広島県安芸高田(あきたかた)市の山あいの集落で、両親とおばあちゃん、山で保護した犬「てん」と暮らす水戸家のmizutomidoriさん。お父さんの実家である今の家に移住して6年目、愛犬てんと家族のにぎやかな暮らしのレポートをお送りします。今回は、水戸家のお花見と、花山椒を使ったつくだ煮、山の不思議な植物についてです。
満開の山桜の下でお花見。愛犬も一緒に春を楽しむ
4月は、里山の自然がますます華やかな時季。楽しみにしていた家の近くの山桜もきれいな花を咲かせてくれました。オトメツバキやレンゲ、ハナズオウなどのほかのピンク色の花たちもちょうどまわりに咲きそろって、この一帯はなんともかわいい景色。水戸家では毎年ちょっとしたお弁当をつくって、桜の前の道路でお花見をします。外仕事の合間の10時と15時のお茶も、せっかくなので桜の前で。
この山桜はお隣さんの木なのですが、この季節にはこうして家族で楽しませてもらっています。おばあちゃんから聞いた話しでは、亡くなったお隣のお父さんが植えられたそうで、いつも「この桜が大きくなったらみんなでお花見をするのが夢です」とお話されていたんだとか。毎年ありがたく思いながらこの景色を眺めています。
この頃になると、家の側の大きなイチョウの木も一気に芽吹き始めます。寒々しい姿だった木に葉っぱが出てくると、景色がぱっと明るくなりました。周りの山にも若葉の柔らかい緑色が見えます。
山椒の花から「花山椒のつくだ煮」をつくる
それから、忘れてならないのが山椒の花。葉っぱが出たあとに小さな花のつぼみがついて、それがだんだんとふくらんで黄色くなると「花山椒のつくだ煮」をつくります。花が開いてしまう前に摘みとるため、時季を逃さないように注意して見ておかなければいけません。
移住してきてから初めて知ったのですが、山椒には雄と雌の木があって、このつくだ煮にできるのは雄木の花です。たくさんの花のつぼみをつんで帰って、ひとつひとつ選り分ける作業はなかなか大変。それに、たくさんあると思った花は煮ると、かさが減ってほんのちょっとに!この時季だけの特別な味です。
一度試しに雌木の花でもつくだ煮をつくってみたことがあるのですが、残念ながら固い歯触りと強い刺激であまりおいしく食べられませんでした。そのかわり雌木からは、秋に赤くなった実をもらって粉山椒をつくっています。葉っぱも利用できて、山椒の木はとても優秀です。
山椒のほかにもセリ、タラの芽、コゴミ、フキ、ノビルなど、少し探せばたくさんの食材が見つかります。豊かな自然のおかげで、その季節ならではの味を楽しむことができています。
うっすら透けた不思議な植物「ギンリョウソウ」に出会う
4月も終わり頃になると、いつの間にかイチョウの葉っぱはしっかりと大きくなっていて畑や道端の草もどんどん伸びています。
久しぶりに、父の案内で山に入りました。ひっそりとした山の中に言われないと気がつかないくらい小さな、うっすらと透けた不思議なものが生えています。ギンリョウソウという植物だそうで、見た目も不思議ですが山のゴキブリと共生していたりとおもしろい生き方をしているようです。5年前に初めて見たときは、ムーミン谷のニョロニョロに会えたみたいでとても感激しました。
キエビネという野生の黄色いランも見に行きました。こちらは広がった葉っぱがまるでドレスのようで、ハッとするほど美しい姿をしています。人知れず、こんなにきれいな花が咲いているなんて。
父が山の手入れをするようになって、花茎(花をつける茎)は毎年少しずつ増えてきています。それでもキエビネはここにぽつんとあるだけ。昔はもっとあちこちにあったのかもしれませんが、今では荒れた山が多くなって本当に貴重な株になりました。今でも自然の恵みは豊かですが、昔と比べて減ってしまったものもたくさんあるようです。これからもできるだけまわりの環境を大切に守っていきたいと思っています。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して6年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。