笠岡市の古民家に移住。1年暮らしてわかったメリット、デメリット

30歳を目前に「海沿いに住みたい!」「一軒家でのんびり暮らしたい!」と考え、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住した女性が日々の暮らしや岡山県の魅力をご紹介。今回は、自身が1年間住んで感じた古民家生活のメリット、デメリットをご紹介。

1番の魅力は「広さ」。コレクションやインテリアを楽しめる

住んでいる古民家
住んでいる築100年の古民家

 古民家暮らしのいちばんのおすすめポイントといえるのが、一軒家だからこその広さ。私の住む古民家は、入り口すぐに10畳ほどの土間があり、8畳の部屋が2つ、10畳の部屋が2つ、増設された台所とトイレ、お風呂場と離れの部屋、と一人暮らしにはかなり広い間取りです。

 収集癖があってもちものが多い私にとって、かなりうれしいこの広さ。各部屋には大きな押入れがあり、洋服などの小物類が全て収納可能です。また、押入れのふすまを取り外し、中にショーケースや棚を置いてお気に入りのフィギュアなどをディスプレイしてインテリアを楽しんでいます。

 以前からもっている家具に加え、古民家に住み始めてから大きなソファセットや観葉植物などを購入したり、いただいたりして、あこがれていた理想のインテリアを追及することもできました。

制作作業
広々とした土間を使って制作作業

 加えて、作業スペースが広く取れることも古民家暮らしの醍醐味です。
 私は仕事でDIYを行ったり、グラフィックデザイナーとして作品を制作したりしています。その際に切った木材が散らばったり、印刷した紙が山積みになったりと通常スペースの確保が大変なのですが、この古民家の広さがあればノンストレスで仕事に取り組めるのです。とくに、汚れてもすぐに掃除ができる土間はこういった仕事や作業のときにかなり役立っています。

家は広いがパーソナルスペースは意外と狭い

土間インテリア
土間にお気に入りの家具を置いて楽しむインテリア

 家の中は十分な広さで悠々とスペースを使えるのですが、住んで感じたことは「意外とパーソナルスペースが狭いこと」です。

 古民家が残っているような地域でよく聞くことですが、都市部ではなかなかない「ご近所つきあい」がマストで出てきます。私も、古民家に暮らし始めた際は、毎日だれかがお話をしに来たり、採った野菜をおすそ分けしてくれたり、とかなりにぎやかな毎日でした。

「田舎ならではの人との距離感、交流を楽しみたい」と思う方にはおすすめですが、「1人でゆっくり古民家暮らしを楽しみたい」と思い描いている方は少しギャップを感じるかもしれません。

 私は仕事上、家で作業をすることも多く、「今日もだれかが遊びにくるかもしれない」と思って当初は仕事に集中できない日もありました。でも、地域の方々も善意があってコミュニケーションを取ろうとしてくれているはず。

「地域のコミュニティーに入らなければ」と気負うより「自分の考えはこうだ」としっかりとした意思を伝えることも、長く古民家暮らしをしていくうえでとても大切かと思います。

古民家暮らしは夏涼しく、冬は寒い

日向ぼっこ
晴れの日の縁側での日なたぼっこは最高

 広さに続いておすすめできるポイントは「夏は冷房いらずで涼しいこと」。土壁や木材など、自然の素材を使用している古民家は湿度を調節してくれるのに加えて、縁側、吹き抜けなどが空気の流れをつくり出して涼しくなる設計なのだそう。

 昨年の夏はクーラーをほとんどつけず、扇風機ひとつで快適に過ごせました!
 現在私は、笠岡駅前商店街にお店を構えているため、実質古民家とお店との2拠点生活なのですが、同じ市内でも建物に入った際の体感温度はびっくりするほど違います。お店ではクーラーをつけているのに反して、古民家は夜になるとまだ肌寒いなあと感じるほど。

 反対に困るのが、冬の古民家暮らしです。エアコンやヒーターをつけてもどこからともなく風が入り込んできて極寒です。また、広さ故に部屋が温まるまでに時間を要し、電気代や灯油代もかなりかかります。
 2拠点生活を視野に入れている方は、夏は古民家がおすすめです。

どこまで自分が管理するのか、大家との意思疎通が必要

押し入れ
押し入れに防腐ペンキを塗ってDIY

 古民家暮らしに欠かせないのが、建物の修繕やメンテナンスです。私の住む古民家は築100年。築年数があるからこその味や風合い、そこにひかれて古民家暮らしを始めましたが、避けてはとおれないのが建物の劣化。

 住み始めた当初は天井にはクモの巣が張りつき、畳の上に布団を敷いて寝たら翌日ダニに刺されまくったり、水道管が破裂して水漏れが起こったり。掃除用具を一式そろえるだけでも結構なコストや時間がかかりました。

雑草
畑では作物とともにぐんぐんと雑草が育つ

 また賃貸契約の場合要注意なのが、建物内だけでなく、どこまでが自分が借りている土地なのかです。
 私の場合は、じつは家の敷地内にある蔵は「本家」にあたるお隣さんと共有のものだった、家から離れた場所にある畑も大家さんの所有物であり、借人である自分が草刈りをしなくてはいけなかった、など住み始めてから知ったことが多かったです。

「そんなの聞いていない」とならないよう、ここまでは借主が行う、これは大家さんが管理する、など意思疎通が大切です。

自分の今の生活、理想の生活と照らし合わせてみるのがポイント

夕日
騒音がなく庭からはきれいな夕日が見える環境

 メリット、デメリット共にある古民家生活ですが、大切なのは自分の今の生活で譲れない点、求めている点、などを整理してみること!

 私の場合、移住前は大阪市内に住んでいましたが、移住の際は徒歩圏内にコンビニやスーパーがあるといった利便性は必須ではありませんでした。
 古民家は修繕など手間がかかりますが、DIYなど自分で手を動かす作業は大好きなので苦にはなりません。冬の寒さやネズミの多さは耐え難いものがありますが、それでも広々とした古民家に住んでよかったなと私は感じます。

 2年目に突入する古民家暮らしも、新たな発見や楽しみ方を見つけていきたいと思っています。地方移住を考えていたり、古いものが好きだったり、新しい生活をしたいという方は、古民家暮らしの選択肢を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

<取材・文> mamiko

mamiko
栃木県茂木町出身。大学時代は京都で暮らした後、大阪の老舗ヴィンテージショップにて販売員に。30歳を目前に、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住。ブログやSNS等で笠岡市の情報発信をしたり、地域交流イベントを開いたりなど、さまざまな活動を行っている。