70匹が暮らす大分の離島でネコの健康調査。人と共存するための取り組み

大分県南部、佐伯(さいき)市蒲江(かまえ)から船でおよそ30分のところにある住民11人の小さな離島「深島(ふかしま)」。島の周囲は約4km、20分も歩けば集落すべてを回ることができる小さな島で、70匹の島ネコに囲まれ暮らすあべあづみさんに日々のことをつづってもらいます。今回は、2023年11月に宮崎大学の協力で実施した島ネコの健康調査について。

ネコの島として注目されている深島

「ネコの島」としても注目されている深島

 深島にはおよそ65匹のネコたちが暮らしています。2014年に動物写真家の岩合光昭さんが深島を訪れたことをきっかけに「ネコの島」として注目をされるようになりました。毎年たくさんのネコ好きさんたちが遊びにきてくれ、県内はもちろん、日本各地、また世界中からも訪れる人が後を絶ちません。

 深島のネコたちは全頭避妊去勢をしており、島の人から毎日キャットフードをもらっています。島のあちこちにネコのトイレも設置していて、島やネコの衛生面にも気をつけるようにしています。

 私が深島にきたばかりの頃は、栄養状態も健康状態も衛生的にも不十分で、子ネコはなかなか育たないし、目ヤニの出たやせたネコも目立っていました。エサを持っていこうものならネコたちが群がり、体にしがみつき登ってくる子もいたほど。しかし、避妊去勢の手術やワクチン接種を行なってから、ネコたちは以前よりおだやかになり、毛つやもよく、きれいになりました。
 また、避妊去勢手術により子ネコが産まれないため、子ネコの死と向き合うこともありません。決まった時間にキャットフードをおなかいっぱいもらえることもわかっているのか、エサを持っていても群がることもなくなりました。

宮崎大学と協力して島ネコの健康調査

宮崎大学が協力してくれた島ネコの健康調査

 島では昔からネコたちとともに暮らしてきたため、そこにいるのが当たり前の存在。島の人と島のネコたちはそれぞれの心地よい距離感で共存しています。
 かわいがってお世話をしている、というよりも、お互いの生活を大事にしながら、島でともに暮らす仲間としてお互いさまで暮らしている印象です。

 そんな深島のネコたちですが、11月の三連休に宮崎大学のご協力のもと健康調査を行いました。
 島で生まれ育ったネコたちのもつ病気や弱さを明らかにし、これからの対応や健康管理、衛生管理に役立てるためです。大学としても、外のネコたちに対する認識や扱い方、学生の実践の場となりお互いにメリットがある活動になりました。

 TNR(外のネコを捕まえて手術し元の場所に戻す活動)を行ったときには、普段から活動をされているボランティアさんがたくさんきてくださり、ほぼ全頭捕獲することができました。
 今回捕獲をおこなったのは、いつも島に来てくださるボランティアのご夫婦、そして大学の学生さんたちと私です。普段なら触れることができるネコも、不穏な空気を察してか後半には出てこなくなり、捕獲がいちばんの課題として残りました。
 それでも、当初の目標50匹に迫る48匹の調査をすることができました。

 調査では、まず捕獲し、鎮静剤を投与。名前を確認して鎮静が効いている間に体重をはかり、血液検査をするためにのど付近の毛を剃り、血液検査、検便、ワクチン、ノミダニ駆除薬の投与という盛りだくさんな内容。
 初めての試みで最初の方はバタついたものの、手際よく分担して作業を進めていました。私はとにかくウロウロしていた記憶しかありません。

ネコの健康調査
血液検査をするために喉付近の毛を剃る

 当日は新聞社とテレビ局が取材にも来てくださり、実施した健康調査の模様は後日放送、掲載されました。これまで「ネコがいる島」としてレジャーや話題性のある内容での取材ばかりでしたが、このような取り組みを皆さんに知ってもらえるきっかけをつくってくださり大変ありがたかったです。

 先生の触診などの結果では、おおむねみんな健康でよく面倒を見られている、とおっしゃっていただき、ほっとしました。
 また、血液検査の結果はほとんどのネコで気にするほどの数値は出ませんでした。絶対6kgあるだろ、と思っていたちょっと太り気味のネコ(あこちゃん)がなぜか4.5kgだったのは、ちょっとまだ腑に落ちないのでもう一度体重を測ってみるつもりです。

島ネコの健康を守るためにできること

島ネコの健康を守るために

 この調査は今回だけではなく、今後も1年に1回程度続けていきたいと考えています。
 飼いネコと比べるとできないことも多くて悩む日もありますが、島ネコの健康を守るために、この環境でできることを最大限つくし、小さなネコの島としての先頭をきって歩きたいと思っています。

 深島のネコたちは毎日ご飯をもらい、毛布つきの雨風しのげる場所があり、人のひざの上であたたまったり、たくさんの人にかわいがってもらって暮らしています。でも、そうではないネコたちもたくさんいて、殺処分も後を断ちません。考え出すとキリがないのですが、まずは小さな島でできることをさまざまな機関と連携して行い、ほかの離島にも広げていけたらいいなと思います。同時に、ネコに会いにきてくださった方に、外で暮らすのネコたちのことを知ってもらうきっかけとなれたらと思っています。

 深島のネコたちのご飯代や医療費、私たちが活動する活動費などはネコたち自身に稼いでもらっています(ご寄付もいただいています。ありがとうございます)。人間はそのお手伝い役。今年はネコたちの本「深島ねこ図鑑vol.3」を発行する予定です。私財をなげうつボランティアだけでの活動には限界があります。きちんと稼ぎながら、関係機関とは持続的な関係性を築き、持続的な活動のモデルケースとするためにも、少しずつ試行錯誤しながらがんばっていきたいと思っています。

深島ねこ図鑑 vol.2
画像は深島ねこ図鑑 vol.2(深島活性化組織Deepblue サイトより)

 今回の調査で島に来ていただいたみなさん、ご協力いただいたみなさん、そしていつも深島のネコたちへお気持ちを寄せてくださる皆さん、ありがとうございました。

 こんな島もあるんだなと思ってくださった皆さん、自分もなにかできないかな、と思った皆さん、ほんの少しでも考えてくれたり、寄付をしたり、応援のメッセージを送るだけでも、活動している人ははげみになります。深島を訪れること、グッズの購入も応援になるので、ぜひよろしくお願いします。

<写真・文/あべあづみ>

【あべあづみ】
住民12人の小さな離島「ふかしま」の島民。「深島を無人島にしない」をミッションに、夫と2人でぃーぷまりんとして深島みその製造やinn&cafeの運営をしています。深島にすむ人も来る人もネコもほかの生き物たちも、みんなが今よりほんの少し幸せになれる島を目指しています。尊敬する人は深島のばあちゃんたち。ふかしまにゃんこ(@fukashima_cats)、深島活性化組織Deepblue