島民11人の大分・深島にも空襲が「みーんなしがみついた」おばあちゃんの戦争体験

大分県南部、佐伯(さいき)市蒲江(かまえ)から船で30分、住民11人の小さな離島「深島(ふかしま)」は周囲は約4kmの小さな島。この島でも第二次世界大戦中、米軍による空襲がありました。島で暮らすあべあづみさんが戦時中の島の様子を、おばあちゃんたちに聞きました。

深島にも海軍と陸軍の基地があった

大分県佐伯市深島で撮影された女学生たち

 1945年に終結した第二次世界大戦。2024年は戦後79年です。今、島にいるばあちゃんたちが80代後半~90代で昭和の初期生まれ。深島の全盛期に島で生活していたばあちゃんたちに戦争のお話を聞きました。

 瀬戸内海と太平洋を結ぶ、九州の大分県と四国の愛媛県に挟まれた「豊後水道」に位置する佐伯市には、海軍との関わりが古くからあり、市の資料によると海軍航空隊の基地が置かれる以前の明治時代後半から毎年のように演習のため艦隊が集結していたといいます。

「昭和9(1934)年には、日本で8番目の海軍航空隊が佐伯に置かれ、「軍都」として街が発展する契機となりました。さらに、日中戦争や真珠湾攻撃では重要な役割を担っていましたが、終戦間近には航空隊基地の存在が攻撃の標的となり、度々空襲に見舞われることとなりました」(前述の佐伯市webサイトより抜粋)

 また、総務省が公開している「大分市における戦災の状況(大分県)」によると、大分市には終戦までの22回にわたる空襲があり、死者は177人、負傷者は270人にも達し、749発の投下爆弾や9,500発の焼夷弾攻撃によって中心市街地はほぼ全滅したと記されています。

深島の親子 炊事の様子
炊事の様子

 深島は離島ということもあり、戦時中、灯台のあたりに海軍陸軍の基地ができました。現在も名残のコンクリート片があるらしく、数年前に国からの指令とのことで基地の残骸を処分しに業者さんがきていました。今では見えなくなっていますが、灯台のちょっと下には広場のような開けた場所があり、そこに拠点をつくって、島内のあちこちに分かれて生活していたようです。何人くらいいたのかは分かりません。灯台付近の土地は今も「海軍」の登記になっています。

 ばあちゃんたち曰く、「兵隊さんがときどき降りて来ては一緒にご飯を食べたり、子どもたちがご飯をもらいに兵隊さんのところへ遊びにいったりもしていた」そうです。

学校で空襲にあった

芋畑にいる子どもたち
芋畑にいる子どもたち

 居住エリアには防空壕がありました。今では草や木で分からなくなっていますが、ひさよばあちゃんの家のすぐ後ろに大きな防空壕があったそうです。防空壕の奥は通常行き止まりになっていると思われますが、山をくりぬいているのか、なんと深島の防空壕はつきあたりから海が見えるそう。まだ残っているはずなので、いつかしっかり保存できたらいいなと思っています。

「うちたちはなあ、しがみついたことがある。学校で。みなで遊びよったらなあ、鳴り出して、パリパリパリパリ(注:空襲警報か戦闘機の音)いいだしてなあ、みーんなしがみついた。あんときも誰かやられちょる。おれもしがみついた、何人かで。」

土地を耕す子どもたち
土地を耕す子どもたち

 戦争中の話を聞くと、深島も空襲があったそうで、亡くなった人もいるようです。兵隊さんも亡くなったとか。私たちには想像もつかない日常を過ごしていたんだなと思うと、いっそう尊敬の念がふくらみます。
 授業中に空襲のサイレンが鳴って島に爆弾が落ちたことも、学校には行っていたものの、畑仕事や子守りをして勉強をすることは少なかったことも、当時はとてつもなく大変だったであろうことを、時折り笑いも交えながらばあちゃんたちは話してくれました。

 きっと、そんな苦しい大変ななかでも、島の人が助け合って(ときには先生たちや兵隊さんも助け合いながら)楽しいことを見つけて笑い合うこともあったんだろうなと思います。

旧佐伯海軍航空隊 掩体壕
航空機を敵の攻撃から守るための格納庫である「掩体壕」。規格からみて「零式艦上戦闘機」を格納していたとみられる(画像提供:佐伯市)

 佐伯市には、佐伯海軍航空隊司令部や「旧佐伯海軍航空隊 掩体壕(えんたいごう)」、仙崎海軍砲台の跡など、当時のことをうかがい知れる戦争の遺跡がいくつも残っています。
 8月15日は終戦の日。毎年8月は戦争に関することを耳にしたり目にする機会も増えますが、直接ばあちゃんたちに聞いたり、それを残していきながら、ずっと忘れずにいたいと思います。

<写真提供・文/あべあづみ、協力/佐伯市佐伯市観光ナビ

【あべあづみ】
住民12人の小さな離島「ふかしま」の島民。「深島を無人島にしない」をミッションに、夫と2人でぃーぷまりんとして深島みその製造やinn&cafeの運営をしています。深島にすむ人も来る人もネコもほかの生き物たちも、みんなが今よりほんの少し幸せになれる島を目指しています。尊敬する人は深島のばあちゃんたち。ふかしまにゃんこ(@fukashima_cats)、深島活性化組織Deepblue