広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は島での節分の行事をレポート。
坂と長い階段を登った先のお寺、白華寺
世間では恵方巻きや豆菓子が売り場いっぱいに広がる節分の日。今年も倉橋島の白華寺の「星まつり」と桂濱神社の「節分祭」に参加しました。
最初に訪れた白華寺(はっかじ)は御本尊の木造十一面観音立像が広島県重要文化財に指定されており、海上安全祈願や厄除祈願など倉橋島祈願所として古くから信仰されている場所です。
今回参加した星まつりは節分と同じく厄払いの行事なので、節分の日に合わせ行うことになったそうなのですが、これは密教系の寺院で行う宗教行事。人がそれぞれもつといわれる生まれ年によって定まった運命をつかさどる星、さらに1年ごとに巡ってくるその年の運命を左右する星、これらの星をご祈祷と護摩とで供養し、1年間の幸福を祈り災いを除く行事なのだとか。最後にはご祈祷した守り札もいただきます。
そんな白華寺の星まつりへは、駐車場から坂を登り、長い階段を登り、運動不足の私はゼェゼェ言いながらなんとか境内へ。
境内に着くと、なかで祈願料を納め、添護摩木(そえごまぎ)をもらい願いごとを記入します。添護摩木は25cmくらいの細い木の板で、名前と住所、年齢そして願いごとを記入し、のちほど行われる護摩焚きで護摩供養をしてもらいます。これは火の力を借りて神仏に願い事を届けるのだと教えてもらいました。添護摩木を記入する横ではぜんざいも用意されていて、甘いいい香りもしていました。
境内に響くほら貝の音と高く上がる護摩焚きの火
そんなこんなしていると、もう本堂の方で読経が始まっていて声が聞こえてきました。あまり馴染みがなかったのですが、有名な「般若心経」だそうです。あとで 「あれは厄除け祈願のお経なんだよ」と知り合いが教えてくれました。お焼香もさせていただき、さあ、お経の後はいよいよ護摩供養が始まります。
少し降っていた雨も、護摩焚きの準備が始まる頃にはやんでみんな安心。住職さんのほら貝の音が境内に響き、無事に護摩供養が始まりました。先ほど願いごとを書いた添護摩木が読経とともに火の中に投入されていきます。みんなのたくさんの願いが、高く上がった火の中で供養されていきました。
参拝者の持ち物にも気合いを入れてもらう
護摩供養が終わった後、もうひとつ楽しみな時間があります。まだ少し燃え残っている護摩の上で、住職が参拝者の持ち物に「えぇぇい!!!」と気合いを入れてくれるのです。これは、お加持(かじ)と言うそうで、私は交通安全の願いを込めて、車のキーが入った猫のケースに気合いを入れてもらっています。これで「気合いにゃんこキーケース」の完成! ほかの方も、財布やカバン、スマホなどに気合いを入れてもらっていて、みんな楽しそう。そして最後にご祈願していただいた守り札をもらい、白華寺を後にしました。
お昼は海が見えるカフェで
白華寺を出た頃はもうお昼近く。一緒に行った友人と目の前に海が広がるseaside cafe ALPHAでランチをしていくことに。こちらの日替わり定食にはいつも満足、オーシャンビューの景色もすてきです。一緒に頼んだ福岡の八女茶もおいしく、ほっこりした時間を過ごせました。
雨音がする幣殿で桂濱神社の節分祭が始まる
夜の7時。次はお正月にもお世話になった桂濱神社の節分祭へ行きました。去年も参加させてもらったのですが、前回はまだコロナの影響で神事のみの執り行いだったので、豆まきに参加するのは今年が初めて。どんな感じなのか楽しみでいっぱいです。
節分祭の神事が最初に行われ、しとしとと雨音のする幣殿の中、祝詞と太鼓の音が響きます。この神事の後に、豆まき&菓子まき、その後家内安全、厄払いのご祈祷と続くようで、家族で来ている人が多く、子どもたちも豆まきが楽しみなのかパタパタ楽しそうに駆け回ってました。
豆まきでは、豆もお菓子やカップ麺、みそ汁も飛ぶ!
待ちに待った豆まき! 残念ながら年女と年男はその場にいなかったので、子どもたちにたくさん豆をまいてもらいました。「鬼はーソト! 福はーウチ!」と勢いよく豆が飛んできます! 本物の豆まきをしたのって何年ぶりだろう、と思いながら飛んできた豆をときどき口に入れながらいそいそと拾いました。
その後、まさかの菓子まきまで始まり、なんと豆よりすごいスピードで、菓子やカップ麺、インスタントみそ汁などが飛んでくるのです! これは子どもたちも拾うほうに参加し、みんな両手いっぱいにお菓子などを抱えて楽しんでいました。私もお菓子や生活に役立つものまで飛んできてくれてうれしかったです♪
最後は囲炉裏の火で温まりながら甘酒を
豆まきの後のご祈祷もすみ、囲炉裏のある部屋で休憩させてもらいました。コロナ前にはここでイワシを焼くのが恒例だったとか。後の匂いは大変だったそうですが、囲炉裏で焼くイワシはさぞやおいしかったはず。
初めて体験する囲炉裏の火を眺めながらいただく甘酒に、ここでもほっこり。雨で少し寒い日だったので、温かい甘酒が心身にしみました。心も体も温まってから、それぞれの家へと帰っていきました。そんな節分の日の穏やかな島での1日でした。
<取材・文・写真/前中詩織>
前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。