神輿とだんじりが競い合う。大迫力の呉市「桂濱神社大祭」

広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。2023年3月に3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は呉市「桂濱神社(かつらはまじんじゃ)」の秋祭りをレポート。

国の重要文化財「桂濱神社」の秋祭り

神社から海に向かう神輿
神社から海に向かう神輿

 熱く厳しい夏が過ぎ、朝晩は少し涼しくなった倉橋の9月23日。この日、本殿が国の重要文化財として登録されている桂濱神社の秋祭り、桂濱神社大祭がとり行われました。

 気になるお祭りで行ってみたいと思っていたところ、「一緒に歩きに来たらいいよ~」とお誘いをいただいたので、午前中のだんじり曳行(えいこう)から参加させてもらうことに。

 朝8時半頃に集合場所に行くと、すでにお祭りの衣装に身を包んだ方がたくさん! カナビキと呼ばれる精麻(精麻は穢れを拭い去る力を持つ繊維だそう)と「桂濱神社」と書かれた手ぬぐいをいただきました。カナビキはタスキのように肩からかけ、手ぬぐいは首にかけている方が多く、私も同様に装着し出発を待ちます。

 9時になると、出発する前に少しお話があり、御神酒も少しいただき、さぁ、だんじりが動き始めます。

元気なかけ声と共にだんじりが地域を巡る

「ダイバ」と呼ばれる鬼も
だんじりの曳行には「ダイバ」と呼ばれる鬼もいる。衣装がピンクで華やか

 だんじりには、赤い座布団が重なったようなものが頭に乗っており、両脇には2本の竹がつけられています。その竹にところどころついている半紙には、お金を奉納した方たちの名前が書かれているのだそう。また、太鼓打ちと呼ばれる子どもたちが乗り込み太鼓をたたきます。その太鼓に合わせて、大人や子どもがかけ声をかけながらだんじりを引き、地域を回るのです。

 呉市の秋祭りで有名な、鬼の面をつけ竹の棒を持って歩く派手な衣装の鬼「やぶ」。倉橋町尾立地域では「ダイバ」と呼ばれているそうで、神様の道案内や警護、奉納された米の出来具合を確認する役割を担うとされ、このお祭りでもだんじりの前後ろに警護するように立っていました。

「おら、よっさーよっせい!」のかけ声で、だんじりが進み始めました。太鼓の音とかけ声が祭の雰囲気を盛り上げます。この雰囲気はお祭り好きにはたまりません!

激しい動きのだんじりから目が離せない

だんじり
警察立ち会いのもと、倉橋のメイン交差点で回されるだんじり

 だんじりは市民センターなどがある倉橋の中心地・本浦地域を巡ります。家や旅館、喫茶店、ガソリンスタンドなどを回り、お金が奉納されると(この地域ではそのお金のことを「お花」と呼ぶそう)、両脇の竹にその家や店の名前が書かれた半紙がくくりつけられ、御礼のお辞儀をするようにだんじりが思いきり前に傾けられます。

「ガターン!」と大きな音や力強さに初めて見る人は驚くでしょう。開けた場所では、これはまたすごい勢いでだんじりがぐるぐると回されていました。回った後を見てみれば、その場に台車のタイヤの跡が丸くくっきりつくほど!! 真っ直ぐの道では、短い距離を勢いよく走り抜けることも。

 こっそりだんじりを引かせてもらいましたが、坂道ではちょっと押すのが重く、回すのもついていくのに必死なほど。実家の地元にも神輿はありましたが、こんなに激しい動きは見たことがありません。いろいろな祭に参加させてもらうと未知との遭遇がたくさんあって楽しいですね。

 ちなみに、小中学生も参加していて、その体力にすごいなと思ったり、中に乗って太鼓をたたいている子たちは傾けられたり振り回されたりしても酔わないんかな? と思ったりもしました(笑)

 そして町を回り終えただんじりは、桂浜(かつらがはま)に向かいます。

桂濱神社の神様を神輿に乗せて桂浜へ

桂濱神社
桂濱神社で神様をお神輿に遷すための神事が執り行われる

 午前中はだんじりがメインでしたが、午後からはついに神様が浜に降りて来られます。桂濱神社に向かうと、神社の中で祭の太鼓と笛の音がし、神輿に神様が遷される神事が執り行われていました。神事が終わると、中から神輿が降ろされます。神輿の担ぎ手は白丁、張烏帽子という衣装を身につけています。

 笛の音が鳴るなか、階段を降り浜へ向かう神輿。神輿が出るのは4年ぶりだそうで、神様もお出かけになるのは久々だったのではないでしょうか。

 そしてその久々の旅立ちを広場で待ち受けるのは、あのだんじり!

神輿の行先を邪魔するだんじり

邪魔をするだんじり
神輿の行く手をだんじりが邪魔をする

 大鳥居のある広場では、神輿をだんじりが今か今かと待ち構えています。だんじりは神輿が浜に行こうとするのを邪魔するのです。

「今日はケンカせんのんどー!!!」と指揮長の大きな声がしていながらも、激しいやり合いが繰り広げられる広場内、超大迫力! 見ている方もうかうかしていると巻き込まれかねないほど。それにしてもみんな楽しそう! そして競り合いの後、神輿の神様御一行は、だんじりの進撃を交わし、やっとのことで浜に辿り着くのでした。

無事に桂浜に辿り着き神事が行われる

桂浜での神事の様子
桂浜での神事の様子

 神輿が浜に安置され太鼓と笛の音が静かな桂浜に響き、潮祭の儀式が執り行われます。先ほどの荒々しい雰囲気とはまた違った空気。神主さんが祝詞を読み上げ、海水を神輿にお供えします。

 以前のこの桂濱神社大祭の動画を見ましたが、神事の後、だんじりが浜にやってきてまた競り合いが行われていたようです。そのまま海に入ったりも。今回はそういった場面はなかったのですが、いつかまたその光景が見られるでしょうか。一度、生で見たいものです。とはいえ、今回のお祭りでも何度も繰り返される競り合いは砂埃を巻き上げ、大迫力でした!

桂濱神社の御旅所、呉の文化財「財崎神社本殿」へ

財崎神社
桂浜の松林内に位置する財崎神社

 浜辺での神事の後、神輿が向かうのは、財崎神社本殿(さいざきじんじゃ)。神輿の前に御供物がたくさん並べられ、太鼓と笛の音が響き、再び神事が始まりました。

 財崎神社は桂濱神社の御旅所(おたびしょ)だそう。なので、ここでは神様が休憩されていたのですね。

 神事の静けさと、移動中の荒々しさの対比がなんともいえない時間でした。神事が終わり、神輿は財崎神社から桂濱神社に帰るために大鳥居のある広場に戻ります。すると待ってましたとばかりに、まただんじりが!

 このだんじりと神輿の競り合いをする理由を地域の方に聞いたところ、「年に1回神様が海に遊びに来るから、だんじりが神様と遊ぶために来るんよ。それで、今はせっかく来たのにもう帰るの? って帰ってほしくないから、神社に帰るのを邪魔してるんよ」と教えてくれました。

 そんなストーリーを聞くと、お祭りがもっと楽しく感じられました。来年も神様とだんじりが競り合って遊べる平和な秋になりますように。

<取材・文・写真/前中詩織>

前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。