笠岡市に移住した女性が店舗をオープン。築40年の建物をDIYで改装

30歳を目前に「海沿いに住みたい!」「一軒家でのんびり暮らしたい!」と考え、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住した女性が日々の暮らしや岡山県の魅力をご紹介。今回は、自身が2024年4月にオープンした店舗について、物件との出会いから内装が完成するまでをレポート。

笠岡駅前商店街で、理想の物件と出会う

笠岡駅前中央商店街の入り口風景
中央商店街の入り口

 JR笠岡駅前には「本通商店街」「えびす通り商店街」「東本町商店街」など碁盤の目のようにいくつもの商店街が存在しています。
「昔は人であふれていてね、映画館や銭湯、飲食店も今よりたくさんあったんだよ」と地元の方から昔を懐かしむ話をよく聞きますが、今はシャッターが下りている店舗が多く、人通りもまばらです。

ノスタルジックな雰囲気の商店街の風景
ノスタルジックな雰囲気の商店街

 私は、笠岡市に移住してから2か月に1回、駅前のレンタルスペースを利用して、お酒や食事を提供する「地域交流イベント」を行っていました。そこで「いつか駅前商店街に拠点をもって、地域の方と交流できる場所をつくりたい」となんとなく思うように。

 イベントをとおして地域の枠を超えて人とのつながりができたり、団結力が生まれることに意義を感じたりしていましたし、なにより昔ながらの街並みが残る笠岡駅前の商店街の雰囲気が好きで、廃れてほしくないと思っていたからです。
 どこかいい場所はないかなあ、と商店街をふらふらと散歩していたとき、運命の物件と出会ってしまいました。

大きなレトロな時計が壁にあり、屋根には風見鶏がついた、レンガづくりのような洋風の建物
ビビッときた理想の物件

 笠岡駅から徒歩2分ほどと、アクセスのいいこの物件。大きなレトロな時計に屋根には風見鶏がついた、レンガづくりのような洋風の趣。大通り沿いで車の行き来も多く、建物を囲む大きな窓からは店内がよく見える。「まさに理想の場所! 絶対にここがいい!」とひと目ぼれでした。
 テナント募集の看板などはありませんでしたが、誰も使っている気配はないし、誰かに契約される前に早く物件の情報を得なくては! と急ぎ大家さんにコンタクト。2024年1月から2階建てのこの建物を借りました。

制作過程もパフォーマンスに。DIYでお店の内装工事

1992年当時の完成した建物を撮影した写真
建物の当初(1992年)の写真

 まさに思い描いていた理想の物件なのですが、内装はかなり年季の入ったもの。約40年前に建てられた当初は、地元で親しまれるレコード屋さんでした。その後は飲食店として営業していたので、壁や天井、フローリングは油まみれ。家財や機材などは一切ないスケルトンの状態です。

天井も床も壁も汚れているリフォーム前の空っぽの空間
工事着工前の店内の様子

 専門業者に工事費の見積もりなどしてもらいましたが「お店が完成するまでの過程もたくさんの人に楽しんでもらいたい」と思い、自分で内装工事を進めることに。とはいえDIY知識などはほぼない初心者の私。ネット情報やYoutubeを見たり、知り合いの大工さんに相談したりしながら手探りで作業をスタートしました。

汚れている天井にパテを塗っている女性
天井にパテを塗っていく

 まずは天井の工事から。油と汚れで真っ黒になった天井の上にパテ塗りをしていきます。重力に逆らいながら腕を上げ続けるのはかなり重労働。翌日には見事に筋肉痛になりました。

 パテが乾いたらローラーでペンキを塗っていきます。日々ペンキまみれになりながら作業をする姿を見かけ、手伝いに来てくれる人、差し入れしてくれる人、SNSで応援メッセージをくれる人など、地域の人たちの温かさを感じました。

プロ用の機材で床をはがしているペンキのついた作業着を着た女性
プロ用の機材を借りて床をはがしていく作業

 天井の後は、床をはがしていきます。この作業がDIYのなかでもいちばん過酷でした。床にピッタリくっついたフロアマットののりがなかなかはがれず、専門業者が機材をレンタルしてくれましたが、すべてをはがすのに丸3日かかりました。

天井、壁、床がきれいになった空間
天井、壁、床がほぼ完成!

 のりをはがし、きれいになった床に新たなクッションフロアを貼り、同時に壁にも石膏ボードを貼ったら、見違えるような店内に! 一気に店舗感が増し、内装工事開始から約2か月、やっと全貌が見えてきました。

腰の高さより下の位置に設置される腰壁をしゃがんで製作している女性
腰壁を製作中

 その後は腰の高さより下の位置に設置する腰壁をつくったり、壁をペンキで塗ったり、カウンターテーブルをつくったり。
 内装の大枠ができあがったら、必要機材などを導入。ちょうどこの頃、近所で長く親しまれていた飲食店が閉店し、厨房機材などをもらえることになりました。

軽トラックの荷台にある業務用冷蔵庫を運ぼうとしている複数名の男性たち
業務用冷蔵庫を運ぶ心強い男たち

 業務用の巨大な冷蔵庫、冷凍庫を運ぶ作業は、近所の人たちがトラックを出してくれたり、力仕事を手伝ってくれたり。こういった横のつながりや人の温かさを身近に感じられることも、地方ならではの魅力だとと思います。

クラウドファンディングにも挑戦

机の上にたくさん並んでいる手書きのお礼の手紙
ご支援者様へ手書きのお礼の手紙を送る

 また、内装工事を進めながらクラウドファンディングにも挑戦しました。資金面でのやりくりもそうですが、クラウドファンディングをとおしてさまざまな世代や地域の人にお店のことを知ってもらいたかったからです。

 SNSや新聞、ラジオなどで周知した結果、目標金額の支援を受けることができました。また、お店の存在を知り、手伝いに来てくれる人、営業を始めてから来店してくれる人など、多くの人に知ってもらう機会にもなりました!

 しかし、難しかったのがご年配層への周知です。そもそも「クラウドファンディング」という言葉や仕組みを知らない人が多く「お金を巻き上げようとしているのか?」と怪しく疑われることも多々…。

 地域への愛情や、地域創生に熱い思いをもっている人はその世代に多いので、ここのマッチングがうまくできるとより地域が盛り上がるのではないか、と勉強にもなりました。

テーブルやいす、観葉植物などが設置されきれいになったお店の内装
工事が終わり什器搬入したお店の内装

 たくさんの人たちの応援で完成したお店。当初思い描いていた「地域交流のできる場所」に加え、地元農家さんにメンバーに加わってもらい、とれたて野菜を楽しめるシェアキッチンとして2024年4月26日にオープンを迎えました。

 店名は「 Farmer’s Kitchen Boonies 」。今後、お店で提供する料理やオープンしてからの日々もレポートしたいと思います。

<取材・文> mamiko

mamiko
栃木県茂木町出身。大学時代は京都で暮らした後、大阪の老舗ヴィンテージショップにて販売員に。30歳を目前に、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住。ブログやSNS等で笠岡市の情報発信をしたり、地域交流イベントを開いたりなど、さまざまな活動を行っている。