ロウリュウには地元のお茶。特産品も味わえる大子町 のサウナイベント

茨城県の最北端に位置する大子町。八溝山や男体山、久慈川など雄大な自然に恵まれたこの町で、「サウナ×特産品」をテーマに町の魅力を発信するイベントが開催されました。サウナと特産品を結びつけたこのイベントの背景には、大子町を愛する人々のさまざまな挑戦があったそう。今回は、ユニークなイベントの事例をご紹介します。

茨城県最北西部の町 でも人口減少が課題に

久慈川
大子町を流れる久慈川

 茨城県大子町は、北は福島県、西は栃木県の県境に位置した茨城県の最北端の人口1万5000人ほどの町。面積の8割が八溝山や男体山などの山岳地で、町の中央部には日本有数のアユ釣りスポットである久慈川が流れています。特産品は、樹上で完熟された「奥久慈りんご」、奥久慈茶、奥久慈しゃも(地鶏)、奥久慈こんにゃく、大子産米、久慈川でとれるアユなど。

 豊かな自然に恵まれた大子町も、抱えている課題はやはり「人口の減少」と「地域経済の縮小」です。

地域の魅力が自然に発信される仕組みをつくる

大子町役場 まちづくり課 北村英之さん
大子町役場 まちづくり課 北村英之さん

 最初にお話を伺ったのは、今回のイベントの企画者である大子町役場まちづくり課の北村英之さん。

 北村さんは、町の課題を解決するためには「大子町の魅力を沢山発信することが重要」と考えました。SNSがインフラとなりつつある現代社会、実際に大子町に住む人々や訪れた人々が大子町の魅力に触れ、好きになり、その人たちが説得力とリアリティのある町の生の魅力を自然と発信するためにはどうしたらいいのか、と考えたそうです。

 北村さんはまず、SNSで魅力が伝わりやすい特産品を使用したイベントを検討すべく、地域おこし協力隊の鈴木友貴さんに相談しました。

サウナと特産品のコラボレーションを発案

 北村さんから相談を受けた地域おこし協力隊の鈴木さんは、サスティナブルツーリズムの観点から「持続可能で大子町の自然資源を活用できて若者が集められるコンテンツ」を特産品とコラボレーションさせるべきだと考えました。

 そして思いついたのが「サウナ」でした。

 首都圏在住の若者の間で大流行中のサウナなら水風呂の代わりに久慈川を活用でき、さらに、大子町はサウナでリラックスしたあとに都心に帰るには少々遠い位置にあるので、宿泊につながる可能性も見込まれます。
また、サウナと一緒に楽しむ食事、通称「サウナ飯」にはルールがないため、どんな特産品でも活用することができます。

 こうして、「サウナ×特産品」がテーマのイベントが開催されることになりました。

ロウリュウに地元のお茶を使うサウナイベントを開催

水風呂の代わりに久慈川を活用
水風呂の代わりに久慈川を活用 外気浴は川の中に設置されたいすで

 2022年9月3日、久慈川のほとりにテントサウナやサウナカーなど合計8つのサウナが用意され、イベントが開催されました。

 イベントのこだわりは「大子町の自然をダイレクトに感じてもらう」「すべて大子町のものを採用し町の魅力を最大限に知ってもらう」そして「東京の人も満足できるレベルのサウナをそろえる」ことでした。

アユの塩焼き
特産品のアユをサウナ飯に

 サウナ飯には大子町の特産品である久慈川で釣ったアユの塩焼き とこんにゃくを採用。サウナ室を温めるためのまきも、もちろん大子町産です。

奥久慈茶のロウリュウ
ロウリュウは奥久慈茶で

 熱したサウナストーンに水をかけ蒸気を発生させることで、体感温度を上げや発汗を促す「ロウリュウ」。このロウリュウの水には奥久慈茶を採用。サウナストーンに奥久慈茶を少しずつそっとかけると、ほうじ茶のような香ばしい香りがふわりと立ち昇ります。

 いくつかのサウナでは、奥久慈茶の香りをつけた球体の氷(アロマキューゲル)がロウリュウとして使用されていました。じつはこの氷、地元の大子清流高校の学生たちが開発したものです。

高校の授業で開発したアロマキューゲルをイベントでお試し

地域おこし協力隊 鈴木さんと大子清流高校2年生の牛木さん
右/開発に携わった大子清流高校2年生の牛木さん 左/地域おこし協力隊 鈴木友貴 さん 
和歌山大学観光学部に在学中から大子町に住み、地域おこし協力隊として活躍中

 地元の大子清流高校には「未来探求」という大子清流高校にしかない授業があります。地域のコンテンツを掘り起こし活用方法を研究するという授業で、今年の講師は地域おこし協力隊の鈴木さんが務めています。
 そこで9月3日のイベントに向けてサウナをテーマに研究することとなったそう。

奥久慈茶のアロマキューゲル
まだまだ試作段階の奥久慈茶のアロマキューゲル

 この「未来探求」の授業で、大子清流高校の学生たちは奥久慈茶を使ったアロマキューゲルを開発中。今回のイベントでは奥久慈茶のアロマキューゲルの試作品を実際に使用し、学生たちも体験しました。ところが、見た目は涼し気ですが、想定よりも奥久慈茶の香りが立たないことが判明。

 大子清流高校2年生の牛木さんは「まだまだ改良が必要です」と笑顔で語ってくれました。

子どもたちが自慢できる町をつくりたい

牛木さんと北村さん
牛木さんのお母さんと北村さんが同級生だとこの場で判明! 「これも大子町あるあるです」と笑う

 大子町役場まちづくり課の北村さんは、大子清流高校の学生たちがイベントに関わったことについて、「イベントを通じて、大子町はたくさんの人が集まってくる魅力ある地域であると実感してほしい。そして、子どもたちが自慢できる地元にしたい」と話してくれました。

「全方位、アウトドア。自然基地大子町」をスローガンに、これからも大子町の挑戦は続きます。
冬にはマイナス10℃前後まで下がることもある大子町。その寒さを逆手に取るイベントを現在検討中とのことでした。