全日空を休職して地域おこし協力隊に。CAの経験を生かして町に貢献

30歳を目前に「海沿いに住みたい!」「一軒家でのんびり暮らしたい!」と考え、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住した女性が日々の暮らしや岡山県の魅力をご紹介。今回は、キャビンアテンダントを休職し岡山県矢掛町に移住した、元地域おこし協力隊の女性の活躍をレポート。

全日空を休職して地域おこし協力隊に

橋本さん
岡山県矢掛町の元地域おこし協力隊の橋本慶子さん

 橋本慶子さんは世界中を飛び回る、全日空の客室乗務員(CA)さん。そんな橋本さんですが、2021年4月から2023年3月まで、これまでの仕事を休職し、矢掛町の地域おこし協力隊として活動しました。

 移住のきっかけは、地域創生に興味をもったから。橋本さんの地元は広島県福山市です。住んでいた頃は「地元はなにもなくおもしろくない場所」と思っていましたが、東京で暮らしたりや世界中の景色を見たりするうちに、普段なに気なく見ている自然の美しさや、地方ならではの魅力に気づきました。「いつか仕事で地方創生に関わりたい!」と思うようになり、会社にその思いを伝えていたのだそう。

 そこから数年後、世界がコロナ禍になったタイミングで、社内公募で矢掛町の地域おこし協力隊の募集があったため、CAを休職し矢掛町への移住、協力隊への参加を決めたのです。

見ず知らずの矢掛町で「観光案内人」に

道の駅・山陽道やかげ宿
道の駅・山陽道やかげ宿

 任されたのは「道の駅・山陽道やかげ宿」でお客さまをおもてなしする、フロントスタッフ。道の駅のオープンとほぼ同時に協力隊に参加し、オープニングメンバーとして活動を始めました。

 こちらの道の駅は少し変わった形態で、駅内には飲食店やお土産店が設けられていません。というのも、観光客には矢掛の商店街に足を運んでもらいたいという思いから、このような珍しい形になったのだそう。

 そんな道の駅での橋本さんの日々のフロントスタッフとしての業務は、おもに道の駅に訪れる観光客への矢掛町の案内でした。道の駅内の説明をしたり、観光名所が書かれたフリーペーパーをお客様に渡しおすすめポイントを伝えたり。

矢掛町の町並み
矢掛町の町並み

 CAを15年間勤めた橋本さんですが、見ず知らずの土地でのいきなりの観光案内。地域のことをまだ詳しく知らない状態で大変だったのでは?という質問に、「最初は大変でした! 毎日お昼ご飯を商店街に食べに行って、自分で足を運び徐々に町を知っていった感じです」と笑顔で話していました。

名産品コーナー
町のキャラクターグッズや名産品がずらり

 キッズコーナーや休憩スペース、近くを流れる小田川を眺めることができるデッキなどがある道の駅には、観光客だけでなく地元の方々も多く訪れます。小さな子どもが遊びに来たり、中高生が勉強しにきたり、お友達との待ち合わせ場所に使ったり。

 また、矢掛のお土産品を展示するコーナーには事業者さんが商品を持ってきたりするので、「観光案内所でありつつ、事業者さんや消費者、地元の方々との架け橋となっている道の駅」なのだそう。

小学生向けに「空の仕事体験」やラジオ出演も

お仕事体験
仕事体験会では同僚も協力

 道の駅での業務に加え、橋本さんはCAならではの活動も矢掛町でしていました。たとえば、矢掛町内の小学5・6年生を対象に行った「空の仕事体験」です。

 矢掛町では町内7校の合同授業を小学校3年生から行っています。このときは、全日空で働く岡山県出身のパイロット、整備士などを呼び、200名ほどの生徒たちを前に空の仕事についてお話をしました。

 ほかにも、中学生の職業体験、高校生の就職や受験の面接試験に向けた「マナー講習」を担当したり、矢掛町に店舗のあるアフリカ・セネガル産の布製品を扱う「jam tam」の生地を使用した浴衣を道の駅で着て、おもてなしをするイベントを自身で企画したりなど、幅広い活動をしていました。

らじお
ラジオ番組でレギュラーコーナーも

 また、2021年6月からRSKラジオで「good luck 朝耳ラジオ便」(現在は『Good luck 天神ワイド便』)というコーナーをもっていて、月に2回、火曜日の11:20ごろから出演しています。

 内容はおもに矢掛町と飛行機の話の2本だて。町のイベント開催情報の紹介や、「飛行機内に忘れ物をしても取りにいけないのはなぜ?」「CAの制服の色は自分で選べるの?」など、視聴者から届いた質問に答えたり。

 ラジオを聴いた方が橋本さんを知り、道の駅まで会いにきてくださることもあり、地域の方々との輪を広げています。

場所や仕事が違っても、大切なのは相手を思う心

制服
CAの制服が板についている

 旅客機内で働くCAと道の駅でのフロントスタッフ、「仕事内容はまったく違うでしょ? 」とよく聞かれるそう。

「お客さんを笑顔でお出迎えし、自分にできること、必要とされていることを探して動くのはどちらの仕事でも同じです。強いて困ることといえば、道の駅に来る地元の方は方言が強いので、会話が聞き取りづらいことがあるくらいでしょうか(笑)」

 見知らぬ地に移住して、職場をはじめ地域の方々に愛される橋本さんの魅力は、こういったおもてなし精神や、相手を大切にする気持ちなのだと感じました。

 矢掛町の暮らしをひとことで表すと「喧騒がない」だそう。現在の住居は電車の線路沿いアパート、だけど1時間半に1本の電車なので騒音はまったく気にならない。都会と違って人が少なく、のんびりとした静かな矢掛町での暮らしを橋本さんは楽しんでいます。

 協力隊を退任した現在は、CAの仕事に復帰しつつ月に数日、矢掛町での仕事を兼業しています。外の世界を知ったからこそ、より魅力的に感じる地方での移住生活や兼業という新たな選択肢を進む橋本さんの今後の活動が、これからも楽しみです。

<取材・文> mamiko

mamiko
栃木県茂木町出身。大学時代は京都で暮らした後、大阪の老舗ヴィンテージショップにて販売員に。30歳を目前に、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住。ブログやSNSなどで笠岡市の情報発信をしたり、地域交流イベントを開いたりなど、さまざまな活動を行っている。