広島県安芸高田(あきたかた)市の山あいの集落で、両親とおばあちゃん、山で保護した犬「てん」と暮らす水戸家のmizutomidoriさん。お父さんの実家である今の家に移住して7年目、愛犬てんと家族のにぎやかな暮らしのレポートをお送りします。今回は、里山で見られるユニークな虫たちについて。
里山にはおもしろい虫がいっぱい
田舎で暮らしたくない理由のひとつに「虫」があげられることがあります。実際、友人や知人に田舎暮らしをすすめても「虫が苦手だから無理!」という言葉が返ってくることも。
私もあまり好きとはいえませんでしたが、安芸高田市に移住して自然のなかで暮らしはじめてからは、虫がかわいく感じられたり、その生き方に感心することがたくさんありました。今回はそんな里山で出会ったちょっとおもしろい虫たちをご紹介します。
美しいアカスジキンカメムシ
4月の終わり、オニユリの葉に見たことのない白黒の丸っこい虫がとまっています。写真を撮って検索すると、「アカスジキンカメムシ」の幼虫であることが分かりました。その後いつの間にかシャクヤクの葉に移動していて、よほど住み心地がよかったのでしょうか、それから1か月間ずっとそこに居座っていました。そんなある日、ふとのぞくと白黒からきれいなグリーンの成虫へと変わっていたのです。いつの間にこんな変化をしたのでしょう! 宝石と例えられているのも納得の美しい姿でとても感激しました。
まるで空飛ぶぬいぐるみ。モフモフのマルハナバチ
マルハナバチにはいくつか種類がありますが、みんなモフモフの毛がかわいらしい。水戸家のまわりでは、写真のトラマルハナバチや、クロマルハナバチをよく見かけます。花のひとつひとつに頭を突っ込んで一生懸命蜜を集めていて、ブルーベリーやハブ草、野菜などの受粉をしてくれています。
フンを体にまとう、ユリクビナガハムシ
ユリクビナガハムシはちょっと困った虫です。その名のとおりユリが好きで、花もつぼみも葉っぱも食べてボロボロにしてしまいます。この虫は幼虫が変わっていて、なんと身を守るため自分のフンを体にまとっているのです。初めて見たとき、泥のかたまりだと思っていたら中に幼虫がいたので驚きました。卵も、フンの中の幼虫もオレンジ色。成虫も赤やオレンジ色をしています。
ツノがユニークなウラギンシジミの幼虫
9月ごろに咲く、いい香りの葛(くず)の花にいるのがウラギンシジミというチョウの幼虫です。花と同じ紫色でツノのような2つの突起がかわいいのですが、その突起があるのはお尻側。頭は反対にあります。以前、取ってきた葛の花にこの幼虫がついていて、しばらく観察をしたことがありました。
そのときムシャムシャと花を食べる様子を見ていた母が「ツノからなにか出た!」と騒ぎはじめました。最初はそんなわけないでしょと思っていたのですが、調べてみるとどうもなにかが出るようです。
そっとつついて刺激を与えてみると、突起からシュッとブラシのような、花火のようなものが出てきてフリフリして一瞬で戻っていくではありませんか。思わず母と2人叫んでしまいました。
外敵から身を守るためだそうですが、確かにこの予想外の動きは効果的かもしれません。その後は緑色の丸いさなぎになって、無事に羽化して飛んでいきました。
ほかにもたくさん、里山の虫たち
ほかにもあげたらキリがないくらい、季節ごとにいろんな虫に出会います。
里山では6月から7月にかけて蛍のシーズンです。家の周りにはヒメボタルが多く、暗闇に目が慣れてくると山の中でたくさん光っているのが見えます。1cmにも満たない小さなヒメボタルはチカチカと素早い点滅で、まるでイルミネーションのようにきれいです。
日々の暮らしのなかで、こんなふうに虫たちがそれぞれの居場所で生きているということが分かると、より虫を身近に感じられるようになります。もともと虫に詳しくなかった私も、今は簡単にネットで調べられるので、いろんな発見を楽しんでいます。
今年、水戸家ではアサギマダラというチョウが好む、「フジバカマ」の花の苗をいただいて畑に植えました。アサギマダラは渡り鳥のように長距離を移動するチョウで、フジバカマの咲くところに飛んでくるそうなのですが、うちへも来てくれるでしょうか。無事に育てば咲くのは10月ごろ。今から楽しみにしています。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して7年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。