資で運営している、生活必需品の取り扱いを中心とした売店です。店ごとに特色があって、共同売店めぐりも楽しみのひとつです。
意外に移住者が多いのも驚きでした。農業をしたり、武術を教えたり、地域のお手伝いをしたり、さまざまな暮らし方をしています。
もっとじっくり安波のことを知りたい! そんな気持ちが強くなり、村内2拠点生活を始めることにしました。
2K以上の部屋を2つ借りても6万円
気軽に2拠点生活を思い立つことができたのは、とにかく家賃が安いから。村内で2か所借りても、東京で1部屋を借りるより安いほどです。辺土名のアパートが2LDKで4万円、安波のアパートが2Kで2万2000円。東京で借りていた1Kの部屋は9万円だったので驚きでした。
クルマは必需品ですが、駐車場は無料です。家電製品をそろえるのは大変なので、趣味のキャンプ用品をそのまま使って大きな出費なく、思い立ってからゆるゆる準備して2週間ほどで、2拠点生活が実現しました。
ただ国頭村は全体的に買い物は不便で、共同売店で最低限の食料などはそろうにしても、ホームセンターやドラッグストアがなく、辺土名からは30分、安波からだと1時間近くかけて名護市に出かけることになります。
また、小さな診療所はありますが、総合病院も名護まで行かないとないので、病気になったときは心配かもしれません。
でも、辺土名も安波も人口が少ないぶん、おもしろい人たちとすぐに顔見知りになることができ、飲み会などであっという間に仲よくなれるこの感覚は、国頭村ならではだと思っています。
2拠点から魅力を発信。少しでも地域の力になりたい
魅力たっぷりの国頭村ですが、人口減少や高齢化など、地域が抱える課題もたくさんあります。
安波では、伝統的な踊り「シヌグー」の踊り手や歌い手の高齢化が進んでいます。また、パイナップルをたくさんつくっていますが、ほとんどが加工用に回されるため、青果として販売するより単価が安いみたいです。
ほかにも、地域の高校生がアルバイトなどでお金を稼ぐ場所がなかったり、おじい、おばあが楽しめる余暇活動がなかったりもするようです。
もっと集落の魅力を観光客に伝えられるようなマップをつくりたい、地域の方からお聞きした課題に少しでも力になりたい。せっかくの2拠点生活を生かして活動していきたいと考えています。
国頭村で借りている2か所のアパートに滞在してもらうことも可能ですので、ぜひみなさんのお力も借りながら、よりよい地域にできればと思います!
<写真・文:島崎裕介>
島崎裕介
2021年10月から地域活性化起業人という制度を使い、旅行会社から出向、沖縄本島最北の村である国頭村(くにがみそん)の役場に勤務。現在は国頭村の東側に新しくできた道の駅、「やんばるパイナップルの丘 安波」の運営を担当。