浜で見る大輪の花火に陶酔。呉市の遣唐使祭りが4年ぶりに復活

広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。2023年3月に3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は4年ぶりに開催された「遣唐使まつり」をレポート。

開催が危ぶまれた「遣唐使まつり」が復活

花火
桂浜から見上げるような形で大きく打ち上がった花火

 2023年7月15日。どーん!!と地鳴りのような音を上げながら、桂浜(かつらがはま)の夜空に咲いた大輪の花火たち。4年ぶりに開催された「遣唐使船まつり」には、その大迫力の花火を見ようとたくさんの人が訪れました。

 倉橋島の倉橋町では毎年「くらはし遣唐使船まつり」「くらはしアクアスロン大会」が2日に渡って行われるのが夏の風物詩でしたが、ここ数年はほかのイベントと同じくコロナウイルスの影響により開催が見送られ、今年やっと開催されました。

 倉橋町はかつて造船の町として栄えた歴史があり、江戸時代のドック跡が残っていたり、遣唐使船もこの地で建造されたのではないかという説もあるのです。今回の祭の会場となった「長門の造船歴史館」では倉橋の職人さんたちによって原寸大サイズに復元された遣唐使船も展示されていて、その歴史を今に伝えています。

 ですが昨年、その原寸大の遣唐使船の復元模型が老朽化のため一部が破損してしまい、今年に入って今後この歴史をどう残していくのかが議論されました。それにともない「遣唐使船まつり」もやるべきかやらざるべきか、という空気になり…。

「やはりこういった歴史は残していきたい!」という声が上がったことから、規模は縮小しつつ協力して祭をやろうじゃないかと実行委員会が結成され今年の開催が決定しました。

夕暮れと二胡の音色に包まれノスタルジックな世界に

二胡
「長門の造船歴史館」前のステージで行われたプロによる二胡の演奏

 開催当日、朝から桂浜周辺はイベント準備でザワザワ。これまでは「遣唐使行列」などその時代の衣装を身につけて歩くイベントなども行われていたのですが、今回は縮小のためステージイベントと出店の出店、そしてフィナーレの花火というシンプルなものに。

 夕方行われた開会式では、「遣唐使船まつり」と「くらはしアクアスロン大会」の両会長による松明の点灯式が行われ、その後ろで地元の祭太鼓と笛の演奏が響き、とてもいい雰囲気でイベントが始まりました。

 その後もプロの二胡奏者さんの演奏へと続き、美しい音色を奏でてくれる時間が日が落ちかけた桂浜周辺を包み、会場全体がノスタルジックな世界に。

 ステージの最後は、以前地元の中学生が作成した「遣唐使船物語」という切り絵絵本をプロジェクターで流しながら朗読も行われました。堅そうな題名ですが、ちょっとファンタジー要素もあるすてきな絵本です。機会があればぜひ手に取ってみてください。桂浜温泉館や長門造船歴史館で販売していますよ。

出店もにぎわい、花火も大盛況

出店
浜辺に並ぶ出店風景。夕方にはお客さんでいっぱいに

 出店コーナーとして、海岸にはさまざまお店が立ち並びました。私も「くらはし観光ボランティアガイドの会」の出店者で参加させてもらい、子ども向けの「お魚釣りくじ」を担当。これは、紙でできた魚を釣り上げて、その魚に書かれている手づくりオモチャをプレゼント!というものです。

 手づくりオモチャは夜な夜な必死につくりました(笑)。手づくりなのでちょっと心配でしたが、子どもたちが喜んでくれていたのでうれしかったです。ほかには海鮮焼きのお店やタコ焼き、光るジュースやかき氷、カラフルなクリームソーダなどもありました! 食べ物屋さんには長蛇の列もできていて、海に入ってしまいそうなほど!

 花火の時間に近づくにつれ、だんだんと浜にはたくさんの人が集まってきて、浜が埋めつくされてきます。花火の台船も浜からすぐ近く見える位置に待機し始めました。

海に写る花火
おだやかな瀬戸内海に映る花火もきれい

 そして午後8時。地鳴りのような音を上げながら花火が上がり始めました! この島に移住してから、いろいろな人に「遣唐使船まつりの花火はすごい!」「浜で見るのがいちばん!」と教えてもらっていましたが、今年それを初めてみて「本当だ!!すごい!!」と感動しました!

 本当に花火が近くて、まるで上から降ってくるよう。尺玉のような大きな花火もたくさん上がり、出店の片づけの合間でしたが、花火にしばらく見入ってしまいました。

 この大迫力の花火は、「遣唐使船まつり」と「くらはしアクアスロン大会」の共同で行われたものです。祭の翌日、次は「くらはしアクアスロン大会」の開催です。そこではたくさんの選手が倉橋の海を泳ぎ、山を駆け抜けました!

アクアスロン
3.8kmのスイムからランに移るSタイプの選手

 アクアスロン大会は、昨年は縮小バージョンでは開催されましたが、今年はコロナ前のスタイルになり、いちばんコースの長いスイム3.8km+ラン42.36kmのSタイプも復活。スタートも早く朝7時に選手たちが海に入っていきます。

 私はSUPでスイムコースの見回りとして参加。初めてスイムを間近で見させてもらい、こんなに長い距離を泳ぎきるのは本当にすごい体力と精神力がある選手たちだと感激しながら応援していました。

 この大会では、のぼり旗や参加賞のタオルなどのデザインも担当させていただきました。2つのイベントにたくさん関わらせてもらえて、本当に勉強になり楽しかったです。来年もしっかり関わっていけたらいいな、とSUPで少し筋肉痛になりながら思うのでした。

<取材・文・写真/前中詩織>

前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。