移住してそば屋と子育てをスタート。家族で楽しむ常陸大宮の暮らし

茨城県北西部、久慈川と那珂川に囲まれた自然豊かなまち、常陸大宮(ひたちおおみや)市。家族で移住し、名物「常陸秋そば」の店を営む前田章裕さん、未華さん夫妻に、常陸大宮市での移住生活について教えてもらいました。

「常陸秋そば」の名産地でそば店を開業

天ぷらそば
大エビと旬の野菜天ぷらがついた「そば家 麦藁」の天ざる1350円

 芳醇な香りと滋味深い味わいの「常陸秋そば」は、全国のそば職人から高い評価を得ているブランド品種。昼夜の寒暖差や水はけのよい傾斜地など、そばの栽培に適した条件がそろった常陸大宮市は常陸秋そばの名産地として知られています。

 そんな常陸大宮市で「そば店の起業に挑みたい」と、考えていた前田章裕さん。県内にある実家のそば店で経験を積み、2016年に念願の常陸秋そばの店『そば家 麦藁(むぎわら)』をオープンしました。

前田さん
章裕さんが毎朝ひとりでそば打ちを行っている

 店舗をかまえたのは、常陸大宮市内のなかでも昔からそばづくりが盛んな山方(やまがた)地区。「お店が軌道に乗ることができたのは、地域の方々の応援があったからこそ。お店近くの住居を紹介してくれたのも近所の方なんです」と、章裕さん。

 香り豊かな石臼挽きのそば粉を、章裕さんが毎朝丹精込めて二八そばにしています。週末には限定で十割そばもいただけるそう。のど越しがよい細きりそばは、カツオ節や宗田節、サバ節を、出身地であるひたちなか市の「黒澤醤油」の特製しょうゆでじっくりうま味を引き出したツユとの相性抜群。

「常陸秋そばの魅力は、豊かな香りとほんのりとした甘さ、つるんとした食感。毎日、粉の状態が違うので、その日の天候や温度を見ながら、水の配分を決めています。そばの産地である地元のお客さんの厳しい舌のおかげで、日々鍛えられています(笑)」(章裕さん)

 2022年から近隣の畑で、そばの自家栽培を開始。2023年秋からは、自身で育てたそばの実から製粉、手打ちまで一貫して行う自家製そばを提供予定だそう。

店内
おひとりさまも、家族連れにも利用しやすい空間

 店内はあたたかな明かりがともる和モダンな内装。テーブル5席と座敷席が4席あり、小さい子ども連れでも安心して過ごせます。天ざるのほか、奥久慈シャモせいろやカモせいろも人気です。

外観
国道沿いにたたずむお店は広い駐車場も完備

 お店があるのは、観光客も立ち寄りやすい国道沿い。以前店舗として使われていた古民家を改装することで、開業資金も削減。天ぷらに使用する野菜は、近隣に借りた畑で自家栽培した野菜を使用しています。

ご家族
前田章裕さんは、妻の未華さんと長女の3人家族

 ご夫婦で移住して来た2021年の翌年には、長女が誕生。知り合いのいない土地での生活、子育てに当初は不安もあったという未華さんですが、地域の人たちや保育園の先生たちの温かいサポートがとても心強かったそう。

「周囲に方々が親戚のように接してくださるのがありがたい。常陸大宮市は子育て支援も充実しているので安心です。室内で子どもと遊ぶ場所が少ないのが悩みだったのですが、2023年11月、市内の商業施設に『屋内こどもの遊び場わくわくピサーロの森』ができるので楽しみにしています」(未華さん)

グランピング施設や公園、図書館も充実

公園
小さな子どもも安心して遊べる「中富児童公園」

「カバさん公園」と呼ばれ親しまれている「中富児童公園」は、娘さんもお気に入りのスポット。「大きな口をあけた青いカバさんが迎えてくれます。隣接する図書館の児童室で絵本の読み聞かせもできます」と未華さん。

 隣には、市内遺跡出土の考古遺物や歴史史料を展示している「常陸大宮市歴史民俗資料館大宮館」も。常陸大宮市の歴史を身近で体感することができます。

展望台
天気のよい日に訪れたい大パノラマ「休場展望台」

 また久慈川にかかる岩井橋を渡り、9km入った諸沢地区の上山(うやま)に位置する「休場展望台(やすんばてんぼうだい)」もおすすめしたい場所。天気がよいと、隣の大子町(だいごまち)の長福山や男体山、栃木県の那須連山や、はるか遠くに富士山も一望できる絶景スポットです。

「ときどき、お昼の閉店後にクルマで訪れる安らぎの場所です。常陸大宮市では自然の魅力が感じられますね」(章裕さん)

キャンプ場
新スポット「ザランタンひたち大宮」

 星空の美しいまちでもある常陸大宮市。市内北西部には、「星の里いこいの森キャンプ場」や「やすらぎの里公園」など、市外の人も地元の人も週末に気軽に行けるキャップ場があります。

 キャンプ好きな章裕さんも気になっているのが、2023年7月にオープンしたグランピング施設「ザランタンひたち大宮」。森に囲まれた広大な芝生の上で、外遊びやBBQ、テントサウナなどが楽しめる。手ぶらで行けるのでキャンプ初心者にも安心です。

 茨城県で2番目の面積を誇り、豊かな自然に恵まれた常陸大宮市。市街地には病院、スーパー、公共施設などがコンパクトにまとまっており、生活のしやすさも特徴。「常陸大宮市こどもセンター」など、子どもと保護者の支援をサポートする施設が整っていることも、子育て世代から移住先として選ばれている理由です。

「近所の方々が親身になって相談にのってくれたり、市役所へ行くと声をかけていただいたり、親しみやすいまちだからこそ、新天地で起業することができました」と章裕さん。新たな挑戦がしやすいまちとしても注目です。

前田章裕さん、未華さん
ひたちなか市出身のご夫妻。2016年、章裕さんが常陸大宮市山方に「そば家 麦藁(むぎわら)」をオープン。5年後の2021年に、未華さんとともに常陸大宮市に移住。翌年1月に長女が誕生。2022年から、近隣の畑でそばの自家栽培も行っている。

取材協力/茨城県常陸大宮市
撮影/林紘輝 取材・文/寺川尚美